オレと猫と彼女の日常

柳乃奈緒

文字の大きさ
18 / 32

相棒の健康管理とジュエリーショップ

しおりを挟む
✡✡✡✡✡


そんなこんなで、彼女とオレが抱き合っていたら
お腹が空いて、我慢出来んようになった相棒が
オレの足元へ来て、抗議の声を上げていた。

「チビちゃん。お腹空いたんやね。ごめん、ごめん!」
「こいつは、きっちりこの時間に飯が出てこんかったら、
ずっとオレの耳元で、鳴いてるからな!」
「フフフ♪ 休みの日もゆっくり寝られへんね」
「そうなんや! まぁ、生き物と暮らしてる運命っちゅうやつやわ」

オレは膝から彼女を下ろして、部屋着を身につけて相棒の皿に缶詰を入れてやった。相棒は、かなりお腹が減ってたらしくて、凄い勢いで平らげてからもっとくれと催促していた。

「去勢手術の後は、気をつけてあげんと…太りすぎる子が
多いみたいやから、ご飯もやりすぎんようにせんとね」
「そうなん? そらあかんわ! チビ! 食い過ぎたら太るて、
今日から、お代わりは無しやで!」

『ミャーン! ミャーン!』

彼女に言われて、オレが缶詰にラップをかけて
冷蔵庫にしまおうとしたら、相棒が足元で
どうでもええからもっとくれと、鳴いて訴えていた。

「こんな時は、どうしたらええん?」
「缶詰やから、あと少しくらいはあげても良いと思うよ」
「後少しやったらええんやて! 良かったな♪」

『ミャーン♪ ミャーン♪』

しまいかけた缶詰を、少しだけ皿へ入れてやると、
相棒は、機嫌よく尻尾をゆらゆらさせながら、
今度は、ゆっくり味わって食べているように見えた。

「猫のご飯も色々あるから、カロリーコントロールが出来る
ご飯を、今のご飯がなくなったらあげてみたらいいと思う」
「そんなんもあるんやな! 昔はご飯の残りもんとかを平気で
あげててんけどなぁー! こいつらも贅沢になったんやなぁー」
「病気の猫用の処方食とかも、すっごい増えたんよ」

彼女のアドバイスにオレが感心していると、
缶詰を食べ終えた相棒が、オレと彼女の間に座って
満足そうに毛づくろいを始めた。

✡✡

相棒の腹が満たされて静かになったので、オレと彼女は
シャワーをあびて、少し遅めの朝食を食べていた。

「そや! 今日は病院は? 手伝わんで良かったんか?」
「うん。今日は、休みをもらってん。誠二さんとたまには
日曜日も1日一緒におりたかったから」
「そやったんや! ん? 最初から泊まる気やったんか!?」
「フフフ♪ それよりも、昨日の話を蒸し返すみたいであれやけど、ほんまに絶対待ちくたびれて他の人を好きになるなんてことは、無いよね?」

昨日にも増して彼女は真剣な眼差しで、オレの気持ちを確かめていた。

「わかった。わかった。そんなに不安やったら指輪買いに行こう!」
「えっ!? 指輪?」
「そうや! 婚約指輪や! いらんか?」
「いる! 欲しい!」

なんかなぁ、ことが済んだ後にすぐに婚約指輪って、
罪滅ぼしみたいに思えて、気が引ける気もしたんやけど。

あまりにも彼女が不安そうな顔をするもんやから、
オレは、婚約指輪を彼女と買いに行くことにした。

✡✡

急いで出かける用意をして、相棒には留守番してもらって
商店街にあるジュエリーショップへ彼女と向かった。
日曜日の商店街は、そこそこ賑わっていてお店へ入ると
何組かカップルがショーケースの前で、指輪やネックレスに
その他のジュエリーを吟味していた。

「ほんまにええん?」
「ええんや! 気にせんと選んでや!」

彼女は、何度もオレに確認してから何かを見つけたらしく
ジッと立ち止まって、動かなくなっていた。

「どうしたん?」
「あの…誠二さん、指輪じゃないとアカンかな?」
「なんで? どうしたんや?」
「あれ……あれがええなぁって思うんやけど」

彼女が指差したショーケースの中には、大小の猫が
2匹寄り添っている。シンプルやけど、可愛らしい
ペンダントトップが飾ってあった。

「あれにしよか?」
「ええの?」
「ええよ!」

オレがすぐに店員を呼んで包んでもらおうとしたら
彼女は、すぐに身につけたいと…小さいほうの猫の
ペンダントを手に取って、嬉しそうに身につけていた。

「チビちゃんのお陰で知り合えたから、なんかこれが
しっくりくると思ってん」
「そういうことか。確かにそうやな!」

彼女の言葉に深く納得させられて、少し恥ずかしかったけど
オレも大きいほうの猫のペンダントを、彼女につけてもらって
仲良く手をつないで、オレと彼女は店を出た。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

私は私で幸せになりますので

あんど もあ
ファンタジー
子爵家令嬢オーレリーの両親は、六歳年下の可憐で病弱なクラリスにかかりっきりだった。 ある日、クラリスが「オーレリーが池に落ちる夢を見た」と予言をした。 それから三年。今日オーレリーは、クラリスの予言に従い、北の果ての領地に住む伯爵令息と結婚する。 最後にオーレリーが皆に告げた真実とは。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...