勇者が魔王を倒しに行く話

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出会い

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「やっと、川だ」
 橋の袂から、川へと下る藪を通る細道を降りていくき、川原へと出ると、大小さまざまな石がゴロゴロしていて歩きにくい。
 ん、先客がいるのか。
 川縁へ座り込み、何かを洗っている、力を入れて洗っているのか頭の後ろで束ねられた金色の髪が左右に揺れていた。
「こんにちは、自分も洗い物をしたいのでお隣いいですかね?」
 後ろから声をかけると、その人物は手を止めてゆっくりと立ち上がり体ごとこちらを向く。
 金色の髪がふわりと揺れその奥の水色の瞳がこちらを見つめる。
「どうぞ」
 その女性はこちらを見て答え、隣を勧めてくれた。
「ありがとうございます」
 普通に答えてくれたことに安堵し、笑顔でお礼を言って軽く会釈をすると、その女性も会釈を返してくれた。
 身長は自分より少し低いくらいかな、白い厚手の長ズボンに革のブーツを履き、水色の厚手の長袖上着、大きめの上着なのかダボっとしていて膝上までの長さがある。その上着を革のベルトで止め、革製の胸当てを付けている。装備には古めの傷や汚れが多く、結構長く使ってる様子だと思える。
 かわいいより美人と言った方がよい顔立ちで、髪はほどくと腰くらいまでありそうだ。 ずっと見つめ続けるのも失礼なので、隣、下流側に移動ししゃがみ込み上着を脱いで洗い始める。
「うわっ!つめてぇ~」
 そりゃそうか、一月の後半のこの時期だ水が冷たて痛い。
 返り血で汚れていた上着やショートソードを洗いつつ女性の方を見ると、またしゃがみ込んでゴシゴシと何かを洗っている。覗き込むと大きな剣の様だ。
「大きな剣ですね、あなたが使うのですか?」
 長さが二メートルはありそうな幅広の両手剣だ、とてもこの女性が振り回せるとは思えないが他に人は居なそうだし、不思議に思い尋ねてみる。
「あぁ、引退した父に貰ったものだ」
 呟くように言うと、手を止めて両手剣を見つめる。その瞳は両手剣を通してどこか遠くを見つめているようだ。
「父は昔魔獣退治を生業にしていてな、私は父のようになりたくて鍛えていたんだ、やっと振り回せるようになったので後は実戦で鍛えようと思ってな、旅に出たんだ」
 お父さんのことを思っているのか、嬉しそうに話している。
「魔獣と言っても色々といるが、父が相手にしていたのは猪型の魔獣が多くてな、中には四メートルを超える奴もいたが、突進してくるそいつの頭を一刀両断だ!」
 彼女はおもむろに立ち上がると、両手剣を縦や横に振るい始めた。丸い石がゴロゴロしている足元が悪いこの場所でもふらつくことはなく、自在に操っているように見える。
「すごいですね!」
「まだまだ父には届かないがな」
 彼女は、照れたような笑顔で答えてこちらへと近づき、右手を差し出してきた。
「ありがとう。今まで会ってきた男の人達は自分がこの剣を使っていると、舌打ちして憎しみの目を向けてきたり、馬鹿にしてきたりしてたんで、ちょっと凹んでしまってて・・・・・・。そのように褒められるとうれしく思う」
 自分は差し出された右手を握り返す。お互いに手は洗い物で冷えていたが、手を握ると暖かさを感じる。
「そうなんですか?きっと器の小さい人達だったのでしょう。嫉妬してたのですよ」
 そうにこやかに答えて。
「そういえば名乗ってませんでしたね、自分の名前はタケルと言います。北を目指して旅をしているところです」
 勇者だとか魔王だとかは、自分も未だに良く判ってないので北を目指しているということだけを伝える。
「私はアクアと言う。私も北を目指そうと思っているのだ。北に行くほどに力のある魔獣や魔物がいると聞くのでな」
 彼女、アクアは笑顔で答え自分もてくれる。
「アクアさん」
「アクアでいいよタケル。そんなに堅苦しい話し方もしないでほしいな」
「そっか。アクアはこれからどんな風に旅をしていく予定なんだ?」
 自分はただ北を目指し村を出ただけで、どのように北を目指していくのかは決まっていないので、旅の先輩のような気がするアクアへと尋ねてみる。
「そうだな~・・・」
 アクアは顎に拳を当て少し考えるような仕草をすると。
「うん。取り敢えずあまり考えていなかったが、まずは街に寄り、ギルドへ登録しておこうと思う。そうして日銭を稼ぎながらの旅になるかな」
「ギルド?どういったものなんだい」
 名前だけは聞いたことがある気がするが、どういったものなのか知らなかったため尋ねてみる。
「登録をすると身分証がもらえて、その身分証を持っているとそこのギルドや、ほかの街などのギルドで仕事を受けることが出来るものらしいぞ」
 ちょっと得意げにアクアが教えてくれる。なんか可愛いな。
「へ~便利なものなんだな。それは自分も登録しておきたいな」
 登録しておきたいというより、登録しておかないと旅の資金調達不安があるし。
「タケル!自分を自分なんて言ううのは堅苦しいと思うのだが・・・」
 アクアが口を尖らせ、眉を寄せつつこちらを見つめてくる。う~ん堅苦しいか・・・ならアクア相手には『俺』でいくかな。
「分かった、これからは『俺』と言うことにするよ」
 苦笑しつつ答えると。
「ああ、それが良いと思うぞ」
 にこやかに返してくる。しかし最初の印象と違って、表情がコロコロと変わるもんだ。「ん?どうかしたか?」
 コロコロと変わる表情が楽しくて見つめすぎていたかな。キョトンとした表情でアクアが尋ねてきた。
「いや、何でもないよ」
「そうか?」
 疑念はありつつも納得してくれたかな?

