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十一話 ダンジョン攻略
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一層目
グオォォォ!
燃える様な赤い肌をもつ屈強な大男が、手に持つ金棒を振り回し迫って来る。
大男の頭部には長い角が生えており、全長は二メートルを軽く超える。
レッドオーガ
プレイヤー内では赤鬼と呼ばれるMobだ。
オークの上位種に当たるMobで、その身体は岩の様な頑丈さを持つ。
「振り下ろしくるぞ! 攻撃の直線上に入るなよ!」
「了解!」
俺の掛け声に答え、ハル達もレッドオーガの側面に回る。
レッドオーガはその動きに合わせられずに、振り下ろした金棒は空を切り、そのまま地面に突き刺さる。
ドゴォォン
レッドオーガの攻撃は衝撃波となって、三メートル奥までその範囲が広がる。
しかし、俺たちは既にその範囲から退避しているのでダメージは入らない。
「三秒ディレイ! 叩き込め!」
「はい!」
攻撃の後の硬直を見逃さず、俺とハルが攻撃スキルを発動し、オーガにダメージを与える。
「次来るぞ! コウ、スイッチ!」
「任せろ」
オーガの硬直が解けると同時に俺とハルは距離を取り、入れ替わりにコウが前に立ちオーガの攻撃を受け止める。
「魔法いくわよ。死にたくなかったら離れなさい!」
後ろで魔法を準備していたセナが合図すると共に、コウも再び硬直したオーガから離れる。
ドカァァン
一泊遅れてオーガが爆発した。
セナの火属性魔法、ブラストだ。
初期魔法のファイアーボールの上位版となるその魔法は、威力を十二分に発揮し、オーガのHPを容赦なく削る。
パリィン
それがトドメとなったのか、オーガはガラスの割れる様な音と共に安っぽいエフェクトを撒き散らし霧散した。
「ふぅ」
テル達は戦闘が終了すると、武器をそれぞれ納め、一息をついた。
……すごい。
アリサは彼等の戦闘を見て驚愕していた。
素人目の自分でも分かる、無駄のない連携。各自が自分の役割を勤め、戦闘を完璧にコントロールしていた。
自分と大して歳の変わらない人達が、現実の死に直結するこの状況であれ程の連携をする事が出来るものなのかと、アリサは驚きを隠せない。
それ程までに、ハル達はテルを信用しているのだろう。
テル
死神と呼ばれ、私達ビギナーに恐れられている存在。
彼が強いのは知っていた。レベルだけでなくその技術も、アリサなど比べ物にならないなんて事は分かっていた。
それでも、彼への評価は甘かった。
複数人で行う戦闘において、自分も行動しながら相手の行動をいち早く察知し、仲間に指示を出す。口で言うのは簡単だが、そう出来るものではないだろう。
人の意識を統一させること、その難しさはアリサ自身もよく知っている。
学校での班活動や部活でのチームプレー。現実の世界でもその能力はとても重要だ。
それは一朝一夕で身に着くものでもなく、また努力すれば必ず身に着くものでもない。
人を安心させ、まとめ上げるカリスマ性というものがテルにはあるのだろう。
そして、自分の命を預け、任せられる程の信頼関係がテルとハル達の間にはある。
ギュッとアリサは胸が締め付けられる様な感じがした。
少し……彼等の関係が羨ましいと思った。
三層目
もう何度目かも分からないオーガ達の襲撃を受け、その度に返り討ちにしてきたが、俺の中である疑問が産まれ始めていた。
オーガの数が多すぎる。
そもそもオーガは一の島においてレアMobに位置するモンスターだ。その色は三種あり、青鬼、黄鬼、赤鬼と、青が一番弱く赤が一番強い。
通常のフィールドで出会っても青鬼が一、二体。運が良くて黄鬼が精々だろう。赤鬼なんて余程運が良いか、出現するフィールドを数日間ずっと徘徊でもしていないと出会えない。
レアMobなだけあって強い分経験値も他のMobよりも多い。
それほど珍しいオーガが、このダンジョンでは通常のMob並にガンガン沸く。
それも100%で。
何が言いたいかというと、ウマすぎる。
なんなの? 確かに難易度は高いのだろう。オーガとの戦闘に慣れていなければダメージも負うし、連続戦闘は厳しいかもしれないが……納得出来ない。
