アグネイヤIV世

東沢さゆる

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第二章 輝ける乙女

美獣2

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 外出をするな、と言われて素直に言葉に従うような性分ではない。ジェリオは、カイラが去って暫くしたのち
「ちょっと出てくる」
 帳場に声をかけてから、夕闇迫る街へと足を踏み出した。
 南国の夜は早くに更けるが、喧騒は絶えることがない。気候が温暖であるせいか、街が闇に包まれる時分であっても、煌々と街灯がともり、酔客たちが通りを闊歩する。彼らを呼び込む色町の若衆も、妖しげな媚薬を販売する辻の老婆も、果たして眠る時間はあるのだろうか。そんなジェリオの危惧をよそに、
「にいさん、いい娘がいるよ。寄っていかないか」
 娼婦の仲介をしているのであろう、下卑た笑いを浮かべた男性が、ジェリオの袖を引く。それをあっさりと振り払い、彼は裏通りから表の繁華街へと歩を進める。
 ほんの数ヶ月前までは、アヤルカスと言う名であったこの国は、今では神聖帝国と名を変えている。名前が代わったところで、何が変わるわけでもないだろうとジェリオは思うが。それなりに、変化はあるのだろうか。
 次期大公と噂されているアヤルカス公爵は、大陸にその名を轟かすほどの、比類なき美貌を誇る青年だという。今宵は、その青年の花嫁選びのための宴が開かれているというが。
(俺の知ったこっちゃねぇ)
 遠くそびえる紫芳宮の塔に目をやり、ジェリオは唾を吐き捨てる。
 過去の記憶はない。自身が何者かもわからない。ただ、ジェリオという名と、暗殺者である過去がカイラから与えられた。では、カイラは何者かと言えば。長いことジェリオの面倒を見ていた女性だと彼女自身は告げる。つまり、ジェリオは彼女のヒモのような生活をしていたのだと。
 情事の合間に植え込まれた過去は、しかしどこか違うような気がする。
 カイラの身体は申し分がなかったが、強いて言えばなにかが足りなかった。あれほど魅力的で肉感的な女性であるのに、心をときめかせるものは、何もなく。ただ、生活のために彼女に纏わり付いていた、それだけであるにしてもなんとなくしっくり来ない。それに、自分は誰かの世話になるような、軟弱な男ではなかったはずだと。どこかで自尊心が叫んでいる。
 しかし、カイラが

 ――あなたが子供の頃から、ずっと。あげたのよ。

 媚薬の香り漂う唇で告げると、そんなものか、という気がしてしまうのが不思議であった。
 カイラを否定すると、頭痛がする。まさに、割れんばかりに頭が痛む。これは異常だと思うのだけれども。すべてを否定する証拠は、どこにもない。

