オレと猫と彼女の日常

柳乃奈緒

文字の大きさ
16 / 32

イケメン君と元カノ

しおりを挟む
✡✡✡✡✡

無事にオレの母と対面を済ませた彼女は、気負うことも無くオレをそっちのけで、母と2人で台所を使って焼き菓子を作ったりオレの子供の頃の話を聞かされて笑って楽しい時間を過ごしてから、家へ帰って行った。(もちろん、夜道は危ないからオレが家まで送ったんやで)

母の光江はというと、翌日帰る時に駅の改札で荷物を置いて立ち止まると、オレに向かってこう言った。

「せいちゃん。ユイちゃんのことやけど、女子高生やからとか気負うんはやめたほうがええで。あの子はしっかりしてる。ちゃんと一人前の女性として向き合うんやで! わかったか? ほな、またね♪」

 オレに返事をする間も与えずに、母はさっさと荷物を持って改札を通ってホームへ向かった。一度だけ振り返ってニィっと笑って手を振って大きな声で「頑張りやーーー!!」って叫ばれたオレは、かなり恥ずかしかった。

✡✡

 それから、翌週の週末に無事に相棒の去勢手術を終えて何事も無くオレも彼女も順調な交際を続けていた。

ところが…。

 その日、いつもの様に仕事を終えてオレが急いで伯母の店へ向かっていると、後ろから聞き覚えのある女性の声でオレの名前を呼ばれたので、振り返ったら3年前に別れた元カノがオレを見て手を振っていた。

「やっぱりせいちゃんやん! 久しぶり♪ 元気やった?」
「なんや? 阿佐美やないか! どないしたんや? こんなとこで? 少し、痩せたんちゃうか?」
「せいちゃんこそ、なんでこんなとこにおるん? あ、そんなことより、少し時間ある? ほんまに少しでええねん。ちょっと話を聞いてくれるだけでええから…」
「変な勧誘とかやったらすぐに帰るからな! ほんまにちょっとだけやで!」

その時、なんか阿佐美が思い悩んでるようにも見えたから、オレは駅前にあるファミレスへ入って阿佐美の話を聞くことにしたんやけど…選んだ場所が悪かった。

店員に案内された席の真横の席に、あのイケメン君が同じ学生服を着た男子2人と座っていて、オレと阿佐美を見てすぐに気がついて立ち上がってオレの横に座っていた。

✡✡

「ちょっと! おじさん。その人誰や? まさか浮気相手とかとちゃうやろな?」
「オイオイ!! 誤解やって! 彼女とは3年ぶりにそこでバッタリ会って、なんか話があるいうからここに入っただけや! ガキが変な詮索すんな!」

 イケメン君に一方的に責められているオレを眺めて阿佐美は、何も言わずにクスクスと楽しそうに笑っているだけやった。

「せいちゃん? 高校生に知り合いがおるん?」
「たまたまや! ちょっと知ってるだけや! それで? 話ってなんやねん?」

何故かオレの横にはイケメン君が座ったままで、オレは阿佐美の話を聞くことになってしまった。

「実は私な、もうすぐ結婚するんやけど…。なんか、わからんようになって来てしもたんよ」
「結婚するんか? そら、良かったやん。それやのに何がわからんねん? マリッジブルーってやつか?」
「おじさん。女心がわかってませんね。結婚ともなると、本人同士だけではなく、両親や兄弟姉妹に親戚まで関わってくるもんやから、色々とデリケートな女の人は結婚前に考えさせられることが、それなりにあるんですよ?」
「あら、このイケメン君♪ 女心を良く理解してるやん。せいちゃんに話すより、為になりそうやわ」

 男としての力量を元カノにこんなところで、高校生のガキに劣ると言われた気がしてオレはかなり傷ついていた。

「どうせオレには、女心はわからんねん」
「おじさん。開き直るんも女の人には逆効果で悪い印象しか与えませんよ。わからないんやったら、わかろうと努力せんと!!」
「そうやねん。私の旦那になる人も、ちっとも私の悩んでることを理解しようってしてくれへんねん。釣った魚には、餌はやらんのやね?って昨日の夜に大喧嘩したんやで!」
「その結婚。少し考え直したほうがええんと違いますか?」

 結局、阿佐美はオレじゃなくてイケメン君に1時間くらい話を聞いてもらって、少し気持ちがスッキリしたとニッコリ笑って帰って行った。

「今日のことはこれでチャラですからね。あれって、おじさんの元カノでしょ? ユイには今回は黙っておいてあげます。ユイの為にですからね」

ヒラヒラとオレにファミレスの伝票を手渡すと、イケメン君はケラケラと笑いながら店を出て行ってしまった。残されたオレは仕方なく、2枚の伝票の合計額を支払って店を出た。なんか知らんけど痛い出費やった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

私は私で幸せになりますので

あんど もあ
ファンタジー
子爵家令嬢オーレリーの両親は、六歳年下の可憐で病弱なクラリスにかかりっきりだった。 ある日、クラリスが「オーレリーが池に落ちる夢を見た」と予言をした。 それから三年。今日オーレリーは、クラリスの予言に従い、北の果ての領地に住む伯爵令息と結婚する。 最後にオーレリーが皆に告げた真実とは。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...