オレと猫と彼女の日常

柳乃奈緒

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相棒とボディーガード

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 仕事を終えて、会社を急いで出ると
オレは、すぐに駅に小走りで向かっていた。

伯母には…猫の世話には、慣れているから
あわてて帰ってこなくて良いと、言われてたけど
これはなんなんやろ? 

どうしても早く、相棒に会いたくて
オレは、どこにも立ち寄らずに
伯母の営んでいる飲み屋へ直行していた。



「おかえり~! せいちゃん早かったやん!」
「ただいま~! あはは。なんかやっぱり気になってしもて」

オレが、店の戸を勢い良く開けて入ると
伯母は、ニィッと笑って迎えてくれていた。

きっと…オレが、急いで帰ってくるって
伯母には、お見通しやったんかもしれへん。

『ミャーン……ミャーン』

相棒は、座敷で伯母の猫のがんもとミケと
一緒に寝ていたみたいやったけど…
オレがわかったのか? 起き上がってこっちを向いて鳴いていた。

「あらあら。チビちゃんも
せいちゃんに会いたかったみたいやね」
「そやろか? ほんまにそやったら、
うれしいけどな~♪ へへへ」

伯母の店で、夜定食を格安で食べさせてもらって
オレは、伯母と従姉の比奈にもお礼を言って
あまり長居はせずに相棒をつれて店を出た。

週の前半は、出来るだけ体力を温存しておきたい。

そやから、日付が変わらんうちに
オレは、早く布団に入って眠りたかった。

家に帰ると、オレはすぐに相棒を
キャリーから出してやって、シャワーを浴びて
ビールを片手に少しソファーでくつろぎながら
テレビを見ていた。

すると、相棒は器用にオレの部屋着を
よじ登って、右側の脇に頭を突っ込んで
寝る体制に入っていた。

「たまらんなぁー♪」

オレは、脇に相棒を抱えたままの姿勢で
歯を磨いて布団に入った。

毎日、寝つきが悪かったはずのオレが
睡眠薬でも飲まされたみたいに
布団へ入ってほんの数分程で、眠りについてしまっていた。

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翌朝も、昨日と同じように
1時間早く起きて、オレは相棒を連れて
『黒猫』で、伯母に相棒を預けてから駅へ向かった。

オレがホームで電車を待っていると
オレに気づいた彼女が手を振りながら
オレの方へ走ってきた。

「おはようござます。昨日は
本当にありがとうございました」
「おはよう。あんまし、こんなこと朝から
聞かれたくないやろけど…。チカンされたん。
初めてでは無かったんちゃう? あいつら、
常習犯っぽく見えたんやけど」

オレは、少し立ち入って彼女に
昨日の2人組のことを聞いてみた。
すると、やはり彼女は小さく2回頷いて
少し唇を震わせていた。

「先週から、私が1人でこの時間の電車に
乗るようになってからです。それまでは、
部活の朝練とかがあって、友達とか後輩と電車に
乗っていたので、チカンにあうことは無かったんですけど…」
「多分、この時間帯のラッシュを狙った
チカンの常習犯なんやろな。伯母の知り合いに
刑事さんがおるから、一応相談しとくわ」

オレが、思っていた通りやった。

電車に乗ると、昨日の2人組も
少し離れた場所で乗っていた。あいつら、
オレが通報するとか思わんかったんやろか? 
ああいう輩は、神経図太いからな。あんな野郎どもは、
私服刑事に現行犯で、逮捕されてしまえばええんや。

「藤田さん? 顔こわくなってますよ…」
「あ。え? マジで? ごめんごめん」

ついつい彼女の存在を忘れて
あの2人組を凝視していたので
オレの顔が、凄く怖い顔になっていたらしい。

下からオレの顔をのぞき込んで
話しかけて来た彼女は、クスクスと笑って
オレの右手をギュッと握っていた。

「子猫ちゃん。元気ですか?」
「ああ。めっちゃ元気やで! 
オレが帰るまでは、伯母が見てくれてる」
「伯母さんって? あの、陽子さんですよね?」

やっぱり知っていたのか…。
世間は広いようで狭いからな~と
オレは思いながら、黙って2回頷いておいた。

「お店に子猫ちゃん。おるんですか?」
「うん。オレが会社から帰るまでやったらおるで」
「あ。じゃ、今日帰りにのぞいてみよう♪」

彼女は、大きな綺麗な黒い瞳を
オレの顔に近づけて、嬉しそうにニィッと笑っていた。

そして電車を降りるまで
オレの右手を彼女は、何故か離してくれなかった。

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