3 / 12
3話 少年疾走
しおりを挟む
「どうするのよ、これ」
「いや、俺に言われても困るんだが」
俺たち二人は非常に困っていた。
「ねえ、橋が壊れてるんだけど」
そのことに先に気づいたフィオナが指差す。
何を言ってるんだこの小娘は、と特に気にも留めずに橋を渡ろうとしたら、危うく川に落ちるところだった。
「ほんとに壊れてたわ」
「だから言ったでしょ」
「だけどここ以外で川を渡れるところというと、結構遠回りしなくちゃいけないからな」
「この川を泳げばいいんじゃない?」
「馬鹿を言え。この川の流れは見た目からは想像がつかないがかなり複雑になっているんだよ」
それに化け物みたいな怪獣が住んでいるってうわさもあるしな。
「ここは安全に遠回りしよう」
「その言い方だとまるで負け犬みたいでいやだわ」
そう言って、プイッとそっぽを向いてしまった。
なんでこいつは変なところでプライドが高いんだよ……
「そうだわ!戦略的撤退ということにしましょう」
「それ絶対名前の響きがいいからだろ。やってること大して変わらんぞ」
「いいの」
そして、うれしそうに「行くよ」と言って歩き始めた。
その天真爛漫な笑顔を見たら、なんだか張り合う気も失せてしまった。
「これで性格さえよければなあ」
「なんか言った?」
「いえ、なんでもないです」
こいつ地獄耳かよ。かなり小声で言ったつもりだったのに。
その会話の後、しばらくお互いに無言となり、その空気に耐え切れなくなった俺は、
「そういえば、フィオナはなんで教会に入団したんだ?」
と、尋ねてみた。
「聞きたい?」
とても嫌味な顔で聞き返してきた。
どうしよう、もう聞きたくない。けど話を振ったのは俺だしなあ。しょうがない。
「聞きたいです」
「いいでしょう!」
だからなんでこいつはこんなにうれしそうなんだ。
だが、さっきとは違い、その笑顔は非常に腹が立つ。
「私ね、子供の頃に悪魔に襲われたことがあるのよ。そのときはね、危うく陵辱されそうになったけど、ぎりぎりのところで教会の人たちに助けられたのよね。そこで思ったの『この私を辱めた悪魔は皆殺しにしてやる』って。それで悪魔を殺す力を手に入れる最も簡単な方法は教会に入団することだと考えたから、教会に入ったのよ」
うわー、フィオナさんの人格はすでに子供のときからこれだったのかー。救いようがねー。そして発想が恐ろしいな、おい。
で、一番気になったことが、
「で、悪魔にはどのへんまでヤられたの?」
「死にたいの?」
うん、駄目みたい。
その証拠に目にはさっきしか映ってないから。
「すいません調子に乗りました」
「分かればいいのよ」
そしてフィオナはまた上機嫌になった。
もうこいつ女王でいいんじゃないか?SMのなぁ!
こほんっ。
「おまえもいろいろあったんだな」
「なにしんみりしちゃって気持ち悪い」
「人が心配してあげたのにふざけやがって」
「あんたなんかに心配されても全然、これっぽっちも、ひとかけらもうれしくない」
「へい、そーですか」
断定。やっぱり最悪の女だこいつ。
お互いにお互いのことを嫌いになっただけの会話をしていると、
「ねえ、あれ小屋じゃない?」
「確かにそうだな。だけどこんなところに小屋が一軒だけ?」
「ちょっと行ってみましょ」
おそるおそる近づいて、扉をノックする。
「誰かーいませんかー……留守かな?誰かー」
だが返事は無い。
「出かけてるのな?」
「わからん。鍵はかかっているか?」
「そりゃ当然……あいてる」
「中をのぞいてみる。何かあると危険だからおまえは下がってろ」
俺はフィオナを退けて小屋の中を覗き込むと、
「……ッ!これは……」
「何があったの?」
「来ない方がいいぞ」
小屋の中に会ったのは…………死体だった。状態は入り口からだとよく見えないからおそらくだけど、八つ裂きにされてる。
個数は二つ。一人はエプロンをしているのが見えたから、たぶん夫婦だろう。
「ちょっと中見てくるからここでまってろ、いいな?」
「……はーい」
不機嫌そうな返事だな。でも、さすがにこれは見せれんって。
中に入り一通り調べると、料理の途中だったことが分かった。
きっとこれから朝食か昼食か夕食だったのだろう。なんにしても、楽しい団らんの最中に何者かによって襲われたのだろう。
きっとこれからも楽しいことがたくさんあっただろうに……
「だが誰にやられた?っても、こんなことをするのはどうせ悪魔だろう」
