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第三章・せっくすの仕方がわからないぼくたちが、神の思し召しで遣わされた天使様方に教わって。
3-4・キスと、その先
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「じゃ、始めていきますね」
後ろから抱きしめられたユージン様の肩越しに、ミゴー様がぼくたちに声を掛けました。はい、と声を揃えて、ぼくたちは改めて姿勢を正します。他ならぬ天使様直々のご指南です。しっかりと目に焼き付けて、自らの規範としなくてはなりません。
「そしたらまずは、口づけからですね。君たち、キスは知ってますか?」
「はい、もちろん。大切な愛情表現ですから」
「あはは、それはいわゆる親愛のキスですね。でも今から俺たちがやってみせるキスは、セックスの一環としてのキスですから。しっかり覚えて糧にしてくださいね」
「ちょっ……!」
ミゴー様の長い指先が、ユージン様の顎にかかります。その指に引き寄せられたユージン様と、後ろから覗き込んだミゴー様の視線が、真正面からぶつかりました。
「ほら、ユージンさん。口開けて」
「待て、お前、実際にはしないってっ」
「もちろん、しませんよ。ほら、舌出して」
「ううっ……、……っ」
渋々と開けられたユージン様の唇から、ちろりと赤い舌がこぼれます。同じく突き出されたミゴー様の舌が、その輪郭に触れる直前まで近づいて、まるで見せつけるかのように空を撫でました。
「唇だけじゃなくて……ほんなふうに、舌を絡まへて、ね。お互いの唾液を混ぜ合わへて、気分を高めてくらはいね」
「っ、ふぁ……、……っふ、は……っ」
「……っん、……っふ」
ユージン様の舌面すれすれの空間を、ミゴー様の舌先が繰り返し舐め上げます。ユージン様は苦しげに眉を寄せました。一ミリたりとも触れられていないはずのユージン様の舌が、緊張に耐え切れなくなったようにひくひくと蠢き、その舌を追い詰めるように、ミゴー様の舌がにじり寄る。おふたりの濡れた舌はぼくに、ぬらりと光る二匹の蛇を連想させました。
視線が無意識に、隣に座るレイに吸い寄せられました。レイは両の拳を膝の上で握り込み、顔を赤くしながらおふたりを見つめています。不意にぼくは、レイの手を握ってあげたいと思いました。けれどぼくの体は意志に反して固まってしまって、すぐそばにある彼の手までの距離すら動かすことができません。
「ひゃ、め……も、もう、いいらろ……っ!」
「……っふ。はい。まずはこんな感じです」
「はぁ……っ、……ひうっ!」
ミゴー様が舌を引っ込めると、ユージン様は口を開けたまま深く息をつかれます。けれど次の瞬間、その口元から跳ねるような高い声が飛び出しました。ユージン様を後ろ抱きにしたミゴー様の御手が、スーツの上からユージン様の胸元をまさぐり始めたのです。
「はい、次はこうやって、お互いの体を触り合っこしていきましょう。ユージンさんみたいに恥ずかしがりやな人には、こんなふうに積極的にリードしてあげてもいいですね」
「誰が恥ずかしっ、んぁっ!」
「特に胸とかお尻とか、エロい……えー、触って気持ちよくなれそう部分を、ね。知ってますか、男にもおっぱいはあるんですよ? 触られて気持ちよくなれるかどうかは、本人の資質と訓練次第ですけど」
笑顔のままのミゴー様が、ユージン様のスーツの胸ポケットのあたりを、二本の指でくるくると撫で上げます。途端にユージン様の両膝が、まるで磁石のようにびたっとくっつきました。
「待て、ミゴっ、そこはっ、駄ッぁっ!」
「なんですか、ユージンさん。ちゃんと服の上から触ってるじゃないですか。問題ないですよねえ?」
「大ありだ、馬鹿ッ……ぁひっ!」
ユージン様の抗議はまるで無視して、ミゴー様の御手がスーツの生地を滑ってゆきます。まるでその奥にあるユージン様の肌を、かの御手で直接慰撫するかのように。ユージン様の顎がのけぞって、目元が切なげに細められました。首元にたらりと、一筋の汗が流れ落ちています。