今までの苦労は何だったのかというぐらい経験値効率がいい。俺の徹夜でオーガを探し回り駆除してきた苦労を返して欲しいぐらいだ。
そして何より悔しいのが俺のレベルが既に一の島では高過ぎる状態なので、オーガクラスの経験値でも大して変わらない所である。
いや、赤鬼ならまだ美味しいんだけど、青鬼や黄鬼程度なら二の島で序盤のMobを狩りまくった方がいいまである。
もっと早くこのダンジョンに気づいてればなぁ。
そんなモヤモヤを抱えながら俺はダンジョン攻略を進めていた。
まぁそれはさておき。
「アリサ。今レベルどれくらいになった?」
俺はアリサに振り向き声をかける。
「えっと、前の戦闘でレベル6に上がりました」
アリサが自分のステータスを見ながら質問に答える。
やっぱりレベルの上がり方が尋常じゃないな。
まぁ思いっきりやってる事はパワーレベリングなんだけど……。
ダンジョンに入る前、アリサにはSCOにおいての基本操作や戦闘時に注意すべき点などは一通り教えてある。
アリサは容量が良く、俺たちが教えたことに対して素直に従ってくれているので戦闘に入っても邪魔になることはない。
それどころか、自主的にオーガの攻撃パターンを見極めた様で、俺の指示を予想して攻撃範囲からいち早く離脱できる様にしている。
だが、始めてのダンジョン攻略ということや、慣れてもいない連続戦闘によって精神的にも体力的にもそろそろ限界が近そうだ。
今回の依頼であるダンジョン調査は普通の攻略と違って隅々まで徘徊し、マップや罠などを把握しなければいけないため、三層に来るまでもかなりの時間が経過している。
それに夜の内から攻略を始めたのも不味かったか。
本人は俺たちに気をつかってか口に出さないが、この世界に来て夜遅くまで神経を張り詰めていた事など無いだろう。
その為先程から少しずつ行動が遅れてきている。
一層、二層の安全地帯で小まめに休憩を取っていたが、もう夜遅い。一度仮眠を取った方がいいかもしれない。
このダンジョンの規模だと、おそらくボスの部屋は五層付近にあるだろう。
その前に多めの休息は取っておいた方がいい。
「先輩!」
そう考えていた時、ハルが前方を指差し俺を呼ぶ。
その先には上に繋がる階段があった。
階段のある空間はモンスターが湧かない。つまりこの層の安全地帯だ。
ちょうどいい。
「それじゃあ、あそこで休憩にするか」
グオォォォ!
燃える様な赤い肌をもつ屈強な大男が、手に持つ金棒を振り回し迫って来る。
大男の頭部には長い角が生えており、全長は二メートルを軽く超える。
レッドオーガ
プレイヤー内では赤鬼と呼ばれるMobだ。
オークの上位種に当たるMobで、その身体は岩の様な頑丈さを持つ。
「振り下ろしくるぞ! 攻撃の直線上に入るなよ!」
「了解!」
俺の掛け声に答え、ハル達もレッドオーガの側面に回る。
レッドオーガはその動きに合わせられずに、振り下ろした金棒は空を切り、そのまま地面に突き刺さる。
ドゴォォン
レッドオーガの攻撃は衝撃波となって、三メートル奥までその範囲が広がる。
しかし、俺たちは既にその範囲から退避しているのでダメージは入らない。
「三秒ディレイ! 叩き込め!」
「はい!」
攻撃の後の硬直を見逃さず、俺とハルが攻撃スキルを発動し、オーガにダメージを与える。
「次来るぞ! コウ、スイッチ!」
「任せろ」
オーガの硬直が解けると同時に俺とハルは距離を取り、入れ替わりにコウが前に立ちオーガの攻撃を受け止める。
「魔法いくわよ。死にたくなかったら離れなさい!」
後ろで魔法を準備していたセナが合図すると共に、コウも再び硬直したオーガから離れる。
ドカァァン
一泊遅れてオーガが爆発した。
セナの火属性魔法、ブラストだ。
初期魔法のファイアーボールの上位版となるその魔法は、威力を十二分に発揮し、オーガのHPを容赦なく削る。
パリィン
それがトドメとなったのか、オーガはガラスの割れる様な音と共に安っぽいエフェクトを撒き散らし霧散した。
「ふぅ」
テル達は戦闘が終了すると、武器をそれぞれ納め、一息をついた。
……すごい。
アリサは彼等の戦闘を見て驚愕していた。
素人目の自分でも分かる、無駄のない連携。各自が自分の役割を勤め、戦闘を完璧にコントロールしていた。
自分と大して歳の変わらない人達が、現実の死に直結するこの状況であれ程の連携をする事が出来るものなのかと、アリサは驚きを隠せない。
