転生したらBLゲーの負け犬ライバルでしたが現代社会に疲れ果てた陰キャオタクの俺はこの際男相手でもいいからとにかくチヤホヤされたいっ!

スイセイ

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174・そういう属性のキャラだもの

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──パキイィンッ!

 目もくらむような光と共に走ったのは、ガラスが砕けるような高い音、それと。

「ぐっ……!」

 ぐらりと体勢を崩したフォルコの、低い呻き声だった。

「フォルコ……ッ!」

 エイグルが悲痛な叫び声を上げる。撃たれた鳥のように一直線に落下していくフォルコは、しかし地面に激突する直前、なんとか体勢を立て直して着地した。落下地点を狙ってジルコンが剣を振るう。すんでのところで飛び退いて、フォルコは広げた翼をバサリと震わせた。

「っは、は……お見事。まっさかエンバンの位置まで見抜かれるとはな」
「いいカムフラージュだった。だが次は星の並びも考慮に入れておくべきだな」
「ハッ、オトモダチの知識が役立ったってわけか。今後の参考にしとくぜ!」

 吠えてフォルコは地を走る。だがその動きはさっきまでと比べて見るからに鈍い。翼から撃ち出される黒い羽根を、ジルコンは最小の動作をもって落としつつ、じりじりと、少しずつ距離を詰めていく。

「スマラクトさん、これは……」
「ええ。勝負あった、と見ていいでしょうね」

 目配せをしたランジンに、スマラクトがメガネを上げて頷いた。

「フォルコの言うエンバン……恐らく魔力で円盤状の物体を作り出し、空中戦の支点にしていたというところでしょうか。ともかくそのエンバンは、物理的な攻撃の起点であると同時に、彼にとって外付けの魔力供給源でもあったようです。それがジルコンによって砕かれた今、彼の攻撃は速度質量共に明らかに精彩を欠いている。並の相手ならまだしも、ジルコンを相手取るには致命的です」
「じゃ、じゃあ!」
「とは言え、どうかな。敵は仮にも翼人族の長だぜ」

 思わず色めき立つ俺に、冷静に水を差したのはトパシオだ。

「チュー太郎も知ってるだろ? フォルコは直情型に見えるけど、あれで意外と頭のいいヤツだって」
「あ、うん。てか人物紹介にまんま書いてあったし」
「人物紹介? ま、ともかく、単一の策のみで正面突破を狙うようなタイプじゃないのは確かだ。次の一手の用意がないとは、とても思えないな」
「う……ゆ、油断するなよジルコン! 次の手が来るってよー!」

 受け売りを即リングに投げ込む俺に、ジルコンの視線が一瞬だけ向いた。う、邪魔した? ごめん。片手を上げてへこへこ頭を下げる。銀の瞳に苦笑の色が浮かび、それからすぐにフォルコへと向き直る。

「……ハッ。舐められたもんだな」
「すまんな。うちの小ネズミが少々余計なことをした」
「小ッ、お前までッ!」
「はん、情が湧く前に駆除しとかねえからだ。自業自得だな」
「てっ、テメェッ!!」
「だがオレの方も、この体たらくじゃ文句は言えねえ」

 噛みつく俺をまるで無視して、フォルコはがしがしと頭を掻いた。広げていた翼をふわりと畳む。お? もしや戦意喪失デスカ?
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