7 / 12
少年と出会い少女の人生は動きだす
森坂 照は物足りないGWを全力で満喫し、元の日常に戻る
しおりを挟む
ボーリングやカラオケなどに友達と共に訪れると、みんなは決まって点数を競い合う。
やれアベレージは幾らだ。最高何点だ。遊び慣れた彼等は自らの点数を時に誇らしげに、時に悔しがりながら口にする。
GWの最終日
今照がいる場所でもその様な会話が行われていた。
「照のやつ、また200越えかよ……」
「なぁ、なんで3日前までスペアの意味すら知らなかった完全ボーリング初心者が、スコア200以上を簡単に出せる様になってんの?」
「初日は2、30点しか出せなくて、みんな笑ってたのに……どうしてこうなった……」
照の前で死屍累々となって横たわるクラスメイト。
1クラスほぼ全員で遊ぶとなると、ボーリングをするだけでもちょっとした団体になる為、自然と周りの人はこちらを注目する。
そんな中、今まで負けていたが、本日遂に彼等にボーリングで勝利した俺は、上機嫌に笑う。
「はっはっは! 見たかお前ら! これが俺の実力だ」
照の高笑いにくそ~と悔しがるクラスメイト。喜び、悔しがるのは皆全力で遊んでいた証拠である。
GW中はアルバイトの時間までだったが、全日クラスメイトと遊びまくった。
今やっているボーリングやカラオケ、ビリヤードにダーツなど、今まで照が経験してこなかったものを彼等は教えてくれた。
その時間はとても楽しく、充実していたが、照の中では何か物足りなさがあった。
「照? どうしたの」
ひょこっと、照の顔を覗き込む様に彩花が下から見上げる。
「また考え事してたんでしょ」
「……よく見てるな」
彩花はフフンと得意げに鼻を鳴らし、周りよりも少し控えめな胸をそらす。
「で、何か不満なことでもあったの?」
「不満なんてないさ。皆んな俺に付き合ってくれて、楽しかったし感謝もしてる」
これは偽りの無い照の本心だ。
「……でも」
ただ……この光景を、この楽しさを知って欲しいと思う人がいない。
それだけが気掛かりなだけだ。
「でも?」
「いや、何でも無い」
照は話を切り上げ立ち上がる。
こんな話を今しても、彩花を困らせるだけだからだ。
「さて、次は何をしようか」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
乗り慣れない電車を数回乗り継ぎ、長時間の帰宅を終えた春香は、駅から自宅までの通路を、母と共に進んでいた。
GW中に居た実家では、親戚との疎外感がとても酷かった。母以外、春香の面倒を見たく無いと言わんばかりに皆春香を避け、そのくせ裏では春香の陰口を頻繁に行う。
そんな日々が続いた為、春香はストレスを多く抱え、疲れ果てていた。
「春香、もう少しで家だからね」
「うん」
春香は額に汗を浮かべながら一生懸命に車椅子を漕ぐ。
泊まりの荷物を2人分、ほとんど母が持ってくれているのだ。平坦の道ぐらい自分の力で進まなければ。
自分をずっと支えてくれた母も、相当疲れているだろう。身の回りの事を、何から何まで世話してくれた母には、休まる時が無かったのだ。
明日から自宅での生活に戻る。
融通の利く自宅なら、母も少しは休むことができるだろう。
それに、午後になればきっと照も来る。
彼が家にいる時、母は安心した様な笑顔を浮かべている。それだけで自分の世話を1人でするのが、どれだけ母の負担になっているのかが伺える。
明日だ。明日から元の日常に戻る。
しばらく照に会っていなかったからか、この数日はとても長く感じた。
彼と過ごしている時間は、とても過ぎるのが早くて、楽しかった。
GW中、何度彼の顔を思い浮かべたか、声を聞きたいと思ったか……。
「……あ」
そんな事を考えていたからだろうか……。
「いやー遊んだ遊んだー」
横断歩道の向こう側、春香の目の前を、多くの人に囲まれ歩く照の姿があった。
その表情はとても楽しげで、周りの人達の表情も笑顔だった。
このまま行けば、照はこちらに気づかずに通り過ぎて行くだろう。
