転生したらBLゲーの負け犬ライバルでしたが現代社会に疲れ果てた陰キャオタクの俺はこの際男相手でもいいからとにかくチヤホヤされたいっ!

スイセイ

文字の大きさ
55 / 200

53・イケメンのお医者さん

しおりを挟む
♪僕らのキセキで 闇を照らして……

 曲が終わる。スキアが断末魔の悲鳴を残して、混ざり合う輝きの中に霧散する。
 結果リザルトも見ずにジルコンの元へ駆け寄った。後ろからスマラクトが慌てた様子でついてきている。木にもたれてゆっくり息をついているジルコンの腕を、ぐいと持ち上げてスマラクトに見せつけた。

「ス、スマラクト、これ、これ、これっ」
「……おい、お前、何を勝手に」
「はい、ちょっと見せてくださいね。……ああ、なるほど」

 スマラクトは片手でメガネを直すと、熟練のお医者さんみたいな手つきで診療を始めた。いや、彼の戦場経験を考えれば、実際熟練のお医者さんと言っても過言ではないのか。クサレナメクジを自称してたときとは別人みたいだ。安心感が半端ない。

「ふむふむ。スキアの侵食を受けてはいますが、骨までは達していないようですね。腕が動かないのは一時的な麻痺でしょう」
「ほんとに!?」
「浄化治療を施しておきます。腐食は見られないので二、三日経てば回復すると思いますが、念のため戻ったら私以外の……もっと腕の良い医師に診てもらうべきでしょう」
「いらん。お前以上の医師などこの国にいるか」

 ジルコンが鬱陶しそうに右手を振る。スマラクトはむず痒いような心配なような複雑な顔をしていたが、それ以上何かを言うことも、自虐を重ねることもしない。

「よ……よかったあああ……」

 ほーっと大きな息を吐く。気が抜けてその場にへなへなとしゃがみ込んでしまった。見分を終えたらしい騎士サマたちが、今頃になってこちらへやって来る。

「よう、ドジったな、ディアマンテ殿下」
「……不覚を取った。あんな雑魚相手に」
「まあ、そう落ち込むな。原因は……自分でも理解してるだろうが」
「う」

 ルビーノの視線が、高所から俺に突き刺さる。何を言われても言い返せねえ。少し後ろからサフィールも、腕を組んでわざとらしいため息をついた。

「まったく。自らの失態で王族に傷を負わせるなど、通常なら厳罰ものだぞ」
「そうだな。常識で考えれば処刑もやむなし、ってとこだ」
「しょっ」

 一気に血の気が引いた。いや、実際あり得る、だって王子様に何してくれてんねんってところだろ。口を開けたまま蒼白になる俺に、ジルコンがまた呆れたように首を振る。

「ルビーノ、サフィール、あまりチュー太郎をからかうのはやめろ。これでこいつに罰が下されるなら、お前らなんかとっくに一族郎党取り潰しだ」
「む……」
「はは、違いないな」

 軽く笑い飛ばしたあと、ルビーノは不意に真顔になった。

「だが、今日のお前がよろしくなかったことに変わりはないぜ。血気にはやって仲間を危険に晒したこと、しっかり反省するように」
「う……はい」
「よし。それでは、戦果の確認だ」
「あ、そうだ、リザルト!」

 すっかり忘れてたけど、今日の俺はちょっと頑張ったはず。それでも前半はミマ無双だったから、さすがに追いつけてるとは思わないけど……。

 結果は……グッド12、パーフェクト35! もちろんミマには全然届かなかったけど、この前に比べると格段の進歩だ!

「悪くはないな。次はもっと気を張るように」
「お……おうっ!」

 ジルコンのお褒めの言葉は、たぶんシステム的には結果に応じたランダムセリフだ。でも俺のVサインに返ってきた微笑は、おそらく、きっと、あいつの本心からのものだと思えた。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

寝てる間に××されてる!?

しづ未
BL
どこでも寝てしまう男子高校生が寝てる間に色々な被害に遭う話です。

被虐趣味のオメガはドSなアルファ様にいじめられたい。

かとらり。
BL
 セシリオ・ド・ジューンはこの国で一番尊いとされる公爵家の末っ子だ。  オメガなのもあり、蝶よ花よと育てられ、何不自由なく育ったセシリオには悩みがあった。  それは……重度の被虐趣味だ。  虐げられたい、手ひどく抱かれたい…そう思うのに、自分の身分が高いのといつのまにかついてしまった高潔なイメージのせいで、被虐心を満たすことができない。  だれか、だれか僕を虐げてくれるドSはいないの…?  そう悩んでいたある日、セシリオは学舎の隅で見つけてしまった。  ご主人様と呼ぶべき、最高のドSを…

お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO
BL
 本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。  僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!  「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」  知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!  だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?  ※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。

処理中です...