まさか魔王が異世界で

小森 輝

文字の大きさ
51 / 56
7 勇者の帰還

まさか魔王が異世界で 51

 森の外。少し開けた平原である程度の距離を離れて向き合った。
「泣いてしまっても知らないぞ?」
「そっちこそ、手も足もでなくてもいじけないでよね」
「言うじゃないか小娘のくせに」
「そっちこそ、子供のくせに」
 ジリジリと視線をぶつけ合い、そして、その火蓋は切って落とされた。
「早速、新スキルを見せてやろう!」
 先に動き出したのは俺の方だった。近接戦闘しかできないので、それも必然だ。そして、ミラは魔法による防御の準備をしている。だが、もう遅い。俺は昨日までの俺とはもう違うのだ。
「行くぞ! プッシュジャンプ!」
 俺の新スキル、プッシュジャンプ。名前の通り、ジャンプが空中で押し出されて跳躍すると言うもの。空を飛ぶこともなく、ただ走り幅跳びの距離が伸びるだけというスキル。だが、敵との距離を詰めたり敵から距離を取ったりするのに便利だ。現に、今、こうやってミラとの距離を一気に詰めることで、防御魔法の発動より前に接近できている。後は攻撃を当てるだけ。
「でもね、アペ君。アペ君の攻撃は時間がかかるから攻撃を見てから魔法を使っても間に合うんだよね。新しいスキルもすごいけど、まだまだかな」
 俺の攻撃スキル、パワースラッシュは発動までに時間がかかる。だが、そんなのは承知の上で飛び込んできている。
「おい、誰が新スキルが一つだけだなんて言った?」
「え……」
 ただの移動スキルを自慢するほど、俺は幼稚ではない。つまり、攻撃スキルも拾得したということ。
「泣いて悔やめ! ピアシングブロー!」
 俺の新たな攻撃スキル、ピアシングブロー。中段突きの構えから放たれる渾身の突き。スキルが発動するまでの時間は短いが、突きという直線的な攻撃で範囲狭い。しかし、当たれば腹部を貫通させることは間違いない。もちろん、ミラに当てるつもりはないので、寸止めするつもりだ。子供だとバカにした相手に負け、悔しさに表情が歪む姿が楽しみだ。
 しかし、俺の剣は寸止めどころか突きだそうとした瞬間、弾かれた。理由はただ一つ。ミラの防御魔法だ。
「くっそ……」
「アペ君も、私の魔法をなめすぎなんだよなぁ」
 読まれていたわけではない。単純に対応されただけだ。俺のスキルと違って、ミラの魔法は発動に時間をかけない。ただ発動してから一定時間使えないというもの。俺の突きですらも見てから余裕だったのだろう。
「アペ君が成長しているのと同じように私だって成長しているんだからね」
 ミラがそう言うと、魔法の気配を感じた。
「まずいっ! プッシュジャンプ!」
 慌ててスキルで後方へと飛び退いた。
「おしい。気づかなかったら勝ちだったのに……」
 確かにミラも成長している。主に、魔法の使い方を覚えだしたのが成長を促したのだろう。試行錯誤の末、朝の魔族に防御魔法を敵の体内に作り出し、切断することが出来た。今回も防御魔法の応用だ。敵の周りに防御魔法を張り、閉じこめる。俺が魔力を感知できたから避けれたが、魔力感知に乏しいものは捕まってしまうだろう。
「なかなかやるではないか」
 手加減をしていたつもりはないが、俺も本気で挑まなければならないようだ。
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

【完結】うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

聖女じゃない私たち

あんど もあ
ファンタジー
異世界転移してしまった女子高生二人。王太子によって、片方は「聖女」として王宮に迎えられ、片方は「ただの異世界人」と地方の男爵に押し付けられた。だが、その判断に納得する二人ではなく……。