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119・探し物はなんですか
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「……ジルコン? どうした」
「何か……足りないとは、思わないか」
「何か?」
珍しく口ごもりながら言葉を選ぶジルコンに、サフィールが怪訝そうに首を傾げた。
「何か、ずっと当たり前に傍に存在していたはずの何かが、今は欠けている。俺たちと共にあるべき何かが抜き取られ、代わりに空白がぽっかりと口を開けている。そんな感覚が……ここ数日、抜けない。ルビーノ、お前の疲労も、元を辿ればそれに関連している可能性はないだろうか」
「は……?」
「おいおい……どうした、ジルコン」
名指しを受けたルビーノが、呆れたように肩をすくめた。サフィールも同調するように頷いて、ジルコンにまっすぐな視線を向ける。
「何か、とは? お前の感覚を疑うわけではないが、話が曖昧すぎて理解が及ばないな」
「それは……」
「オレたち全員の警戒を易々と潜り抜け、宝物を盗んで行った妖精さんが存在するとでも? ジルコン、お前の方が疲れてるんじゃないのか?」
「……」
顔を伏せるジルコンとは裏腹に、俺は跳ね起きて拳を握った。彼の言う足りないものが、俺の存在であることは明白だ。胸に熱いものが広がった。例えそれが残り火みたいな微かな灯りだとしても、まだ俺はジルコンの中にいる。ここに来て何度目かの涙が、またしてもじわりと目尻に滲んだ。
ああ、そうだ。希望の灯はまだ途絶えちゃいない。逃げ出すことで変えられる未来なら、俺とジルコンにだって動かせない道理はないはずだ。とにかく俺は絶対にここを出て、昏き翼の預言とやらを覆してみせる!! あとジュエぷりのサ終も!
決意を固め直した俺ではあるが、しかしグラス越しに様子を見ている限りでは、ジルコンの旗色は明らかに悪い。が、がんばれジルコン、そこで引かないでくれ!
両手を組んで捧げた祈りも虚しく。ジルコンは気が抜けたように息を吐き、額を抑えて首を横に振った。
「疲れている、か。確かにそうかもしれない。言われてみれば俺も、ここのところストレス発散の機会がなくてな」
「はは、だと思ったぜ」
「ジルコンもか。ルビーノといい、満足な休養を取るのも仕事のうちだぞ」
「あああぁ……」
嘆きの声を漏らしながら、がっくりと膝をついた。願い届かず。ここで俺を思い出して救いに来てくれれば、ガチのマジで完璧王子サマだったのに!
「そうだ、いい方法を教えてやる。動物を飼え、ジルコン。もふもふは心の支柱になってくれるぞ」
「動物か……そう言えば以前何か小鼠のようなものを飼っていたような記憶はあるが、あれはいつの話だったか。いずれにせよ今は、満足な世話をしてやれる時間もないだろうな」
「星を見にいくのはどうだ。ちょうど来週の日の曜日に、俺が懇意にしている姫君たちとの星見会が」
「それは絶対に遠慮しておく」
打ちひしがれる俺を置いて、三人は何やら盛り上がり始める。うう、疎外感。勝手に覗き見してる俺が言えた義理じゃないけど。
「何か……足りないとは、思わないか」
「何か?」
珍しく口ごもりながら言葉を選ぶジルコンに、サフィールが怪訝そうに首を傾げた。
「何か、ずっと当たり前に傍に存在していたはずの何かが、今は欠けている。俺たちと共にあるべき何かが抜き取られ、代わりに空白がぽっかりと口を開けている。そんな感覚が……ここ数日、抜けない。ルビーノ、お前の疲労も、元を辿ればそれに関連している可能性はないだろうか」
「は……?」
「おいおい……どうした、ジルコン」
名指しを受けたルビーノが、呆れたように肩をすくめた。サフィールも同調するように頷いて、ジルコンにまっすぐな視線を向ける。
「何か、とは? お前の感覚を疑うわけではないが、話が曖昧すぎて理解が及ばないな」
「それは……」
「オレたち全員の警戒を易々と潜り抜け、宝物を盗んで行った妖精さんが存在するとでも? ジルコン、お前の方が疲れてるんじゃないのか?」
「……」
顔を伏せるジルコンとは裏腹に、俺は跳ね起きて拳を握った。彼の言う足りないものが、俺の存在であることは明白だ。胸に熱いものが広がった。例えそれが残り火みたいな微かな灯りだとしても、まだ俺はジルコンの中にいる。ここに来て何度目かの涙が、またしてもじわりと目尻に滲んだ。
ああ、そうだ。希望の灯はまだ途絶えちゃいない。逃げ出すことで変えられる未来なら、俺とジルコンにだって動かせない道理はないはずだ。とにかく俺は絶対にここを出て、昏き翼の預言とやらを覆してみせる!! あとジュエぷりのサ終も!
決意を固め直した俺ではあるが、しかしグラス越しに様子を見ている限りでは、ジルコンの旗色は明らかに悪い。が、がんばれジルコン、そこで引かないでくれ!
両手を組んで捧げた祈りも虚しく。ジルコンは気が抜けたように息を吐き、額を抑えて首を横に振った。
「疲れている、か。確かにそうかもしれない。言われてみれば俺も、ここのところストレス発散の機会がなくてな」
「はは、だと思ったぜ」
「ジルコンもか。ルビーノといい、満足な休養を取るのも仕事のうちだぞ」
「あああぁ……」
嘆きの声を漏らしながら、がっくりと膝をついた。願い届かず。ここで俺を思い出して救いに来てくれれば、ガチのマジで完璧王子サマだったのに!
「そうだ、いい方法を教えてやる。動物を飼え、ジルコン。もふもふは心の支柱になってくれるぞ」
「動物か……そう言えば以前何か小鼠のようなものを飼っていたような記憶はあるが、あれはいつの話だったか。いずれにせよ今は、満足な世話をしてやれる時間もないだろうな」
「星を見にいくのはどうだ。ちょうど来週の日の曜日に、俺が懇意にしている姫君たちとの星見会が」
「それは絶対に遠慮しておく」
打ちひしがれる俺を置いて、三人は何やら盛り上がり始める。うう、疎外感。勝手に覗き見してる俺が言えた義理じゃないけど。
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