すぐに駆け寄りたい衝動に駆られるも、信号に遮られる。
ズキッ……っと、春香は胸の奥に鈍い痛みの様なものを感じた。
自分が居なくても、照には居場所があって、そこで楽しそうに過ごしている。
その事実が、春香に声をかけることを躊躇させた。
ーーその時。
「えー。照もう帰るの?」
向こう側から声が聞こえ、春香はちらっと照の方を見る。すると、照が友人と思わしき人達に謝りながら別れ、手を降っている姿が見えた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
彼女を見つけたのは偶然だった。
何気無く反対側の歩道を見た時、1番に目に入ったのが車椅子に乗るハルだったのだ。
今正に帰る途中なのか、珍しく春香が自分で車椅子を漕ぎ、冬美さんは両手にキャリーバッグや荷物を持っていた。
2人共何やら疲れているようで、もう少しクラスメイト達と遊ぶ予定だったのだが、その様子を見て素通りすることは俺には出来なかった。
彩花らと別れて数秒、信号が青に変わり、春香と冬美さんがこちらに渡って来る。
「照君。久しぶりね」
始めに声をかけてきたのは冬美さんだった。
「こんにちは。荷物重そうですね、半分ぐらい持ちますよ」
「あら、ありがとう。それなら春香を押してあげてくれる? 駅からずっとだったから」
冬美さんはそう言ったが、元々そのつもりだったので、背負える荷物なんかは照が持った。
「ほれ。ハル、押すから手離せ」
「あ、ありがとうございます」
何故か少しよそよそしい春香だったが、その理由は直ぐにわかった。
「先輩。お友達とは別れて良かったんですか?」
「あー。あいつらとはいつも顔を合わせてるし、別にいいさ」
「私ともほぼ毎日顔を合わせてるじゃないですか」
「いいじゃん細かいことは。久しぶりなんだしさ」
本当に大した理由は無いのだ。たまたま知り合いを見つけて、話がしたかったから友人との予定より優先しただけ。
春香はこの答えに納得していないようだが……。
「照君はこの後バイトがあるの?」
春香の家が見えてきた頃、少し疲れ気味な冬美さんが口を開いた。
「はい。もう少し時間がありますが、今日もバイトです」
「だったら近いしウチに寄ってって。お礼にコーヒーぐらいだすから」
「それじゃあ、お言葉に甘えて」
久しぶりに春香の家に上がる。
いつもの春香の部屋ではなく、リビングに案内された照は、車椅子から春香を抱き抱え、ソファに座らせた。
その後すぐ冬美さんを手伝うため台所に向かい、コーヒーを机に並べるとハルの隣に照も座る。
ハルは何故だか少し落ち着かなそうに、身体をソワソワさせていた。
「先輩。私以外にもちゃんとお友達がいたんですね」
「はっ。どうだ、俺の人望も中々のもんだろ」
「あの人達の何人が上部だけの中になるんでしょうね」
「なんてこと言うのこいつ?!」
いつも通りの会話。調子に少しホッとしながら、照は春香との会話を楽しんだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「そろそろバイトの時間だな」
照が時計を見てそう呟く。
「お母さん。寝ちゃいましたね」
春香と照の正面のソファでは、母が小さく寝息を立てていた。
「なんだかお疲れみたいだったからな。ハルは大丈夫なのか?」
「私は大丈夫です。お母さんは向こうでも私の世話で付きっ切りでしたから、相当疲れたんだと思います。それでも……こうやって人前で寝ちゃうのは本当に珍しいです。私の前でもそうありません」
「あー……なんとなく分かる」
照もその訳を察したらしい。
「私が1人で出来ることはかなり限られますから、起きている間は多分常に気を配ってるんだと思います」
「それだけ、ハルを大切に思ってくれてるんだろ」
そう言って照は春香の頭をそっと撫でる。
ああ。本当にこの人は……平気でこんな事をしてくる。
照の手はとても暖かく、自分を安心させてくれた。その心地良さに春香は気持ち良さそうに目を細める。
