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157・封じられた黒い歴史の記憶
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眉間にしわを寄せて黙るジルコンに、フォルコは背の片翼をバサリと奮って話し出す。
「知っての通りオレたちは、スキアの力を己の魔力に転用して生きる種族だ。だがアイツらもなかなかの暴れ馬でよ、仲良く共存共栄とは行かねえんだわ。スキアをうまく飼い慣らし、必要とあらば適宜処分していくためには、相応の備えを持ってなきゃならねえ。例えば……スキアを制するランプの加護、とかな」
「なるほど。闇を滅する灯士の力を、闇を御すために使おうというわけですか。技術的には確かに不可能ではないですね」
「おう、メガネの兄ちゃんは話が早くて助かるぜ。ことにそっちのオマケ灯士は、クリスタルの僕ちゃんより闇との相性がいいみたいなんでな」
「相性がいい?」
なにそれ初耳。確かに俺は光か闇かっつったら確実に闇側の人間ですけど、そういうことではなく? 実は俺の中に深淵なる闇の力的なものが秘められてるとか? なにそれ素敵。
首を傾げた俺に、フォルコはなぜかちょっと怪訝そうな顔をする。
「なんで知らねえみたいな顔してんだ、こっちはしっかり把握してんだぜ。お前、闘技場で使ったろ? 闇の炎を操る呪文、ダーク・フレイムってやつをな」
「アギッ!?」
一瞬で顔面が爆発した。使ったけど。確かにそんなん使ってたけど! あんな勢いで口に出した呪文、マジメな場所で蒸し返されるとかある!?
「チュー太郎、お前……」
「言わないで! なんも言わないで!」
突っ伏す寸前まで頭を垂らし、挙動不審に視線をさまよわせる。ジルコンはジト目の呆れ顔、その隣のミマは必死で笑いを堪えているようで、頬どころか耳まで真っ赤になっている。その他の全員は、ごく真剣かつ緊迫した雰囲気のままだ。笑ってくれよせめて! 翼人云々以前に今俺は死にそうだよ!
「で、でも、それならなにも灯士さまを連れていく必要はないんじゃないですか? そう、例えば技術協力という形で、中間の緩衝地帯に、共同で研究所を設けたりして……」
「おいおい。そっちのお嬢ちゃんはずいぶん平和ボケしてんなぁ? 戦後世代ってやつか?」
「おっ、お嬢ちゃん!?」
鼻白むランジンに向けて、横からエイグルが口を挟む。
「スキアの飼養法は我らが秘伝。大半が翼人の生物的な特徴に依拠するものとはいえ、工程の中には魔力学的な秘法をも含む。人間には決して渡せぬ軍事機密、一度触れた者を人里に帰すわけには参りませぬ」
「う……」
ランジンは気圧されたように黙りこんでしまう。確かに、今の時点で人間と翼人は敵同士も同然。魔力の源であるスキアの利用法が、万一にでも伝わってしまったら困る、ってのは道理だろう。
「故に、灯士の一人。万一に備えたバックアップとしてのチュー太郎殿を、此方へ譲渡して頂きたい」
「バ、バックアップ……」
ド直球な言い方にちょっと凹んだ。そりゃ、事実をあけすけに言えばそういうことなんだろうけど。仮に今俺がいなくなったって、ミマがいれば問題なく国は安泰だ。わかってるけど、それは。
「知っての通りオレたちは、スキアの力を己の魔力に転用して生きる種族だ。だがアイツらもなかなかの暴れ馬でよ、仲良く共存共栄とは行かねえんだわ。スキアをうまく飼い慣らし、必要とあらば適宜処分していくためには、相応の備えを持ってなきゃならねえ。例えば……スキアを制するランプの加護、とかな」
「なるほど。闇を滅する灯士の力を、闇を御すために使おうというわけですか。技術的には確かに不可能ではないですね」
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「相性がいい?」
なにそれ初耳。確かに俺は光か闇かっつったら確実に闇側の人間ですけど、そういうことではなく? 実は俺の中に深淵なる闇の力的なものが秘められてるとか? なにそれ素敵。
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「アギッ!?」
一瞬で顔面が爆発した。使ったけど。確かにそんなん使ってたけど! あんな勢いで口に出した呪文、マジメな場所で蒸し返されるとかある!?
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「おいおい。そっちのお嬢ちゃんはずいぶん平和ボケしてんなぁ? 戦後世代ってやつか?」
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鼻白むランジンに向けて、横からエイグルが口を挟む。
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