調べることは調べたからはやく小屋を出よう。この異臭のせいですこしはきそうだ。
「ここからはやく離れよう……フィオナ?」
小屋から出ると、フィオナの姿はどこにも無かった。
「どこ行きやがった……」
少し周りを探し歩いた。どうせ用をたしているのだろうと思ったが、近くにはどこにもいなかった。
道の真ん中にでて、遠くの方を見渡した。
すると、ピンク色の何かを発見した。
「あれは……たぶんフィオナかな。でもなんで先に行ってるんだ?」
あいつのことだ「もうあんたなんか用済みよ」と思ったのだろうな。それなそれで俺は助かるが。
だがよく見ると、フィオナの脇に黒いものが二つあった。
「なんだあれ?悪魔……じゃない、人だ」
まさかさらわれた?ないない。あいつ意外と強いからな。ピコーロ・フレイムだって名前こそダサいが、火力の調整と追尾させる技能が無ければ使えない超高等魔法だ。一般市民にさらわれはしないだろう。大方、「美人さんですね」とかそそのかされでもしたのだろう。
「あいつもなんか勝手にサクソン村まで行っちゃったし、俺も帰るか」
ようやく厄介払いができたぜ。これで心置きなく村に帰れる。清々した。ほんと酷い女だった。初対面の相手に石を投げるか普通。それに態度も大きくて無駄にプライドも高いし、そのくせ抜けている。いなくなってよかったよかった。
だけどこれでいいのか?あいつとの約束はどうなる。無事にサクソン村まで届けることが俺の仕事。果たしてあれが無事といえるのか?
そう思ったら突然足が止まってしまった。
「くそ……面倒なこと起こしやがって」
俺は村へ向かおうとする体を反転させ、サクソン村へ一歩、足を踏み出した。
「いや、俺に言われても困るんだが」
俺たち二人は非常に困っていた。
「ねえ、橋が壊れてるんだけど」
そのことに先に気づいたフィオナが指差す。
何を言ってるんだこの小娘は、と特に気にも留めずに橋を渡ろうとしたら、危うく川に落ちるところだった。
「ほんとに壊れてたわ」
「だから言ったでしょ」
「だけどここ以外で川を渡れるところというと、結構遠回りしなくちゃいけないからな」
「この川を泳げばいいんじゃない?」
「馬鹿を言え。この川の流れは見た目からは想像がつかないがかなり複雑になっているんだよ」
それに化け物みたいな怪獣が住んでいるってうわさもあるしな。
「ここは安全に遠回りしよう」
「その言い方だとまるで負け犬みたいでいやだわ」
そう言って、プイッとそっぽを向いてしまった。
なんでこいつは変なところでプライドが高いんだよ……
「そうだわ!戦略的撤退ということにしましょう」
「それ絶対名前の響きがいいからだろ。やってること大して変わらんぞ」
「いいの」
そして、うれしそうに「行くよ」と言って歩き始めた。
その天真爛漫な笑顔を見たら、なんだか張り合う気も失せてしまった。
「これで性格さえよければなあ」
「なんか言った?」
「いえ、なんでもないです」
こいつ地獄耳かよ。かなり小声で言ったつもりだったのに。
その会話の後、しばらくお互いに無言となり、その空気に耐え切れなくなった俺は、
「そういえば、フィオナはなんで教会に入団したんだ?」
と、尋ねてみた。
「聞きたい?」
とても嫌味な顔で聞き返してきた。
どうしよう、もう聞きたくない。けど話を振ったのは俺だしなあ。しょうがない。
「聞きたいです」
「いいでしょう!」
だからなんでこいつはこんなにうれしそうなんだ。
だが、さっきとは違い、その笑顔は非常に腹が立つ。
「私ね、子供の頃に悪魔に襲われたことがあるのよ。そのときはね、危うく陵辱されそうになったけど、ぎりぎりのところで教会の人たちに助けられたのよね。そこで思ったの『この私を辱めた悪魔は皆殺しにしてやる』って。それで悪魔を殺す力を手に入れる最も簡単な方法は教会に入団することだと考えたから、教会に入ったのよ」
うわー、フィオナさんの人格はすでに子供のときからこれだったのかー。救いようがねー。そして発想が恐ろしいな、おい。
で、一番気になったことが、
「で、悪魔にはどのへんまでヤられたの?」
「死にたいの?」
うん、駄目みたい。
その証拠に目にはさっきしか映ってないから。
「すいません調子に乗りました」
「分かればいいのよ」
そしてフィオナはまた上機嫌になった。
もうこいつ女王でいいんじゃないか?SMのなぁ!