「はい。本当に……お母さんは私を大切にしてくれてます。ですから、お母さんがこうして寝てしまうのは、それだけ先輩を信頼してるって事なんですよ」
「そんな大層な事、した覚え無いんだけどな」
そう言って照は、少し困った様に笑う。
声を聴くだけで分かる。きっと彼は、私達がどれだけ助けられていると感じているか、分かっていないんだろう。
照はそういう人間だ。何時も自分がしたいように動いて、そこに打算などは存在しない。
だから私は……。
「ん? どうした、ハル」
春香が照に向けて差し出したスマホを見て、照は疑問の声を上げる。
「れ、連絡先……」
「え?」
「連絡先ですよ! 私達、もう知り合って2年以上になるのに、お互いの連絡先すら知らないのってやっぱりおかしいと思います!!」
言った! 言ってやった。
顔が熱い……。自分の顔が真っ赤に染まっているのが分かる。
自分突然大声をだした事で、照は少し驚いたようだった。
「お、おう。そうだな……そう言えば、まだ連絡先交換してなかったか」
照が自分のスマホを取り出し、春香のスマホに連絡先を登録した後、照が入れていた会話も出来るという、SNSのアプリで友達登録もした。
スマホの画面に映った照の連絡先、そしてアプリに登録した照の名を見て、春香は口元がにやけるのを堪えるので必死だった。
「ほら、これでいいぞ。じゃあ俺はそろそろバイトに行くわ。おばさん、起こした方がいいかな」
「いえ、大丈夫です。疲れてるんで寝かせてあげて下さい。いざとなれば先輩に連絡しますし」
春香はスマホの画面を照に見せながらえへへと笑う。
「いや、俺バイトなんだけど……」
「でも、何かあれば来てくれるんでしょ?」
「まぁ来るけどさ」
照は少し照れながら、じゃあなと言って家を出た。
早速夜。バイトが終わった頃に電話をしてやろう。何を話そうか……なんでもいい。ああ、早く夜にならないかな。
照を見送った後、春香はしばらくスマホを見つめ、にやけ笑いを浮かべていた。
やれアベレージは幾らだ。最高何点だ。遊び慣れた彼等は自らの点数を時に誇らしげに、時に悔しがりながら口にする。
GWの最終日
今照がいる場所でもその様な会話が行われていた。
「照のやつ、また200越えかよ……」
「なぁ、なんで3日前までスペアの意味すら知らなかった完全ボーリング初心者が、スコア200以上を簡単に出せる様になってんの?」
「初日は2、30点しか出せなくて、みんな笑ってたのに……どうしてこうなった……」
照の前で死屍累々となって横たわるクラスメイト。
1クラスほぼ全員で遊ぶとなると、ボーリングをするだけでもちょっとした団体になる為、自然と周りの人はこちらを注目する。
そんな中、今まで負けていたが、本日遂に彼等にボーリングで勝利した俺は、上機嫌に笑う。
「はっはっは! 見たかお前ら! これが俺の実力だ」
照の高笑いにくそ~と悔しがるクラスメイト。喜び、悔しがるのは皆全力で遊んでいた証拠である。
GW中はアルバイトの時間までだったが、全日クラスメイトと遊びまくった。
今やっているボーリングやカラオケ、ビリヤードにダーツなど、今まで照が経験してこなかったものを彼等は教えてくれた。
その時間はとても楽しく、充実していたが、照の中では何か物足りなさがあった。
「照? どうしたの」
ひょこっと、照の顔を覗き込む様に彩花が下から見上げる。
「また考え事してたんでしょ」
「……よく見てるな」
彩花はフフンと得意げに鼻を鳴らし、周りよりも少し控えめな胸をそらす。
「で、何か不満なことでもあったの?」
「不満なんてないさ。皆んな俺に付き合ってくれて、楽しかったし感謝もしてる」
これは偽りの無い照の本心だ。
「……でも」
ただ……この光景を、この楽しさを知って欲しいと思う人がいない。
それだけが気掛かりなだけだ。
「でも?」
「いや、何でも無い」
照は話を切り上げ立ち上がる。
こんな話を今しても、彩花を困らせるだけだからだ。
「さて、次は何をしようか」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
乗り慣れない電車を数回乗り継ぎ、長時間の帰宅を終えた春香は、駅から自宅までの通路を、母と共に進んでいた。
GW中に居た実家では、親戚との疎外感がとても酷かった。母以外、春香の面倒を見たく無いと言わんばかりに皆春香を避け、そのくせ裏では春香の陰口を頻繁に行う。
そんな日々が続いた為、春香はストレスを多く抱え、疲れ果てていた。
「春香、もう少しで家だからね」
「うん」
春香は額に汗を浮かべながら一生懸命に車椅子を漕ぐ。
泊まりの荷物を2人分、ほとんど母が持ってくれているのだ。平坦の道ぐらい自分の力で進まなければ。
自分をずっと支えてくれた母も、相当疲れているだろう。身の回りの事を、何から何まで世話してくれた母には、休まる時が無かったのだ。
明日から自宅での生活に戻る。
融通の利く自宅なら、母も少しは休むことができるだろう。
それに、午後になればきっと照も来る。
彼が家にいる時、母は安心した様な笑顔を浮かべている。それだけで自分の世話を1人でするのが、どれだけ母の負担になっているのかが伺える。
明日だ。明日から元の日常に戻る。
しばらく照に会っていなかったからか、この数日はとても長く感じた。
彼と過ごしている時間は、とても過ぎるのが早くて、楽しかった。
GW中、何度彼の顔を思い浮かべたか、声を聞きたいと思ったか……。
「……あ」
そんな事を考えていたからだろうか……。
「いやー遊んだ遊んだー」
横断歩道の向こう側、春香の目の前を、多くの人に囲まれ歩く照の姿があった。
その表情はとても楽しげで、周りの人達の表情も笑顔だった。
このまま行けば、照はこちらに気づかずに通り過ぎて行くだろう。
すぐに駆け寄りたい衝動に駆られるも、信号に遮られる。
ズキッ……っと、春香は胸の奥に鈍い痛みの様なものを感じた。
自分が居なくても、照には居場所があって、そこで楽しそうに過ごしている。
その事実が、春香に声をかけることを躊躇させた。
ーーその時。
「えー。照もう帰るの?」
向こう側から声が聞こえ、春香はちらっと照の方を見る。すると、照が友人と思わしき人達に謝りながら別れ、手を降っている姿が見えた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
彼女を見つけたのは偶然だった。
何気無く反対側の歩道を見た時、1番に目に入ったのが車椅子に乗るハルだったのだ。
今正に帰る途中なのか、珍しく春香が自分で車椅子を漕ぎ、冬美さんは両手にキャリーバッグや荷物を持っていた。
2人共何やら疲れているようで、もう少しクラスメイト達と遊ぶ予定だったのだが、その様子を見て素通りすることは俺には出来なかった。
彩花らと別れて数秒、信号が青に変わり、春香と冬美さんがこちらに渡って来る。
「照君。久しぶりね」
始めに声をかけてきたのは冬美さんだった。
「こんにちは。荷物重そうですね、半分ぐらい持ちますよ」
「あら、ありがとう。それなら春香を押してあげてくれる? 駅からずっとだったから」
冬美さんはそう言ったが、元々そのつもりだったので、背負える荷物なんかは照が持った。
「ほれ。ハル、押すから手離せ」
「あ、ありがとうございます」
何故か少しよそよそしい春香だったが、その理由は直ぐにわかった。
「先輩。お友達とは別れて良かったんですか?」
「あー。あいつらとはいつも顔を合わせてるし、別にいいさ」
「私ともほぼ毎日顔を合わせてるじゃないですか」
「いいじゃん細かいことは。久しぶりなんだしさ」
本当に大した理由は無いのだ。たまたま知り合いを見つけて、話がしたかったから友人との予定より優先しただけ。
春香はこの答えに納得していないようだが……。
「照君はこの後バイトがあるの?」
春香の家が見えてきた頃、少し疲れ気味な冬美さんが口を開いた。
「はい。もう少し時間がありますが、今日もバイトです」
「だったら近いしウチに寄ってって。お礼にコーヒーぐらいだすから」
「それじゃあ、お言葉に甘えて」
久しぶりに春香の家に上がる。
いつもの春香の部屋ではなく、リビングに案内された照は、車椅子から春香を抱き抱え、ソファに座らせた。
その後すぐ冬美さんを手伝うため台所に向かい、コーヒーを机に並べるとハルの隣に照も座る。
ハルは何故だか少し落ち着かなそうに、身体をソワソワさせていた。
「先輩。私以外にもちゃんとお友達がいたんですね」
「はっ。どうだ、俺の人望も中々のもんだろ」
「あの人達の何人が上部だけの中になるんでしょうね」
「なんてこと言うのこいつ?!」
いつも通りの会話。調子に少しホッとしながら、照は春香との会話を楽しんだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「そろそろバイトの時間だな」
照が時計を見てそう呟く。
「お母さん。寝ちゃいましたね」
春香と照の正面のソファでは、母が小さく寝息を立てていた。
「なんだかお疲れみたいだったからな。ハルは大丈夫なのか?」
「私は大丈夫です。お母さんは向こうでも私の世話で付きっ切りでしたから、相当疲れたんだと思います。それでも……こうやって人前で寝ちゃうのは本当に珍しいです。私の前でもそうありません」
「あー……なんとなく分かる」
照もその訳を察したらしい。
「私が1人で出来ることはかなり限られますから、起きている間は多分常に気を配ってるんだと思います」
「それだけ、ハルを大切に思ってくれてるんだろ」
そう言って照は春香の頭をそっと撫でる。
ああ。本当にこの人は……平気でこんな事をしてくる。
照の手はとても暖かく、自分を安心させてくれた。その心地良さに春香は気持ち良さそうに目を細める。
「はい。本当に……お母さんは私を大切にしてくれてます。ですから、お母さんがこうして寝てしまうのは、それだけ先輩を信頼してるって事なんですよ」
「そんな大層な事、した覚え無いんだけどな」
そう言って照は、少し困った様に笑う。
声を聴くだけで分かる。きっと彼は、私達がどれだけ助けられていると感じているか、分かっていないんだろう。
照はそういう人間だ。何時も自分がしたいように動いて、そこに打算などは存在しない。
だから私は……。
「ん? どうした、ハル」
春香が照に向けて差し出したスマホを見て、照は疑問の声を上げる。
「れ、連絡先……」
「え?」
「連絡先ですよ! 私達、もう知り合って2年以上になるのに、お互いの連絡先すら知らないのってやっぱりおかしいと思います!!」
言った! 言ってやった。
顔が熱い……。自分の顔が真っ赤に染まっているのが分かる。
自分突然大声をだした事で、照は少し驚いたようだった。
「お、おう。そうだな……そう言えば、まだ連絡先交換してなかったか」
照が自分のスマホを取り出し、春香のスマホに連絡先を登録した後、照が入れていた会話も出来るという、SNSのアプリで友達登録もした。
スマホの画面に映った照の連絡先、そしてアプリに登録した照の名を見て、春香は口元がにやけるのを堪えるので必死だった。
「ほら、これでいいぞ。じゃあ俺はそろそろバイトに行くわ。おばさん、起こした方がいいかな」
「いえ、大丈夫です。疲れてるんで寝かせてあげて下さい。いざとなれば先輩に連絡しますし」
春香はスマホの画面を照に見せながらえへへと笑う。
「いや、俺バイトなんだけど……」
「でも、何かあれば来てくれるんでしょ?」
「まぁ来るけどさ」
照は少し照れながら、じゃあなと言って家を出た。
早速夜。バイトが終わった頃に電話をしてやろう。何を話そうか……なんでもいい。ああ、早く夜にならないかな。
照を見送った後、春香はしばらくスマホを見つめ、にやけ笑いを浮かべていた。
0
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる