12 / 29
1章: 学院内権力組織
仲裁
しおりを挟む
ティラに限った話ではない。グラン=アカデミーに在籍する数千人の学生を束ねる百余名の統制委員、その実力派トップであるエナメスは学生でありながら事実上の学院の支配者だ。
「あなたも、一般の生徒にグラン=アカデミー外での魔法の使用は認められていないはずですよ?」
落ち着いてはいるが十分に威圧感のある言葉で、シュロムも矛を収めた。
そもそも、彼がここで統制委員とやり合うつもりはない。
「そうですとも。魔法の規則外使用だなんて、まさか」
「こら! よくもぬけぬけとそんな嘘を!」
「ティラさん。嘘だという証拠はまだありません。統制委員の一員である以上、憶測に基づく魔法の乱用は慎むべきです」
「しかし、委員長! 証拠ならちゃんと・・・・・・」
「ティラさん? 私の言葉が聞こえなかったのですか?」
切れ長の目を更に刃のごとく細めて光らせるエナメスには身の毛もよだつほどの迫力があった。
それを目の当たりにしたティラは声をひきつらせて黙ってしまった。
ティラを一睨みで黙らせたエナメスは銀髪を翻してシュロムを顧みる。
――なるほど、これがこの女の威圧感か。
身体を反らしたエナメスは制服のジャケットに手を伸ばしていた。
シュロムが警戒する中、彼女がそこから取り出したのは金の懐中時計だった。
「あら、もうこんな時間ですね。二人とも、もうすぐ門限だから学院に急ぎ戻りなさい。寄り道などもっての外ですよ」
何事もないようにエナメスは懐中時計を懐に戻した。どうやらこの人に今すぐシュロムに危害を及ぼす気はないらしい。
「あ、あぁ、そうですね。早く帰ろっと」
エナメスがまず先に立ち去ったところで、シュロムもぎこちなく学院に戻り始める。
身構えたティラはまだ動かない。
「このまま、引き下がると思わない方がいいのですよ」
背後からティラの恨みがましい声が降りかかる。
振り返った先の彼女の表情など想像するだけで恐ろしかった。
まさか統制委員の長に見逃してもらえるとは思わなかった。
とはいえ、証拠掴みのために泳がされている可能性も否定はできない。
少なくともティラという統制委員には完全に要注意人物として敵視されているのだ。
よりにもよって厄介な人物に目を付けられたものだ。
これからはもっと慎重にアルバイトのやり方を考えなければ魔導書を手に入れることが出来ない。
以来、シュロムはあれこれ腐心する羽目になるのだが、次の危難は彼が最も想像していなかった方面から既に迫りつつあった。
「あなたも、一般の生徒にグラン=アカデミー外での魔法の使用は認められていないはずですよ?」
落ち着いてはいるが十分に威圧感のある言葉で、シュロムも矛を収めた。
そもそも、彼がここで統制委員とやり合うつもりはない。
「そうですとも。魔法の規則外使用だなんて、まさか」
「こら! よくもぬけぬけとそんな嘘を!」
「ティラさん。嘘だという証拠はまだありません。統制委員の一員である以上、憶測に基づく魔法の乱用は慎むべきです」
「しかし、委員長! 証拠ならちゃんと・・・・・・」
「ティラさん? 私の言葉が聞こえなかったのですか?」
切れ長の目を更に刃のごとく細めて光らせるエナメスには身の毛もよだつほどの迫力があった。
それを目の当たりにしたティラは声をひきつらせて黙ってしまった。
ティラを一睨みで黙らせたエナメスは銀髪を翻してシュロムを顧みる。
――なるほど、これがこの女の威圧感か。
身体を反らしたエナメスは制服のジャケットに手を伸ばしていた。
シュロムが警戒する中、彼女がそこから取り出したのは金の懐中時計だった。
「あら、もうこんな時間ですね。二人とも、もうすぐ門限だから学院に急ぎ戻りなさい。寄り道などもっての外ですよ」
何事もないようにエナメスは懐中時計を懐に戻した。どうやらこの人に今すぐシュロムに危害を及ぼす気はないらしい。
「あ、あぁ、そうですね。早く帰ろっと」
エナメスがまず先に立ち去ったところで、シュロムもぎこちなく学院に戻り始める。
身構えたティラはまだ動かない。
「このまま、引き下がると思わない方がいいのですよ」
背後からティラの恨みがましい声が降りかかる。
振り返った先の彼女の表情など想像するだけで恐ろしかった。
まさか統制委員の長に見逃してもらえるとは思わなかった。
とはいえ、証拠掴みのために泳がされている可能性も否定はできない。
少なくともティラという統制委員には完全に要注意人物として敵視されているのだ。
よりにもよって厄介な人物に目を付けられたものだ。
これからはもっと慎重にアルバイトのやり方を考えなければ魔導書を手に入れることが出来ない。
以来、シュロムはあれこれ腐心する羽目になるのだが、次の危難は彼が最も想像していなかった方面から既に迫りつつあった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~
aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」
勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......?
お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる