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32・ジブリに出てくるタイプのババア
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「さて。どうしてくれよう」
意地悪い笑みを浮かべたジルコンが、俺の鎖骨にぐりぐりと拳を押しつける。中指の指輪についてる馬鹿みたいにでかいダイヤモンドが、俺のデリケートなお肌を容赦なくえぐる。
「痛い痛い、陰湿ッ! 金持ち因業ババアみたいな攻撃やめろ!!」
「誰が因業ババアだ。ほう、素直に袋にされる方がお好みか」
「だから荒々しいんだよ、手段が!」
どうにか痛みから逃れようと、ベッドの上をびちびち跳ねる。そのたび薄い服を突き抜けて、荒縄のけば立ちがざくざく刺さる。くそう、夢も希望もキラキラもあったもんじゃねえ! ていうか荒縄って! 魔法とか使えよせめて!!
「ちくしょう、助けて、誰かー!! おまわりさーん!! ここに犯罪者がいまーす!!」
「残念だが、この国のおまわりさんはみんな俺の麾下なんだよ」
「はあー!? なんだよキカって、言語設定は日本語オンリーだったはずですけどー!?」
「……なるほど。お前は本当に、馬鹿なんだな」
呆れ顔で拳を離したジルコンのスキを突き、ようやくベッドの端までにじり寄れた……かと思いきや、すぐさま初期位置までごろんと転がされてしまった。ち、ちくしょう、クソゲーだ!!
「だいたいお前、おキャラが変わりすぎだろ、おキャラがよー! 属性詐欺! 返して! 慇懃で優しい執事キャラのジルコンを返してよぉ!!」
「はっ、なんだ、わかってるじゃないか。そうだよキャラだよ、豹変するところまで含めてな」
「ぐ、ぐぬぬぬ……! なんだよなんだよ、なんで俺に親切なやつはどいつもこいつも裏があるんだよおお!!」
「……ふむ」
エビフライ状態の俺に片腕を乗せて、ジルコンは何事か考え込むそぶりを見せる。扱いが雑! 俺は肘掛けじゃねえぞ!
「俺に親切なやつ、と言ったな」
「そうだよ!! わーってるよ、だってどうせ俺に優しくする理由なんて……」
「本当に、親切なやつだけだと思うか」
「は?」
質問の意図がわからずにジルコンの顔を見上げる。滑らかな銀の瞳は、どこか面白がっているかのような色を宿して俺を見下ろしている。
「本来の流れで言えば、嫉妬に駆られたクソ王子が自棄になって起こすイベントのはずなんだが。まあ結果的に流れは同じだ、ここで消化しておいたところで支障はないか」
「え、待って、何の話?」
「裏の話、だ」
意味深なセリフとともに、ジルコンは手の甲を壁に向けてかざした。さっきまで凶器として活用されていたでっかいダイヤから、一直線に光が放たれる。
七色の光が壁に当たり、スクリーンのような四角い枠を作り出す。ランダムな色の波は収縮と拡散を繰り返し、次第に人影らしき像を結び始めた。
「お前が夢見たキラキラの正体。俺が見せてやるよ」
きっぱりと言い放ったその声は──けれど俺にはやっぱり、妙に楽しそうに聞こえた。
意地悪い笑みを浮かべたジルコンが、俺の鎖骨にぐりぐりと拳を押しつける。中指の指輪についてる馬鹿みたいにでかいダイヤモンドが、俺のデリケートなお肌を容赦なくえぐる。
「痛い痛い、陰湿ッ! 金持ち因業ババアみたいな攻撃やめろ!!」
「誰が因業ババアだ。ほう、素直に袋にされる方がお好みか」
「だから荒々しいんだよ、手段が!」
どうにか痛みから逃れようと、ベッドの上をびちびち跳ねる。そのたび薄い服を突き抜けて、荒縄のけば立ちがざくざく刺さる。くそう、夢も希望もキラキラもあったもんじゃねえ! ていうか荒縄って! 魔法とか使えよせめて!!
「ちくしょう、助けて、誰かー!! おまわりさーん!! ここに犯罪者がいまーす!!」
「残念だが、この国のおまわりさんはみんな俺の麾下なんだよ」
「はあー!? なんだよキカって、言語設定は日本語オンリーだったはずですけどー!?」
「……なるほど。お前は本当に、馬鹿なんだな」
呆れ顔で拳を離したジルコンのスキを突き、ようやくベッドの端までにじり寄れた……かと思いきや、すぐさま初期位置までごろんと転がされてしまった。ち、ちくしょう、クソゲーだ!!
「だいたいお前、おキャラが変わりすぎだろ、おキャラがよー! 属性詐欺! 返して! 慇懃で優しい執事キャラのジルコンを返してよぉ!!」
「はっ、なんだ、わかってるじゃないか。そうだよキャラだよ、豹変するところまで含めてな」
「ぐ、ぐぬぬぬ……! なんだよなんだよ、なんで俺に親切なやつはどいつもこいつも裏があるんだよおお!!」
「……ふむ」
エビフライ状態の俺に片腕を乗せて、ジルコンは何事か考え込むそぶりを見せる。扱いが雑! 俺は肘掛けじゃねえぞ!
「俺に親切なやつ、と言ったな」
「そうだよ!! わーってるよ、だってどうせ俺に優しくする理由なんて……」
「本当に、親切なやつだけだと思うか」
「は?」
質問の意図がわからずにジルコンの顔を見上げる。滑らかな銀の瞳は、どこか面白がっているかのような色を宿して俺を見下ろしている。
「本来の流れで言えば、嫉妬に駆られたクソ王子が自棄になって起こすイベントのはずなんだが。まあ結果的に流れは同じだ、ここで消化しておいたところで支障はないか」
「え、待って、何の話?」
「裏の話、だ」
意味深なセリフとともに、ジルコンは手の甲を壁に向けてかざした。さっきまで凶器として活用されていたでっかいダイヤから、一直線に光が放たれる。
七色の光が壁に当たり、スクリーンのような四角い枠を作り出す。ランダムな色の波は収縮と拡散を繰り返し、次第に人影らしき像を結び始めた。
「お前が夢見たキラキラの正体。俺が見せてやるよ」
きっぱりと言い放ったその声は──けれど俺にはやっぱり、妙に楽しそうに聞こえた。
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