彼ノ女人禁制地ニテ

FILE1:コラボ企画

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　その夜、情報をくれた同僚から何気なく例の女人禁制地の場所を聞き出した鈴奈は早速情報集めに乗り出した。
　現地の正式名は、征六山。
　とある東北の地方都市内陸部に位置するとされる山村の近くにあるらしい。
　だが都市伝説というのに、得られた情報はその程度で、なぜその山が女人禁制地とされるのか、山の名前の由来などは詳しく語られていなかった。
　明らかなのは、その山に無断で立ち入った女性が何人も行方不明になっているという事実。
　遊び半分で休日に訪れたと思われる女子大生、ゴールデンウィークの旅行に近くを訪れると言い残した会社員、それから鈴奈のようにネットでの受けを狙って潜入報道しようとした動画配信者やインフル―エンサーなど。
　少なくともこの三年間で五人が失踪している。
　あまりに数が多いので、テレビ局もこのネタを避け、以来事の真偽は誰にも解明されていない。
　まさに鈴奈にとっては、千載一遇のチャンスだった。
　こんなものはどうせ、都市伝説で盛り上がりたいネットユーザー達がガセネタをあれこれ思いついて、いかにも本当らしく偽装しているに過ぎない。
　そこにスズナが真実のくさびを打ち込めばどうなるか。
　そう、彼女はこの征六山に潜入し、現地の様子を一通り撮影して見事生還して見せるという大胆な企画を構想していた。
　ネット界はスズナに注目し、今後作るいかなる動画もヒットするようになるだろう。
　芸能界に進出とまではいかないが、動画配信収入だけで生活できる未来も夢ではないかもしれない。
　そのためにはこの企画、万全の準備態勢で挑まなければなるまい。
　準備と言っても山登りの準備ではない。
　この動画をバズらせるために、打てる手は打っておくという意味だ。
　今こうしている瞬間にも、鈴奈と同じことを考えている人間がいるに違いない。
　一刻も早く計画を実行に移すべく、鈴奈はダメもとである人物への連絡を取ることにした。