それ程までに、ハル達はテルを信用しているのだろう。
テル
死神と呼ばれ、私達ビギナーに恐れられている存在。
彼が強いのは知っていた。レベルだけでなくその技術も、アリサなど比べ物にならないなんて事は分かっていた。
それでも、彼への評価は甘かった。
複数人で行う戦闘において、自分も行動しながら相手の行動をいち早く察知し、仲間に指示を出す。口で言うのは簡単だが、そう出来るものではないだろう。
人の意識を統一させること、その難しさはアリサ自身もよく知っている。
学校での班活動や部活でのチームプレー。現実の世界でもその能力はとても重要だ。
それは一朝一夕で身に着くものでもなく、また努力すれば必ず身に着くものでもない。
人を安心させ、まとめ上げるカリスマ性というものがテルにはあるのだろう。
そして、自分の命を預け、任せられる程の信頼関係がテルとハル達の間にはある。
ギュッとアリサは胸が締め付けられる様な感じがした。
少し……彼等の関係が羨ましいと思った。
三層目
もう何度目かも分からないオーガ達の襲撃を受け、その度に返り討ちにしてきたが、俺の中である疑問が産まれ始めていた。
オーガの数が多すぎる。
そもそもオーガは一の島においてレアMobに位置するモンスターだ。その色は三種あり、青鬼、黄鬼、赤鬼と、青が一番弱く赤が一番強い。
通常のフィールドで出会っても青鬼が一、二体。運が良くて黄鬼が精々だろう。赤鬼なんて余程運が良いか、出現するフィールドを数日間ずっと徘徊でもしていないと出会えない。
レアMobなだけあって強い分経験値も他のMobよりも多い。
それほど珍しいオーガが、このダンジョンでは通常のMob並にガンガン沸く。
それも100%で。
何が言いたいかというと、ウマすぎる。
なんなの? 確かに難易度は高いのだろう。オーガとの戦闘に慣れていなければダメージも負うし、連続戦闘は厳しいかもしれないが……納得出来ない。
今までの苦労は何だったのかというぐらい経験値効率がいい。俺の徹夜でオーガを探し回り駆除してきた苦労を返して欲しいぐらいだ。
そして何より悔しいのが俺のレベルが既に一の島では高過ぎる状態なので、オーガクラスの経験値でも大して変わらない所である。
いや、赤鬼ならまだ美味しいんだけど、青鬼や黄鬼程度なら二の島で序盤のMobを狩りまくった方がいいまである。
もっと早くこのダンジョンに気づいてればなぁ。
そんなモヤモヤを抱えながら俺はダンジョン攻略を進めていた。
まぁそれはさておき。
「アリサ。今レベルどれくらいになった?」
俺はアリサに振り向き声をかける。
「えっと、前の戦闘でレベル6に上がりました」
アリサが自分のステータスを見ながら質問に答える。
やっぱりレベルの上がり方が尋常じゃないな。
まぁ思いっきりやってる事はパワーレベリングなんだけど……。
ダンジョンに入る前、アリサにはSCOにおいての基本操作や戦闘時に注意すべき点などは一通り教えてある。
アリサは容量が良く、俺たちが教えたことに対して素直に従ってくれているので戦闘に入っても邪魔になることはない。
それどころか、自主的にオーガの攻撃パターンを見極めた様で、俺の指示を予想して攻撃範囲からいち早く離脱できる様にしている。
だが、始めてのダンジョン攻略ということや、慣れてもいない連続戦闘によって精神的にも体力的にもそろそろ限界が近そうだ。
今回の依頼であるダンジョン調査は普通の攻略と違って隅々まで徘徊し、マップや罠などを把握しなければいけないため、三層に来るまでもかなりの時間が経過している。
それに夜の内から攻略を始めたのも不味かったか。
本人は俺たちに気をつかってか口に出さないが、この世界に来て夜遅くまで神経を張り詰めていた事など無いだろう。
その為先程から少しずつ行動が遅れてきている。
一層、二層の安全地帯で小まめに休憩を取っていたが、もう夜遅い。一度仮眠を取った方がいいかもしれない。
このダンジョンの規模だと、おそらくボスの部屋は五層付近にあるだろう。
その前に多めの休息は取っておいた方がいい。
「先輩!」
そう考えていた時、ハルが前方を指差し俺を呼ぶ。
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