「まったく、そんな強情仰らないでくださいよ。わたしが若様に叱られるんですから」

 雑踏の中から、甲高い声が聞こえる。
 何気無しに振り返れば、声の主はおさげ髪の派手な衣裳をまとった少女――いや、少女にしては違和感がありすぎる存在であったが――だった。彼女は娼婦が纏うような扇情的な衣裳に似合わぬ難い口調で、傍らの女性になにやら小言めいたことを告げている。傍らの女性――馬上にその身を預けている人物は、夜目にも鮮やかな赤毛であった。あれは、アヤルカスの女ではない。アダルバードの血統である。これほどまでに見事な赤毛は、見たことがない。
「……」
 ジェリオが、見るとは無しにその二人連れに目をやっていると、
「あたしゃ、誰にも世話にならないで生きていくつもりなんだよ。いままでもこれからも。この期に及んで、何が悲しくてあの娘の世話にならにゃいかんのだ」
「そう仰らないでください、これは非常事態なんですから。暫く身を隠して、ほとぼりがさめたら戻れば良いでしょう。ほら、ちゃんと被り物フード被ってくださいよ。師匠は目立つんだから」
 師弟と思しきその二人は、ごちゃごちゃ言い合いながら、ジェリオの横を通り過ぎようとした。そのときである。
「あ、れ?」
 派手な衣裳の少女が、頓狂な声を上げた。その視線の先にいるのは、自分。ジェリオは不快感もあらわに、少女を見下ろした。
「なにか用か?」
 鋭い視線で睨むが、少女は臆することがなかった。若干首をすくめる仕草は見せたものの、身を引くこともなく、ジェリオの顔を見つめている。
 彼女に、どこかであっただろうか。
(俺を、知っている?)
 失われた記憶を辿ろうとするが、霧は晴れてはくれない。どころか、この少女にはまるで覚えがない――そんな、直感が閃く始末である。いくらなんでも、こんなに趣味の悪い女と、情を交わしたいと思うほど飢えてもいなければ、落ちぶれてもいない。
 では、この少女は、なぜ?
 ジェリオが眉を顰めるのと、
「失礼」
 彼女の手が伸びて、彼の髪をかきあげるのは、同時だった。
「ああ、やっぱり」
 少女は満足げに笑い、馬上の赤毛の女性も、何かに驚いたように目を丸くした。
「なにするんだ、いきなり」
 ジェリオは少女の手を払う。同時に、僅かに触れた指先に性別の違和感を覚え、彼は眼を細めた。これは、少女ではない。女装の少年だ。
(男娼かよ)
 気色が悪い。道理で記憶にないはずだ。そちらの趣味は皆無である。と、嫌悪感をむき出しにしたままその場を去ろうとしたのだが。
「あれ、わたしが仕上げ手伝ったものですよね?」
 少年の言葉に、足を止めた。無意識のうちに、手が自身の耳元に伸びる。そこに下げられているのは、茜石の耳飾。剣と同じくらい大切なものだと、本能が告げるままにそれだけは手放さないでいた。あからさまに女物ではあったが、おそらくカイラかどこかの娼婦から貰ったものに違いない。記憶を辿る糸になるであろうと、思っていたのだが。
「待てよ」
 師弟を振り返り、少年の肩を掴んだときであった。
「あああっ」
 少年が目を丸くし、ジェリオの背後を驚愕の表情で見やる。
「……!」
 ジェリオも、その気配を察知していた。背後から叩きつけられる気配。それが、紛れもない殺気であることを、感じ取り。ジェリオは少年を突き飛ばした。そのまま、振り返らずに剣を鞘ごと引き抜き、背後の敵に叩きつける。ぎゅっ、というような呻きに似た声が聞こえ、人が倒れるどさりと重い音が響く。
「なんだ?」
 通行人は、酔客が気分が悪くなって倒れたのか、位にしか思わないのだろう。特に足を止めることもなくその場を流れていく。
 ジェリオの技の一部始終を見ていた少年は、あんぐりと口を開けたまま、その場に尻餅をついている。けれども、殺気がひとつではないことに気づいたジェリオが
「馬鹿! 早く逃げろ」
 素早く囁くと、状況を理解したのか。彼はひどく無様な姿で馬に上りあがり、
「師匠! 逃げましょう、師匠」
 甲高い声を上げて、馬の腹を擦り上げた。
「って、走らせてどうするんだよ、あたしゃ馬なんて」
 乗ったことがない、と悲鳴に近い声を上げる女を無視して、ジェリオは馬のわき腹を拳で叩く。と、馬は高く嘶き、棹立ちになってから雑踏をかき分けるように一直線に走り去った。
 紫芳宮に向かって。
(紫芳宮?)
 宵闇に沈み行く、その優美なる姿をジェリオはしっかりと目に焼き付けた。