ただ見ているままのぼくとレイは、同時にごくりと唾を飲みました。ぼくらが今まで知っていたものとはまったく異種の、けれど紛れもない美しさがそこに存在していました。
後ろから抱きしめられたユージン様の肩越しに、ミゴー様がぼくたちに声を掛けました。はい、と声を揃えて、ぼくたちは改めて姿勢を正します。他ならぬ天使様直々のご指南です。しっかりと目に焼き付けて、自らの規範としなくてはなりません。
「そしたらまずは、口づけからですね。君たち、キスは知ってますか?」
「はい、もちろん。大切な愛情表現ですから」
「あはは、それはいわゆる親愛のキスですね。でも今から俺たちがやってみせるキスは、セックスの一環としてのキスですから。しっかり覚えて糧にしてくださいね」
「ちょっ……!」
ミゴー様の長い指先が、ユージン様の顎にかかります。その指に引き寄せられたユージン様と、後ろから覗き込んだミゴー様の視線が、真正面からぶつかりました。
「ほら、ユージンさん。口開けて」
「待て、お前、実際にはしないってっ」
「もちろん、しませんよ。ほら、舌出して」
「ううっ……、……っ」
渋々と開けられたユージン様の唇から、ちろりと赤い舌がこぼれます。同じく突き出されたミゴー様の舌が、その輪郭に触れる直前まで近づいて、まるで見せつけるかのように空を撫でました。
「唇だけじゃなくて……ほんなふうに、舌を絡まへて、ね。お互いの唾液を混ぜ合わへて、気分を高めてくらはいね」
「っ、ふぁ……、……っふ、は……っ」
「……っん、……っふ」
ユージン様の舌面すれすれの空間を、ミゴー様の舌先が繰り返し舐め上げます。ユージン様は苦しげに眉を寄せました。一ミリたりとも触れられていないはずのユージン様の舌が、緊張に耐え切れなくなったようにひくひくと蠢き、その舌を追い詰めるように、ミゴー様の舌がにじり寄る。おふたりの濡れた舌はぼくに、ぬらりと光る二匹の蛇を連想させました。
視線が無意識に、隣に座るレイに吸い寄せられました。レイは両の拳を膝の上で握り込み、顔を赤くしながらおふたりを見つめています。不意にぼくは、レイの手を握ってあげたいと思いました。けれどぼくの体は意志に反して固まってしまって、すぐそばにある彼の手までの距離すら動かすことができません。
「ひゃ、め……も、もう、いいらろ……っ!」
「……っふ。はい。まずはこんな感じです」
「はぁ……っ、……ひうっ!」
ミゴー様が舌を引っ込めると、ユージン様は口を開けたまま深く息をつかれます。けれど次の瞬間、その口元から跳ねるような高い声が飛び出しました。ユージン様を後ろ抱きにしたミゴー様の御手が、スーツの上からユージン様の胸元をまさぐり始めたのです。
「はい、次はこうやって、お互いの体を触り合っこしていきましょう。ユージンさんみたいに恥ずかしがりやな人には、こんなふうに積極的にリードしてあげてもいいですね」
「誰が恥ずかしっ、んぁっ!」
「特に胸とかお尻とか、エロい……えー、触って気持ちよくなれそう部分を、ね。知ってますか、男にもおっぱいはあるんですよ? 触られて気持ちよくなれるかどうかは、本人の資質と訓練次第ですけど」
笑顔のままのミゴー様が、ユージン様のスーツの胸ポケットのあたりを、二本の指でくるくると撫で上げます。途端にユージン様の両膝が、まるで磁石のようにびたっとくっつきました。
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ただ見ているままのぼくとレイは、同時にごくりと唾を飲みました。ぼくらが今まで知っていたものとはまったく異種の、けれど紛れもない美しさがそこに存在していました。
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