こほんっ。
「おまえもいろいろあったんだな」
「なにしんみりしちゃって気持ち悪い」
「人が心配してあげたのにふざけやがって」
「あんたなんかに心配されても全然、これっぽっちも、ひとかけらもうれしくない」
「へい、そーですか」
断定。やっぱり最悪の女だこいつ。
お互いにお互いのことを嫌いになっただけの会話をしていると、
「ねえ、あれ小屋じゃない?」
「確かにそうだな。だけどこんなところに小屋が一軒だけ?」
「ちょっと行ってみましょ」
おそるおそる近づいて、扉をノックする。
「誰かーいませんかー……留守かな?誰かー」
だが返事は無い。
「出かけてるのな?」
「わからん。鍵はかかっているか?」
「そりゃ当然……あいてる」
「中をのぞいてみる。何かあると危険だからおまえは下がってろ」
俺はフィオナを退けて小屋の中を覗き込むと、
「……ッ!これは……」
「何があったの?」
「来ない方がいいぞ」
小屋の中に会ったのは…………死体だった。状態は入り口からだとよく見えないからおそらくだけど、八つ裂きにされてる。
個数は二つ。一人はエプロンをしているのが見えたから、たぶん夫婦だろう。
「ちょっと中見てくるからここでまってろ、いいな?」
「……はーい」
不機嫌そうな返事だな。でも、さすがにこれは見せれんって。
中に入り一通り調べると、料理の途中だったことが分かった。
きっとこれから朝食か昼食か夕食だったのだろう。なんにしても、楽しい団らんの最中に何者かによって襲われたのだろう。
きっとこれからも楽しいことがたくさんあっただろうに……
「だが誰にやられた?っても、こんなことをするのはどうせ悪魔だろう」
調べることは調べたからはやく小屋を出よう。この異臭のせいですこしはきそうだ。
「ここからはやく離れよう……フィオナ?」
小屋から出ると、フィオナの姿はどこにも無かった。
「どこ行きやがった……」
少し周りを探し歩いた。どうせ用をたしているのだろうと思ったが、近くにはどこにもいなかった。
道の真ん中にでて、遠くの方を見渡した。
すると、ピンク色の何かを発見した。
「あれは……たぶんフィオナかな。でもなんで先に行ってるんだ?」
あいつのことだ「もうあんたなんか用済みよ」と思ったのだろうな。それなそれで俺は助かるが。
だがよく見ると、フィオナの脇に黒いものが二つあった。
「なんだあれ?悪魔……じゃない、人だ」
まさかさらわれた?ないない。あいつ意外と強いからな。ピコーロ・フレイムだって名前こそダサいが、火力の調整と追尾させる技能が無ければ使えない超高等魔法だ。一般市民にさらわれはしないだろう。大方、「美人さんですね」とかそそのかされでもしたのだろう。
「あいつもなんか勝手にサクソン村まで行っちゃったし、俺も帰るか」
ようやく厄介払いができたぜ。これで心置きなく村に帰れる。清々した。ほんと酷い女だった。初対面の相手に石を投げるか普通。それに態度も大きくて無駄にプライドも高いし、そのくせ抜けている。いなくなってよかったよかった。
だけどこれでいいのか?あいつとの約束はどうなる。無事にサクソン村まで届けることが俺の仕事。果たしてあれが無事といえるのか?
そう思ったら突然足が止まってしまった。
「くそ……面倒なこと起こしやがって」
俺は村へ向かおうとする体を反転させ、サクソン村へ一歩、足を踏み出した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
二十年仕えた王女が私を敵に売った。それでも守ることにした
セッシー
ファンタジー
二十年間、王女殿下の護衛騎士として仕えた。その殿下が、私を敵に売った。
牢の中で事実を知り、一分考えて——逃げることにした。殿下の目的を、まだ果たしていないから。
裏切りの真相を確かめるため、一人王都へ戻る護衛騎士の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる