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序章: なぜあの時、言わなかったのか
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放課後の坂道は、夕陽に照らされて金色に輝いていた。
「きゃはっ!! 高瀬先輩、パンツ見えてますよぉ!!」
――え?
横を駆け抜ける早坂みのりに言われた通り、高瀬あかねが下を向くと、いつの間にかチェック柄のプリーツスカートがめくれて、淡い青の下着が露わになっていた。
「ちょ、みのり、見ないでよ! ていうか、よそ見するんじゃないの! 危ないでしょうが」
高瀬あかねが振り返る。
「もちろんっす!でも、先輩のスカートが風でめっちゃ舞ってるの、見逃せないですよ!」
「……あんた、どこ見てんのよ」
あかねは苦笑しながらペダルを踏み込む。スカートが風を受けてふわりと舞う。
「いや~、でも想像した通りでしたねぇ!」
「何が?」
「先輩のパンツの色。絶対白か、ブルー系だと思ってました」
「想像したって・・・・・・普段から何考えてんのよ。男子じゃあるまいし」
後ろを走る村山しおりが冷たい視線を浴びせる。
「でも、村山先輩が白ってのは意外でした。てっきり、赤と黒のツートンか、紫のどちらかだと予想していました」
「それはどういう意味よ」
「みのりちゃん、スカートばっか見てると、次のカーブで吹っ飛ぶよ」
「うわ、それは困るっす!でも、先輩たちのスカートが翻るの、なんか青春って感じでいいっすよね~」
三人は並んで坂を下る。風が頬を撫で、髪を揺らし、スカートを舞い上げる。
みのりは笑いながら叫んだ。
「この風、最高!でも、先輩たち、もうちょいスカート押さえた方がいいかもっすよ~!」
「うるさい! ていうか、先頭走ってる早坂も、中々可愛らしいピンクじゃないの!」
「え、あ!!」
あかねの声が風に乗って響いた。
小ぶりな尻が後ろの二人には丸見えだったが、なぜか隠そうとはしない。
むしろ見られていることを喜んでいるかのようだった。
(高瀬先輩に見られちゃった、みのりのパンチラ。こんな破廉恥な私――)
何やら念仏のようなものを唱える下級生。
坂を下る自転車は次第に速度を増していく。
早坂みのりは、笑いながらペダルを踏み込んだ。風を切る感覚が心地よく、視界のすべてが輝いて見えた。
その時だった。
曲がり角の向こうから、ランドセルを背負った女子小学生が突然飛び出してきた。
「みのり! 前!!」
「——っ!」
みのりの目が見開かれる。
ブレーキを握るが、間に合わない。
衝突。
金属が軋む音、タイヤが跳ねる音、そして地面に叩きつけられる鈍い衝撃音。
自転車が横転し、みのりと小学生は地面に大の字になって倒れていた。
「みのりっ!」
高瀬あかねが叫び、すぐに自転車を放り出して駆け寄る。
「ちょっと、勘弁してよ・・・・・・」
村山しおりも当惑した様子で続く。
「あかねはみのりを、私はその子を」
村瀬の采配で、あかねは下級生ながらふくよかな胸の上に耳を当てる。
みのりは目を閉じたまま、動かない。 それでも鼓動は伝わった。
今度は半開きになった口元に意識を向ける。
甘酸っぱい吐息が、微かな呻き声と共に漏れてきた。
「ん、・・・・・・」
「よかった、心配させるんじゃないわよ。この馬鹿。パンツ丸出しでノビちゃって」
気絶しているみのりの見苦しい姿を 整えながら、しおりの方に声をかけようとした時だった。
「ひいぃぃ!!」
その表情が、みるみるうちに変わった。
「……え……」
小学生の手を握るしおりの声が震える。
「脈……ない。呼吸も……止まってる……」
あかねが顔を向ける。
「……嘘でしょ……」
しおりはもう一度、手首に指を当てる。耳を近づける。胸に手を添える。
何度やっても、みのりの時とは違う。何も感じない。
名前すらわからない虚ろな少女の双眸は焦点を結ばないまま、動揺する二人をよそに、天を仰いでいる。
「……そんな……そんなはず……」
しおりの膝が、突然崩れた。
地面に尻もちをつき、手をつこうとするが、力が入らない。
「……うそ……うそ……」
彼女の呼吸が浅くなり、肩が震える。
普段は冷静で、理知的で、感情を表に出さないしおりが、完全に崩れていた。
「しおり!」
あかねが駆け寄るが、しおりは反応できない。
目は小学生の顔を見つめたまま、動かない。
「……死んでる……ほんとに……」
声にならない声が、唇から漏れる。
風が、静かに吹き抜ける。
その風は、スカートを翻すこともなく、ただ冷たく、重く、坂道を通り過ぎていった。
「きゃはっ!! 高瀬先輩、パンツ見えてますよぉ!!」
――え?
