転生したらBLゲーの負け犬ライバルでしたが現代社会に疲れ果てた陰キャオタクの俺はこの際男相手でもいいからとにかくチヤホヤされたいっ！

プロローグ

　暗闇に、七色の炎が浮かび上がっている。

　中央に一つ。その少し下から、二列に分かれて居並ぶ六つ。

　澄んだ氷のような水色。
　昇る朝陽のような黄色。
　宵闇を透かしたような紫。
　深海を掬い上げたような緑。
　宇宙を閉じ込めたような青。
　血液を凝縮させたような赤。
　そして、乱反射するプリズムを内に秘め、ひときわ輝く純白の白。

　七つの色鮮やかな炎は揺らめきながら燃え上がり、後に控える七人の男性を照らし出す。

「……さて。いよいよもって灯士様方のお出ましだな」
「殿下。何かご感想は」
「無い。仕事に私情を持ち込むつもりはない」
「くふふぅ。相変わらず殿下は真面目だねぇ」
「な、なんかおれ、緊張してきました。うまくやれるかな」
「君ならできるに決まってますよ。少なくとも私よりはずっとね」
「ははっ。ま、仲良くできるといいよな」

　さざめきを交わしあう男たちは揃いの軍服姿だ。それぞれが、胸に頂く炎と同じ、輝くような髪色をしている。系統は違えど各々に整った彼らの美貌は、綾なす炎の鮮烈さをも遥かにしのぐほどだ。

　暗闇が次第に晴れていく。大広間の全景があらわになる。吸い込まれるほどに高い天井から、なおも威容を示す天使のレリーフ。カーテンに隠された壇上においてすら、隠しえないきらめきを放つ豪奢な玉座。天地を貫く何本もの柱は、巨大な宝石の原石から切り出されているようだ。含まれた鉱物の燐光が、揺らぐ炎の灯を受けて時折瞬いている。

　その、壮麗な広間で──



「……なにこれ。ゆめ……？」

　イケメンどもの並び立つ赤じゅうたんを、遠目から呆然と眺めつつ。

　首元の伸び切ったTシャツに、高校時代のジャージを履いたこの俺──煤ヶ谷鍮太郎すすがやちゅうたろうは、ただただその場に立ち尽くすしかなかった。