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117・キラメいて☆LOVE・ストーン!
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あれから、どのくらいの時間が経ったのか。
薄暗い部屋に、歌声だけが響いている。
悲しげな。絶望を形にしたような。まるで冥府の底から聞こえてくるような、辛気臭くて陰鬱な声が。
「……きょおーのわたしは硬いイシ だけーど明日はちょっとだけshining☆
あなーたの愛に磨かれて もぉーっとキラめくprecious stone!
出逢ぁーあた瞬間から 胸のードーキドキ止ーまらない
ねえ覗いてよ わたしの<ruby><rb>愛</rb><rt>eye</rt></ruby>ー
どんなー宝石よりもー ヒカリー放つはず だ・か・ら!
見つーけたよ 聞こーえたよ じぶーんだけのLove☆jewel
手をーつないで飛び立てばー 誰ーにも砕けなーいよー
感ーじるよ 信ーじるよ あなーただけがくれーた未来
いつーかは世界じゅーうーの かがーやき集めてー その指に贈ーるからー……」
「……あー……うっっっさい」
長めの前奏から一番の終わりまで、歌い続けること二分半。とうとう堪忍袋の緒が切れたアメティスタが、読んでいた本を閉じて唸るように呟いた。構わず俺の歌は二番に突入する。ランプ揺らめく部屋の隅、身を縮めて寝転んだまま、ジュエぷりOPテーマをか細く歌う俺の姿は、どこからどう見ても死んだジュエぷりヲタの亡霊だ。でも他人の目なんか知ったことか。どうせここには俺とアメティスタしかいない。実際今の俺はある意味亡霊みたいなもんなんだ、鎮魂歌ぐらい好きに歌わせやがれ。
「……ふたーり歩いたこのキセキ きいーっとあなたがつーむいだwonder☆……」
「あーもぉ、やだやだ、耳がくさる」
結構な暴言を吐いてアメティスタは立ち上がり、本を置いて部屋を出ていってしまった。ラスサビと後奏までもを鼻歌で歌い切り、やがて部屋には虚無が訪れる。取り残されたのはクッションの上に落ちている俺と、ここに連れてこられた日に取り落として以来、ずっと転がるままにしておいたワイングラスだけだ。
焦点の合わない瞳を、なんとはなしにグラスに向ける。乾いたワインの跡が残るグラスには、薄ぼんやりした光がわずかに灯っていた。紫色のクッションを背景に、誰かの影が蠢いている。その影が七色のプリズムをちらと光らせたとき、俺は思わず口に出していた。
「……ジルコン……」
枯れ果てたはずの涙が、じわりとまた滲み出す。今度の場面は城のようだ。そういやまだ一度も入ったことのない執務室で、山積みになった書類を次々とこなしていくジルコンは、当たり前だが俺がいなくなったことになんか微塵も気づいていない。
……多分。もしも本当に俺がいなくなったって、ジルコンはそりゃ多少ショックは受けるだろうけど、それでもこんなふうに変わらずに日々を過ごしていくんだろう。大事なもの、守るべきものをたくさん持っている彼だ。そのこと自体はむしろ喜ばしいことのはずなのに、俺の心はますますどんよりと重くなる。
俺がいなくても、ジルコンが平気なら。俺がいなくなった後の日々が、それでも平穏に幸せに続いていくことができるなら。なら俺は命の危険とやらから身を守るためにも、アメティスタの言う通りここにいた方がいいんじゃないの? そんな弱気な考えまで浮かんできてしまう始末だ。……ジュエぷりもサ終するって言うし。
薄暗い部屋に、歌声だけが響いている。
悲しげな。絶望を形にしたような。まるで冥府の底から聞こえてくるような、辛気臭くて陰鬱な声が。
「……きょおーのわたしは硬いイシ だけーど明日はちょっとだけshining☆
あなーたの愛に磨かれて もぉーっとキラめくprecious stone!
出逢ぁーあた瞬間から 胸のードーキドキ止ーまらない
ねえ覗いてよ わたしの<ruby><rb>愛</rb><rt>eye</rt></ruby>ー
どんなー宝石よりもー ヒカリー放つはず だ・か・ら!
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感ーじるよ 信ーじるよ あなーただけがくれーた未来
いつーかは世界じゅーうーの かがーやき集めてー その指に贈ーるからー……」
「……あー……うっっっさい」
長めの前奏から一番の終わりまで、歌い続けること二分半。とうとう堪忍袋の緒が切れたアメティスタが、読んでいた本を閉じて唸るように呟いた。構わず俺の歌は二番に突入する。ランプ揺らめく部屋の隅、身を縮めて寝転んだまま、ジュエぷりOPテーマをか細く歌う俺の姿は、どこからどう見ても死んだジュエぷりヲタの亡霊だ。でも他人の目なんか知ったことか。どうせここには俺とアメティスタしかいない。実際今の俺はある意味亡霊みたいなもんなんだ、鎮魂歌ぐらい好きに歌わせやがれ。
「……ふたーり歩いたこのキセキ きいーっとあなたがつーむいだwonder☆……」
「あーもぉ、やだやだ、耳がくさる」
結構な暴言を吐いてアメティスタは立ち上がり、本を置いて部屋を出ていってしまった。ラスサビと後奏までもを鼻歌で歌い切り、やがて部屋には虚無が訪れる。取り残されたのはクッションの上に落ちている俺と、ここに連れてこられた日に取り落として以来、ずっと転がるままにしておいたワイングラスだけだ。
焦点の合わない瞳を、なんとはなしにグラスに向ける。乾いたワインの跡が残るグラスには、薄ぼんやりした光がわずかに灯っていた。紫色のクッションを背景に、誰かの影が蠢いている。その影が七色のプリズムをちらと光らせたとき、俺は思わず口に出していた。
「……ジルコン……」
枯れ果てたはずの涙が、じわりとまた滲み出す。今度の場面は城のようだ。そういやまだ一度も入ったことのない執務室で、山積みになった書類を次々とこなしていくジルコンは、当たり前だが俺がいなくなったことになんか微塵も気づいていない。
……多分。もしも本当に俺がいなくなったって、ジルコンはそりゃ多少ショックは受けるだろうけど、それでもこんなふうに変わらずに日々を過ごしていくんだろう。大事なもの、守るべきものをたくさん持っている彼だ。そのこと自体はむしろ喜ばしいことのはずなのに、俺の心はますますどんよりと重くなる。
俺がいなくても、ジルコンが平気なら。俺がいなくなった後の日々が、それでも平穏に幸せに続いていくことができるなら。なら俺は命の危険とやらから身を守るためにも、アメティスタの言う通りここにいた方がいいんじゃないの? そんな弱気な考えまで浮かんできてしまう始末だ。……ジュエぷりもサ終するって言うし。
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