「なぜ、邪魔をする?」
 寸でのところで獲物を奪われた刺客たちの怒りは、当然ジェリオに向けられる。彼らをあおりつつ、路地裏に飛び込み、袋小路に追い詰められた形となったジェリオは、それでも余裕を失うことも抜刀することもなく、壁を背に彼らを迎えた。
 刺客は全部で、三人。先程失神させた相手を数に入れれば、四人か。
 できそこないの男娼と、その師匠――というのも妙な話であるが――を、襲うにしては、随分と念が入っている。あの二人はいったい何者なのかと、ジェリオの好奇心が疼きだすのも当然だろう。
 それに。
 茜石の耳飾。あの少年は、この謂れを知っている。
 記憶の手がかりを、むざむざ殺されてなるものか。
「気まぐれ、って奴かな」
 冗談めかした答えに、刺客の一人が目を吊り上げる。この商売には向かぬ気の短い青年は、そばかすの浮いた顔に朱を散らし、一気に剣を振り上げた。そのままジェリオに斬りかかろうとするのを、やや年長の男性が手で制する。
「あなたさまが手を汚すことは、ございません」
 彼は怒り心頭の青年を背後に押しやり、自ら一歩踏み出してくる。威圧的な態度に、大抵のものは怯むやも知れぬが。ジェリオは腕を組んだままその動きを目で追っていた。
「カルノリア訛り、だな」
 彼らの公用語には、カルノリアの訛りがある。語尾が僅かに切れ上がる、独特の発音。ジェリオの言葉に刺客たちは更に緊張の度合いを高めるが、それ以上に驚いたのはジェリオ自身であった。
 なぜ、カルノリア訛りだと、彼らの言葉がカルノリアの響きを持っているとわかったのだろう。軽く目を見開いたジェリオの、一瞬の隙を付いて。男性が剣を繰り出してきた。
「……っ」
 ジェリオは、それを紙一重で交わす。
 何のことはない、剣筋は安易なものであった。この一団は、刺客などではない。衛兵崩れもしくは、傭兵崩れ――下手をすれば、正規の剣技を教え込まれた騎士達ではないか。そんな人物が、何ゆえに玄人を雇わず、自ら手を下すような真似をするのか。
 奇妙な話である。
(お坊ちゃんの、お遊戯みたいな剣かよ)
 そんな軟弱な技など瞬時で見切れる。ジェリオは交わしざまに男性の脇腹に肘を叩き込み、苦しさにくずおれそうになる彼の足を払った。と同時に剣を抜き放ち、彼の急所に切っ先を押し当てる。
「イーヴァイン!」
「イーヴァイン殿!」
 残るふたりは、絶望的な声を上げた。金髪の青年、彼がこの中では最も身分が高いのだろう。いま一人の亜麻色の髪の壮年男性は、イーヴァインを気遣いつつも、青年を守るように一歩踏み出している。
「貴様」
 怒りに震える青年は、射抜かんばかりの鋭い視線をジェリオに向けた。けれども、温室育ちの半ば駄々っ子の我侭ともとれるそんな視線に臆するジェリオではない。逆に彼をひと睨みすると、青年は地獄の使者に心臓を掴まれたようにびくりと身を震わせ、赤い顔を一気に青ざめさせた。
「で? あんたらは、何者だ? なぜ、さっきのガキどもを狙った?」
 尋ねると、イーヴァインがくぐもった声で。
「答えると思うか、我らが」
 下衆が、と吐き捨てると同時に、蔑みの視線をジェリオに向ける。
 貴族が、富裕層の商人が、平民を見下す目だ。
 不愉快なことこの上ない視線――記憶を失ってはいても、この視線だけは忘れない。心の奥底に眠る、苦い思いがあるのだろう。ジェリオは奥歯を噛み締め、首領格であろう金髪の青年に視線を投げる。
「あんたらみたいなお遊戯の剣で、殺せると思うか?」
 挑発的な言葉に、金髪が拳を震わせた。きさま、と何か言い掛けるのを遮って
「俺を、雇わないか? 腕は見ての通りだ。俺なら、あんなガキや女のひとりやふたり、簡単に始末できる」
 商談を、持ちかけた。
 彼らの間に、一瞬の沈黙が走り、金髪は壮年男性と顔を見合わせる。ジェリオの足元に転がる男性も、もの言いたげな目を仲間に向けた。
「貴様を、雇えと言うのか?」
 金髪が声を震わせる。恐怖からではない、何かしらの緊張から絞り出された声だ。
「レンシス殿、いけません」
 イーヴァインが激しく被りを振る。
「このような、素性のわからぬ男の言葉など聞いては」
 なりません、と言う前に。ジェリオは剣を握りなおし、柄の部分で彼の腹を突いた。イーヴァインは悲鳴を上げることも無く、あっさりと意識を手放す。それを見て、いきり立つレンシスであるが。
「下衆の仕事は、下衆に任せるほうが良いだろう?」
 皮肉めいた笑みを向けると、悔しげに唇を噛んだ。彼は傍らの同僚――部下か――に視線を送ると、渋々と言った様子で頷いた。



「そのまえに」
 まず、やって欲しいことがある。と。彼らはジェリオを別の場所に誘った。彼らが逗留していると思しき宿、そちらにイーヴァインを送り届けたのち、レンシスと亜麻色の髪の男――エルシスと名乗った――は、
「これから目にすること、耳にすることは、他言無用」
 この商売にありがちな口止めをし、口止めの呪いをさせてから、とある廃屋へと足を運んだ。破れかけた扉を殊更丁寧に押し開け、奥の壁をこれまた丁寧にずらすと、足元にぽっかりと空間が現れた。階段である。そこを下りろ、というのだろう。ジェリオは燭台を押し付けられ、先に行けと促される。彼らとて、ジェリオを完全に信頼しているわけではない。背後から斬りかかられることを恐れての行為だろう。ジェリオは別段異を唱えることもなく、彼らの言うがままに地下へと降りる。
 ひやりとした空気と、カビの匂いが鼻をつき、どこかで同じような体験をしたような――既視感を覚える。こんな閉塞的な空間を、自分は誰かの姿を求めて歩かなかったか。
(くそ)
 記憶は蘇ってはくれない。ジェリオは顔をしかめ、奥歯を鳴らした。と。
「そこだ」
 背後から声をかけられた。足を止め、視線を下に向ければ、そこには何かが転がっている。何か――ぼろきれのようになった人間であった。
「その女を、始末しろ」
 エルシスの淡々とした声が聞こえる。ジェリオはその場に膝をつき、燭台の灯りを彼女に近づけた。長髪の、まだ若い女性のようである。固く閉じられたまぶたは、灯りにも反応することなく、睫毛が震えることもない。幾度も殴られたのだろう、腫れ上がった顔は、見るも無残に彼女本来の面影を消し去っている。唇の端から溢れた血糊に指を這わせると、それは既に乾ききっていて。
「舌を、噛んだんじゃねぇのか?」
 ジェリオはエルシスを振り仰ぐ。
「それはない」
 舌を噛まぬよう、口内に布を押し込んであると彼は言った。この血は殴られたときの傷だろうとも。
「女性に、無体なことをしたのか?」
 彼の背後から顔を出したレンシスが、眉を顰める。
「いえ。平民の女ですから」
 貴族の出でなければ、女性とも認めない。そのような口ぶりに、ジェリオは歯を食い縛る。レンシスもエルシス同様に感じているのか、彼の言葉を否定することはなかった。ここに倒れているのが、もしも貴族の娘か、奥方かだとしたら。レンシスはおそらく同僚に掴みかかったのであろう。
「で? こいつをどうしろって?」
 聞くまでもない。彼女を殺害して、その遺体を始末しろというのだろう。利用するだけしておいて、価値がなくなればそのまま野垂れ死にをさせるか、もしくは、捨て駒に処理をさせる。貴族のやり方は、どれも同じであった。
 激しい暴行を受けたらしい女性は、もう、虫の息である。放っておいてもここで落命するだろう。それでも、自身らとかかわりのないところで葬ることを望むのか、彼らは。
「わかった」
 内心の怒りを抑え、ジェリオは申し出を承知する。
「こいつは、さっきのガキどもの仲間だな?」
 かまをかけると、エルシスはなんとも複雑な表情をする。彼らも、その辺りは理解していないのだろうか。この様子から見るに、件の女性を拷問にかけて、何らかの情報を引き出そうとして失敗。ゆえに、女性と縁のあるらしいあの『男娼』に目をつけて、ということだと思ったのだが。
「本来、あの少年と同行している赤毛の女に用があったのだ」
「レンシス殿」
 ぽつりと呟いたレンシスを窘めるように、エルシスが声を上げる。
 何を間違えたか、と。レンシスは深い息をついて。
「あの女をこの娘だと思い込んで、こやつらは彼女を問い詰めたようだ。端から、彼女は我々を愚弄する気で身代わりを立てていたようだな」
 レンシスたちの目的は、少年のほうではなく。馬上の『師匠』のほうであったのか。しかも、殺害が目的ではなく、拷問――なんらかの情報を引き出すことが優先らしい。
「なれば、この女には用はない。今宵の闇にまぎれて、川にでも投げ込んでおけ」
 エルシスは吐き捨てるように言い。レンシスを促して地下室を出て行った。
 残されたジェリオは、鋭く舌打ちをして、今一度女性の顔を覗き込む。腫れが引ければ、それなりの見られた顔になるのだろうか――ふと、そんなことを考えて、おかしくなった。カイラと同じ黒髪の娘、アヤルカスには珍しくもないその髪。けれども、妙に懐かしく思えるのは、気のせいか。
 彼は、みつあみにされた長い髪を手に取った。そっと指を入れて、絡んでいた毛先を解きほぐす。洗いざらしの髪は、ごわついてお世辞にも滑らかとはいえない。ジェリオは感触を確かめるように手の中で毛先を弄ぶ。そして、ふとあることに気づき、彼女の腕に灯りを近づけた。
 二の腕に巻かれた包帯。解けかけたそれを引きちぎるように剥ぎ取れば、その下から奇妙な紋様が現れた。三日月に似た紋様。中途半端な記号のような。割符のような。
「……?」
 ずきん、と頭の奥が痛む。
 これと同じものを、どこかで見たような気がする。どこかで――。
 もしも、ジェリオの記憶が失われてなければ。彼は、ここにいる女性がアヤルカスの密偵・ミムであると解ったであろう。しかし、彼は思い出せなかった。目の前の女性が誰であるか。彼女と数ヶ月前に出会ったことも。その彼女の『夫』に傷を負わされたことも。
 なにひとつ、思い出せなかった。
「くそったれ」
 声に出して呟くジェリオの耳に、火のはぜる音が聞こえたのは、そのときであった。振り仰げば、天井の辺りからゆるゆると白い煙が流れ込んできている。火をかけられたのだ。あのふたりは、ここでこの女性もろともジェリオを焼き殺す算段であったのだ。
「あいつら……っ」
 やはり、貴族は信用できない。彼らは人の姿をしたバケモノだ。その身を斬っても、血など一滴たりとも零れぬだろう。女性から剥ぎ取った包帯を口に当て、ジェリオは煙を吸い込まぬよう身を低くした。地下室から脱出するには、この階段を上がらねばならない。他に、逃れる道などあるのだろうか。
 素早く考えをめぐらすジェリオの腕を、弱々しく掴むものがいた。
「……」
 件の女性、ミムである。
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