「さて、洗ったものを乾かしたいけど・・・」
 乾かすのに何か使えるものはないかと思い、「そういえば」と、懐から母に渡された精霊石を取り出し眺める。
「これって使えるのかな?どうやって使うんだろう?」
「ほう、火の精霊石を持っているのか、私は水の精霊石を持っているぞ」
 アクアはそう言うと胸元に手を入れ、そこからペンダントを取り出す。銀色のチェーンの先に精霊石がぶら下がっていて、石の中に液体が入っているようだ。
「・・・もしかしてこれってそんなに珍しいものでは無いのか?アクア・・・」
 母さんが思わせぶりに渡してきたことを思い出しつつ、アクアに尋ねてみる。
「高価なものだと父に聞いていたから、持っている者は少ないんじゃないか?」
「そうか・・・アクアはこれの使い方は解るのか?」
「精神を集中して石の持つ属性の力をイメージで整えれば使えるぞ。タケルは使ったことが無いのか?」
 そう言うとアクアは、右手の掌をお腹の前で上に向け「ウォーターボール!」と通る声で言う。その瞬間掌の上に拳大の水の塊ができていた。
「こんな感じで私はイメージしているぞ」
 そういうと水の塊を取り出した水袋に入れる。そうかイメージか・・・掌に意識を集中して火をイメージする。
「うわっちぃ!!!」
 掌の上に拳大の火はできたが、熱くて維持できなかった。
「ぶ、ぶふぁははははは」
 アクアが腹を抱えて盛大に笑っている。くそう、涙まで浮かべて笑うとは。
「と、とりあえず火は出せたんだし薪になりそうなものを集めて来よう。ぷぷぷ」
 アクアは口元を抑え、笑いをこらえようとしつつ薪になりそうなものを探し始めた。まぁ辺りには、上流から流れ着いたであろう木などが落ちており、小ぶりな枝などの乾燥しているものを、自分も一緒になって集めていった。
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