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5章: 力なき王族

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 無論、真面目なフェリスがそれで納得する通りはなかった。
 だからレムダは説明を付け加える。
「これは仮にも士官学校の決定だ。背けば僕達のためにはならない。それに、学長がこの決定に納得しているわけではなかったことが分かっただけでも十分だ」
「ですが、この配属先というのは・・・・・・」
「南部ヒンデス公国国境、フェリス達と同じだね」
 東方と違って、南部のヒンデス公国との国境は欠伸が出るほどの暇があるそうだ。
 帝国と友好的な国ではないが、とにかく貧しい国だから帝国と本気で張り合う力も意思もない。
 やる事と言えば、せいぜい貧困を逃れて出稼ぎに来る密入国者を取り締まることくらいだった。
 かくいうわけで、レムダは今日も国境沿いの野原を散歩のように歩いている。
 北部とは違って景色はいい場所で、草木が生い茂り、小鳥がどこかで囀っている。
 まさに平和な風景そのもので、霞の向こうの国が本当に困窮しているのかと疑いたくなる。
 それでも任務は任務だから今は続けるしかない。
「私のせいでしょうか」
 ふとフェリスが立ち止まる。
「何の話?」
「私と関わるようになってから、あなたには不憫な思いばかりをさせているような気がします。全校生徒の前で土下座する羽目になったり、北の荒野に赴くことになったり。それで最後は士官候補の解任なんて」
「あ、いるよね~、そういう人」
 アイシャが厭味ったらしく笑う。
「今回は関係ないと思うけど?」
「ですが・・・・・・」
「僕も正直、こっちに来てよかったと思っている。シアも喜んでいるし」
「本当、ですか?」
「僕は上から仕事を任されるより、自分で好きなことをするのが性に合っているんだよ」
「軍人なのに、面白い性格をしているんですね」
「・・・・・・昔、色々あったからさ」
「何が?」
「いや、自分の能力を過信して、上司、いや上官から任された仕事を真面目に引き受けて、けれどよくよく考えれば土台無理な話で最後はボロボロになってさ。だから僕は、軍のトップに立って指揮を執るよりも、皆が最大限戦えることの手伝いをする方がいいんだ」
「レムダって、まだ子供なのにそういうところは大人びているよね?」
「そうかな?」
 一同が談笑していた頃、遠くから馬蹄の音が近づいた。
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