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55・”待”ってたぜェ!!
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「……チュー君」
長いまつげを伏せたミマが、静かに口を開いた。口調こそ落ち着いてはいるものの、背後の黒いオーラが全然隠せてねえぞ。
「僕、またチュー君とおしゃべりしたくなっちゃったな。帰り道、少し付き合ってよ」
「おうよ、望むところだ。……って言いたいとこだけど」
顔を向けた先は言わずもがな、俺をかばって負傷したジルコンだ。スマラクトによればそんなに深刻な事態ではないみたいだけど、やっぱり心配は心配だ。処刑されんのもやだし。
俺と目が合ったジルコンは、一瞬何かを考えるそぶりをしたあと、胸に手を当てて深々と礼をする。
「私のことはお気になさらず。灯士様同士積もるお話もあるでしょう、是非この機にお互い親睦を深め、相互理解の糸口とされるのがよろしいかと存じます」
……ええと、これはつまり、情報収集してこいってことだよな。
「うーん、いやでも、やっぱ俺も」
「いえ。是非」
下げた頭から、鋭い眼光が俺を刺す。おい剥がれてんぞ執事ヅラ。しかしそんな目で睨まれちゃ、俺としてもこれ以上は何も言えない。
「わーったよ。俺はミマと親睦を深める。その代わりお前はスマラクトにもっぺんちゃんと見てもらう。でいいんだな」
「仰せの通りに」
「わ、私ですか? ……いえ。はい、責任を持って診させて頂きます」
スマラクトは一瞬うろたえたあと、すぐに神妙な顔で頷いた。うんうん、それでよし。
「ふふ、いいですね、灯士さまたちは仲がよくて。おれもなんだか憧れちゃうな」
「ははっ、確かに。いい友達ってのはそれだけで財産だよな」
爽やかに笑うランジンとトパシオに、お前らの目は節穴ですかと突っ込みたくなるのをぐっと我慢して。
闘争心を秘めた俺とミマは、再び二人きりで対峙する。
「……さて」
森を出て、レンガ敷きの街道に沿った明るいところ。
騎士サマたちを見送ったミマが、右手を高く掲げ上げる。
「コラル」
「了解ですぅ、上官殿!」
間を置かずにピンクのもちもちが、木立の隙間から弾丸のように飛び出してきた。そのまま俺の周りを上下に揺れながら旋回し、目を剥いて下から睨み始める。あーあーあーもう、扱いが完全にヒャッハーその1。キャラ崩壊とか言うレベルじゃねえぞ。
「何この煽りまんじゅう。お前の差し金?」
「まあね。役に立たない金食い虫には、せめて無課金雑魚メンタルの削り役でもしてもらおうかなって」
「ほーん。さっすが廃課金様、脳筋ゴリ押し以外にもセコい小技をお持ちで」
まずはお互いジャブを入れつつ、目線を合わせて火花を散らす。そろそろ俺もそんなもんじゃ負けねえぞ。先制狙いの第一ラウンド初手、先に目を逸らしたのはミマの方だった。やったぜ!
「まあ……驚いたと言えば驚いたよ。まさかこんな短期間で攻略キャラをたらし込むとはね。どうやったの? いいチートツールでも見つけた?」
「するか、そんなこと!!」
腕組みをして首を傾げるミマに、青筋を立てて声を荒げる俺。俺だってこれでもゲーマーの端くれ、チートとRMTにだけは手を出さないってお天道様に誓ってんだ。て言うかもしそれでBANでもされたら、ワンチャン俺この世界から抹消されそうだし。チート対策がしっかりしてるのは、この運営の数少ない美点だけどさ。
長いまつげを伏せたミマが、静かに口を開いた。口調こそ落ち着いてはいるものの、背後の黒いオーラが全然隠せてねえぞ。
「僕、またチュー君とおしゃべりしたくなっちゃったな。帰り道、少し付き合ってよ」
「おうよ、望むところだ。……って言いたいとこだけど」
顔を向けた先は言わずもがな、俺をかばって負傷したジルコンだ。スマラクトによればそんなに深刻な事態ではないみたいだけど、やっぱり心配は心配だ。処刑されんのもやだし。
俺と目が合ったジルコンは、一瞬何かを考えるそぶりをしたあと、胸に手を当てて深々と礼をする。
「私のことはお気になさらず。灯士様同士積もるお話もあるでしょう、是非この機にお互い親睦を深め、相互理解の糸口とされるのがよろしいかと存じます」
……ええと、これはつまり、情報収集してこいってことだよな。
「うーん、いやでも、やっぱ俺も」
「いえ。是非」
下げた頭から、鋭い眼光が俺を刺す。おい剥がれてんぞ執事ヅラ。しかしそんな目で睨まれちゃ、俺としてもこれ以上は何も言えない。
「わーったよ。俺はミマと親睦を深める。その代わりお前はスマラクトにもっぺんちゃんと見てもらう。でいいんだな」
「仰せの通りに」
「わ、私ですか? ……いえ。はい、責任を持って診させて頂きます」
スマラクトは一瞬うろたえたあと、すぐに神妙な顔で頷いた。うんうん、それでよし。
「ふふ、いいですね、灯士さまたちは仲がよくて。おれもなんだか憧れちゃうな」
「ははっ、確かに。いい友達ってのはそれだけで財産だよな」
爽やかに笑うランジンとトパシオに、お前らの目は節穴ですかと突っ込みたくなるのをぐっと我慢して。
闘争心を秘めた俺とミマは、再び二人きりで対峙する。
「……さて」
森を出て、レンガ敷きの街道に沿った明るいところ。
騎士サマたちを見送ったミマが、右手を高く掲げ上げる。
「コラル」
「了解ですぅ、上官殿!」
間を置かずにピンクのもちもちが、木立の隙間から弾丸のように飛び出してきた。そのまま俺の周りを上下に揺れながら旋回し、目を剥いて下から睨み始める。あーあーあーもう、扱いが完全にヒャッハーその1。キャラ崩壊とか言うレベルじゃねえぞ。
「何この煽りまんじゅう。お前の差し金?」
「まあね。役に立たない金食い虫には、せめて無課金雑魚メンタルの削り役でもしてもらおうかなって」
「ほーん。さっすが廃課金様、脳筋ゴリ押し以外にもセコい小技をお持ちで」
まずはお互いジャブを入れつつ、目線を合わせて火花を散らす。そろそろ俺もそんなもんじゃ負けねえぞ。先制狙いの第一ラウンド初手、先に目を逸らしたのはミマの方だった。やったぜ!
「まあ……驚いたと言えば驚いたよ。まさかこんな短期間で攻略キャラをたらし込むとはね。どうやったの? いいチートツールでも見つけた?」
「するか、そんなこと!!」
腕組みをして首を傾げるミマに、青筋を立てて声を荒げる俺。俺だってこれでもゲーマーの端くれ、チートとRMTにだけは手を出さないってお天道様に誓ってんだ。て言うかもしそれでBANでもされたら、ワンチャン俺この世界から抹消されそうだし。チート対策がしっかりしてるのは、この運営の数少ない美点だけどさ。
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