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序章: 落ちこぼれた逸材
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誰かがこちらへ駆け寄ってくる。
「おい、あれって・・・・・・ハルスじゃないか?」
数刻前に離反したメンバーの一人が血相を変えてこっちに曲がってくる。
その背後から巨大な影が何やら蠢いている。
尖った頭に天を覆い尽くすほどの翼。
斜めに差し込む光によって誇張されているとはいえ、影の主が相当な大きさの存在であることはすぐにわかる。
「た、助けてくれぇ!!」
「どうしたんだよ! ハルス! 今までどこに行っていた!?」
「それどころじゃ・・・・・・ドラゴンが、こっちに来る!!」
「何だって?」
ドラゴン、それはモンスターの中でも一際獰猛で手強い上位種。
経験豊かなプロの冒険者でさえ、数十人規模の大部隊を編成してようやく対抗できるほどの戦力だ。
無論、冒険者の駆け出しですらない冒険者学院の学生数人でどうにかなる相手ではない。
「待ってよ!? ドラゴンなんかが何でこんな所にいるのよ? 私達、卒業試験を受けているのよ?」
「ここは未攻略のダンジョンだ。何が現れても不思議ではない」
恐らく逃げ出したハンスは散々道に迷った挙句、ダンジョンの未攻略層に足を踏み入れてしまったのだろう。
そこで未だ発見されずにいたドラゴンと鉢合わせして、ここまで連れてきてしまったということだ。
イシルが予想していたリスクではあったが、相手がドラゴンというのは想定外だ。
「早く逃げるぞ! このメンバーで勝てる相手じゃない!」
先頭を走るハルスを追いかけるようにして、イシル達もダンジョンを退散した。
よりにもよって、出口に向かう方向を塞がれてしまうのは厄介だ。
少し遠回りをしなければならない。
「ハルス! その角を左に曲がれ!」
「左か? わかった!」
イシルはリアルタイムにダンジョン内の記憶を呼び起こし、当初から修正したルートを頭に描く。
この速度で走れば制限時間内に脱出できるだろう。
一旦出口さえ出てしまえばドラゴンは追跡を諦めるかもしれないし、出口付近にはこういう非常時を想定した学院の教員達がいる。
彼らと合流すれば、巣穴に追い返す位の反撃は可能だろう。
「待って! イシル!」
この後の展開を必死に計算していたイシルは、唐突に誰かに呼ばれた声に振り返る。
「イルマが!」
メンバーの指さす遥か後ろで、何かに躓いたらしき女子学生の一人が蹲っている。
ドラゴンはそんな彼女の背後に肉薄していた。
鱗を鎧のように固めた黒いドラゴンだ。
奴してみれば豆粒のような存在を見下ろすなり、頭を直立させる。
「まずい! アイツ、魔法を詠唱する気だ!」
ドラゴンには相応の知性があり、モンスターの中では魔法さえも使える厄介な相手だ。
直立した頭の背後に展開した魔法陣が高速で回転し、魔力の照準が逃げ遅れた女子学生に向けられるのを感じる。
一度の咆哮の後、天井の上にも関わらず堕ちてきた稲妻が洞窟内を隅々まで白く照らす。
「きゃあぁ!!」
少女の悲鳴は一瞬で、後は耳を塞ぎたくなるような轟音が狭い空間内を反響する。
「おい、あれって・・・・・・ハルスじゃないか?」
数刻前に離反したメンバーの一人が血相を変えてこっちに曲がってくる。
その背後から巨大な影が何やら蠢いている。
尖った頭に天を覆い尽くすほどの翼。
斜めに差し込む光によって誇張されているとはいえ、影の主が相当な大きさの存在であることはすぐにわかる。
「た、助けてくれぇ!!」
「どうしたんだよ! ハルス! 今までどこに行っていた!?」
「それどころじゃ・・・・・・ドラゴンが、こっちに来る!!」
「何だって?」
ドラゴン、それはモンスターの中でも一際獰猛で手強い上位種。
経験豊かなプロの冒険者でさえ、数十人規模の大部隊を編成してようやく対抗できるほどの戦力だ。
無論、冒険者の駆け出しですらない冒険者学院の学生数人でどうにかなる相手ではない。
「待ってよ!? ドラゴンなんかが何でこんな所にいるのよ? 私達、卒業試験を受けているのよ?」
「ここは未攻略のダンジョンだ。何が現れても不思議ではない」
恐らく逃げ出したハンスは散々道に迷った挙句、ダンジョンの未攻略層に足を踏み入れてしまったのだろう。
そこで未だ発見されずにいたドラゴンと鉢合わせして、ここまで連れてきてしまったということだ。
イシルが予想していたリスクではあったが、相手がドラゴンというのは想定外だ。
「早く逃げるぞ! このメンバーで勝てる相手じゃない!」
先頭を走るハルスを追いかけるようにして、イシル達もダンジョンを退散した。
よりにもよって、出口に向かう方向を塞がれてしまうのは厄介だ。
少し遠回りをしなければならない。
「ハルス! その角を左に曲がれ!」
「左か? わかった!」
イシルはリアルタイムにダンジョン内の記憶を呼び起こし、当初から修正したルートを頭に描く。
この速度で走れば制限時間内に脱出できるだろう。
一旦出口さえ出てしまえばドラゴンは追跡を諦めるかもしれないし、出口付近にはこういう非常時を想定した学院の教員達がいる。
彼らと合流すれば、巣穴に追い返す位の反撃は可能だろう。
「待って! イシル!」
この後の展開を必死に計算していたイシルは、唐突に誰かに呼ばれた声に振り返る。
「イルマが!」
メンバーの指さす遥か後ろで、何かに躓いたらしき女子学生の一人が蹲っている。
ドラゴンはそんな彼女の背後に肉薄していた。
鱗を鎧のように固めた黒いドラゴンだ。
奴してみれば豆粒のような存在を見下ろすなり、頭を直立させる。
「まずい! アイツ、魔法を詠唱する気だ!」
ドラゴンには相応の知性があり、モンスターの中では魔法さえも使える厄介な相手だ。
直立した頭の背後に展開した魔法陣が高速で回転し、魔力の照準が逃げ遅れた女子学生に向けられるのを感じる。
一度の咆哮の後、天井の上にも関わらず堕ちてきた稲妻が洞窟内を隅々まで白く照らす。
「きゃあぁ!!」
少女の悲鳴は一瞬で、後は耳を塞ぎたくなるような轟音が狭い空間内を反響する。
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