まさか魔王が異世界で

小森 輝

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6 アペルピシアという魔王

まさか魔王が異世界で 31

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「なんだこの人だかりは……」
 騒ぎがありそうな方へ行ってみると、町の出入り口を埋め尽くすほどの人で溢れかえっていた。
「これじゃあ、狩りに出かけることもできないね……」
「こんな騒ぎがあっているのに呑気に狩りになんて行けないだろ」
 この町に愛着は一切ないが、この世界に来て3日で拠点を失うなんて不名誉なことにはになりたくない。
「くそ……この先になにかあるんだろうが、全く見えないな……」
 屈強な大人の男ばかりで、全く先が見えない。元の体であれば余裕で見えていたのに、子供の体というのは不便なことしかない。
「そっちはどうだ? 何か見えるか?」
「うん……何も見えない……」
 ミラの身長は俺よりも高いとは言っても、この屈強な男たちと比べれば小さいものだ。
「どうにか見えないか……」
 背伸びをしようが、圧倒的な身長差の前には何をやっても無駄だ。
「そうだ! 肩車をしたら見えるかも!」
「却下だ!」
 肩車したところで見えそうな身長差ではない。ただただ俺が恥をかくだけだ。
「でも、それじゃあ、どうやって先の様子を確認するの?」
「仕方がない。この手は使いたくはなかったんだが……」
 俺には秘策がある。さっき学んだ秘策が……。
「あの……おじさん、ちょっといいですか?」
「ん? なんだい坊主」
 秘策とは……人間に聞くこと! 先ほどミラが宿の人間に話を聞いていたのを参考にさせてもらった。
「この先でなにがあってるの?」
「あぁ、今からここから魔族が攻めてくるって予告があってね。それで戦える者はこっちに集まっているんだ。だから、坊主は反対側に逃げるといい。そっちにお母さんもいるだろうから」
 なるほど。それで、武装した冒険者がこちらに集められているというわけか。だが、そんな予告を信じるなんて、人間も愚かだ。魔族の言葉は信じるなと習わなかったのか。もし、俺が攻め手なら、間違いなく町の反対側から襲撃を開始する。となると、主戦場はこことは真逆の方向になる可能性が高い。
 そんな推測を立てるが、真逆に行く前に外の様子ぐらいは見ておきたい。
「お父さんを探してるの。見つけたらお母さんのところに行こうと思って……」
「そうか。仕方ない。少しだけだぞ」
 そう言って、持ち上げてくれた。これなら見晴らしもいいし、先の方までよく見える。
「見つけたらお母さんの方に行くんだぞ」
 先に見える光景を目にして、そんな言葉は耳に入らなかった。
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