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56・君が望んだり望まなかったり
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まずは俺優位のこの状況に、しかしミマは鼻先でふふんと笑ってみせる。
「それにしても、最初に手を出したのがよりによってあの不人気緑とはね。つくづくお前も物好きだな」
「は?」
「ま、僕にとってはその方が冷静さを保てるし、ある意味ありがたくはあったけど」
「おい、待て。不人気緑ってどういうことだよ」
思わず声を震わせた俺の問いに、ミマは片眉を上げて怪訝そうな顔をした。
「なんだよ。言葉通りだよ。緑でメガネで気弱は不人気。お前だって心当たりあるだろ」
「う」
さらりと返されて、不覚にも一瞬詰まってしまった。確かに。女性向けの事情は詳しくないが、女性キャラに置き換えてみれば思い当たる節はないではない。ついでにみつあみ巨乳あたりの属性もつければ、太古の萌えアイコンにして実質そんなにオタ受けがいいわけじゃない幻想二次元少女の完成だ。正直決して否定はできない、だがしかし。
「そっ、ういうことを言ってんじゃねえんだよ、俺は! やめろよ不人気とか言うの!!」
「はっ、なに、今さら綺麗ごと? キャラカタログたるソシャゲ界において、人気不人気の格差が存在するのは厳然たる事実だろ」
「だからって当たり前みたいにキャラ下げしていいわけねえだろ!? お前みたいな露悪野郎が界隈の民度を悪くすんだよ!!」
「民度ぉ? この運営のゲームでそれ言う? お前の好きなジュエぷりだって、確か人気争奪総選挙とかやってたじゃないか」
「総選挙のことは言うなあああ!!!」
叫んでその場にしゃがみ込む。ミマがわずかにたじろぐ気配がした。
ああ、思い出してしまった。抱えた頭の中に記憶が渦を巻く。陰謀論と疑念が入り乱れる地獄の選挙戦。すがるような希望と、色濃い諦念を抱えて結果に臨んだ俺に突きつけられた、数字よりも残酷なあの二文字──圏外。俺の推しが順位発表圏にすら食い込めなかったという事実。
「ちくしょう、ちくしょうなんでだよ? ダイアちゃんの輝きはあまねく世界を照らすはずなのに? 俺のせい? 俺の推し力が足りなかったせい? 俺がもっと課金すればよかった? やめろメインヒロインのくせに不人気って言うな、設定齟齬とかぬかすな名前の後ろに草を生やすな!!!」
「……」
身をよじって悶える俺を見下ろしながら、ミマは明らかに引いている。客観的に見れば追撃のチャンス、だけど今の俺はそれどころじゃねえ。
「ま、まあ、何があったかはあえて聞かないけど、個人的な怨恨を僕にぶつけるのは勘弁してほしいな」
「うっ、うっ」
「それに僕は不人気キャラだからって見捨てるわけじゃない。僕のハーレムに入ってくれる騎士サマは、みんな僕だけの愛しい人だよ。もちろん全員平等にとは行かないけどね」
ミマが陶酔したように何事かぶっているけれど、当然俺の耳には入らない。ちくしょう。やっぱこいつと俺は不倶戴天、オタクとしてのスタンスが違いすぎる。同じ空を頂くことができない以上、どちらかが日陰のダンゴムシに堕ちるしかない。もちろん俺は、そんなのごめんだ。
「それにしても、最初に手を出したのがよりによってあの不人気緑とはね。つくづくお前も物好きだな」
「は?」
「ま、僕にとってはその方が冷静さを保てるし、ある意味ありがたくはあったけど」
「おい、待て。不人気緑ってどういうことだよ」
思わず声を震わせた俺の問いに、ミマは片眉を上げて怪訝そうな顔をした。
「なんだよ。言葉通りだよ。緑でメガネで気弱は不人気。お前だって心当たりあるだろ」
「う」
さらりと返されて、不覚にも一瞬詰まってしまった。確かに。女性向けの事情は詳しくないが、女性キャラに置き換えてみれば思い当たる節はないではない。ついでにみつあみ巨乳あたりの属性もつければ、太古の萌えアイコンにして実質そんなにオタ受けがいいわけじゃない幻想二次元少女の完成だ。正直決して否定はできない、だがしかし。
「そっ、ういうことを言ってんじゃねえんだよ、俺は! やめろよ不人気とか言うの!!」
「はっ、なに、今さら綺麗ごと? キャラカタログたるソシャゲ界において、人気不人気の格差が存在するのは厳然たる事実だろ」
「だからって当たり前みたいにキャラ下げしていいわけねえだろ!? お前みたいな露悪野郎が界隈の民度を悪くすんだよ!!」
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ああ、思い出してしまった。抱えた頭の中に記憶が渦を巻く。陰謀論と疑念が入り乱れる地獄の選挙戦。すがるような希望と、色濃い諦念を抱えて結果に臨んだ俺に突きつけられた、数字よりも残酷なあの二文字──圏外。俺の推しが順位発表圏にすら食い込めなかったという事実。
「ちくしょう、ちくしょうなんでだよ? ダイアちゃんの輝きはあまねく世界を照らすはずなのに? 俺のせい? 俺の推し力が足りなかったせい? 俺がもっと課金すればよかった? やめろメインヒロインのくせに不人気って言うな、設定齟齬とかぬかすな名前の後ろに草を生やすな!!!」
「……」
身をよじって悶える俺を見下ろしながら、ミマは明らかに引いている。客観的に見れば追撃のチャンス、だけど今の俺はそれどころじゃねえ。
「ま、まあ、何があったかはあえて聞かないけど、個人的な怨恨を僕にぶつけるのは勘弁してほしいな」
「うっ、うっ」
「それに僕は不人気キャラだからって見捨てるわけじゃない。僕のハーレムに入ってくれる騎士サマは、みんな僕だけの愛しい人だよ。もちろん全員平等にとは行かないけどね」
ミマが陶酔したように何事かぶっているけれど、当然俺の耳には入らない。ちくしょう。やっぱこいつと俺は不倶戴天、オタクとしてのスタンスが違いすぎる。同じ空を頂くことができない以上、どちらかが日陰のダンゴムシに堕ちるしかない。もちろん俺は、そんなのごめんだ。
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