横を駆け抜ける早坂みのりに言われた通り、高瀬あかねが下を向くと、いつの間にかチェック柄のプリーツスカートがめくれて、淡い青の下着が露わになっていた。
「ちょ、みのり、見ないでよ! ていうか、よそ見するんじゃないの! 危ないでしょうが」
高瀬あかねが振り返る。
「もちろんっす!でも、先輩のスカートが風でめっちゃ舞ってるの、見逃せないですよ!」
「……あんた、どこ見てんのよ」
あかねは苦笑しながらペダルを踏み込む。スカートが風を受けてふわりと舞う。
「いや~、でも想像した通りでしたねぇ!」
「何が?」
「先輩のパンツの色。絶対白か、ブルー系だと思ってました」
「想像したって・・・・・・普段から何考えてんのよ。男子じゃあるまいし」
後ろを走る村山しおりが冷たい視線を浴びせる。
「でも、村山先輩が白ってのは意外でした。てっきり、赤と黒のツートンか、紫のどちらかだと予想していました」
「それはどういう意味よ」
「みのりちゃん、スカートばっか見てると、次のカーブで吹っ飛ぶよ」
「うわ、それは困るっす!でも、先輩たちのスカートが翻るの、なんか青春って感じでいいっすよね~」
三人は並んで坂を下る。風が頬を撫で、髪を揺らし、スカートを舞い上げる。
みのりは笑いながら叫んだ。
「この風、最高!でも、先輩たち、もうちょいスカート押さえた方がいいかもっすよ~!」
「うるさい! ていうか、先頭走ってる早坂も、中々可愛らしいピンクじゃないの!」
「え、あ!!」
あかねの声が風に乗って響いた。
小ぶりな尻が後ろの二人には丸見えだったが、なぜか隠そうとはしない。
むしろ見られていることを喜んでいるかのようだった。
(高瀬先輩に見られちゃった、みのりのパンチラ。こんな破廉恥な私――)
何やら念仏のようなものを唱える下級生。
坂を下る自転車は次第に速度を増していく。
早坂みのりは、笑いながらペダルを踏み込んだ。風を切る感覚が心地よく、視界のすべてが輝いて見えた。
その時だった。
曲がり角の向こうから、ランドセルを背負った女子小学生が突然飛び出してきた。
「みのり! 前!!」
「——っ!」
みのりの目が見開かれる。
ブレーキを握るが、間に合わない。
衝突。
金属が軋む音、タイヤが跳ねる音、そして地面に叩きつけられる鈍い衝撃音。
自転車が横転し、みのりと小学生は地面に大の字になって倒れていた。
「みのりっ!」
高瀬あかねが叫び、すぐに自転車を放り出して駆け寄る。
「ちょっと、勘弁してよ・・・・・・」
村山しおりも当惑した様子で続く。
「あかねはみのりを、私はその子を」
村瀬の采配で、あかねは下級生ながらふくよかな胸の上に耳を当てる。
みのりは目を閉じたまま、動かない。 それでも鼓動は伝わった。
今度は半開きになった口元に意識を向ける。
甘酸っぱい吐息が、微かな呻き声と共に漏れてきた。
「ん、・・・・・・」
「よかった、心配させるんじゃないわよ。この馬鹿。パンツ丸出しでノビちゃって」
気絶しているみのりの見苦しい姿を 整えながら、しおりの方に声をかけようとした時だった。
「ひいぃぃ!!」
その表情が、みるみるうちに変わった。
「……え……」
小学生の手を握るしおりの声が震える。
「脈……ない。呼吸も……止まってる……」
あかねが顔を向ける。
「……嘘でしょ……」
しおりはもう一度、手首に指を当てる。耳を近づける。胸に手を添える。
何度やっても、みのりの時とは違う。何も感じない。
名前すらわからない虚ろな少女の双眸は焦点を結ばないまま、動揺する二人をよそに、天を仰いでいる。
「……そんな……そんなはず……」
しおりの膝が、突然崩れた。
地面に尻もちをつき、手をつこうとするが、力が入らない。
「……うそ……うそ……」
彼女の呼吸が浅くなり、肩が震える。
普段は冷静で、理知的で、感情を表に出さないしおりが、完全に崩れていた。
「しおり!」
あかねが駆け寄るが、しおりは反応できない。
目は小学生の顔を見つめたまま、動かない。
「……死んでる……ほんとに……」
声にならない声が、唇から漏れる。
風が、静かに吹き抜ける。
その風は、スカートを翻すこともなく、ただ冷たく、重く、坂道を通り過ぎていった。
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