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2章: 騎士団長の娘

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 二手に分かれた内の片割れ、アシェリーの取り巻き二人組のペアは中々ダンジョンの先に進めずにいた。
「ねぇ~、待ってぇ。そんなに早く歩かないでよぉ!」
「もう、オルファったら怖がりなんだから。大丈夫だって」
 尻込みする相方を面白がるように、もう一人は物怖じする気配も見せず、先へと進んで行く。

「だってぇ、ここモンスターがいるんだよ?」
「だから、さっきも言ったじゃない。いるとしたってどうせ、コウモリかネズミみたいな小動物だって」
「でもさ、そのモンスターの討伐に私達四人が選ばれているんだよ? それって、一人ではどうにもならないほど凶暴だからじゃないの?」
「・・・・・・だ、大丈夫よ。そ、そうじゃなくってさ、ほら・・・・・・相手があんまり小さいから、見つけるのに苦労するでしょ? だから四人で探すことになったのよ。そうよ。見つかれば一人で何とかできるんじゃないの?」
「本当にそうかなぁ?」
「きっとそうだって!! それとさ、アシェリー様に貰った魔道具、アタシに渡してよ」
「どうして?」
「いいから! アンタ怖がりなんだから、魔道具をぎゅって握ってアシェリー様を呼んじゃったらどうするの?」
「そ、そうか、そうだね・・・・・・」
 二人はアシェリーの魔道具を受け渡した。
「いざとなったらアシェリー様に助けを求めればいいのよ。ああ、アシェリー様がご一緒で本当に良かった」
「本当だねぇ~」
「それにしてもイベルナったら、自分だけアシェリー様のお傍に張り付くなんてずるいわ。あの子、いくら自分が一番アシェリー様に気に入られているからって、最近生意気なんじゃないの?」
「本当だねぇ~」
「でもあの子、強がってはいるけど結構怖がりなのよね。この前なんて、トイレにお化けが出る~なんて、私について来てって泣きついて来たのよ? ウケるでしょ?」
「・・・・・・」
「ねえ、聞いているの、オルファ。オルファ?」
 薄暗いダンジョンに返事はない。
「ねえ、ふざけてないで出てきなさいよ? オルファ? オルファ!」
 聞こえてくるのはたじろぐ自分の靴音だけだ。
「ちょっと、意地の悪いかくれんぼなんか止めてよ! 本当に怒るわよ?」
 不安に駆られて辺りに喚き散らすが、相方の気配はない。
 さっきまであれだけ怖がっていたのだから、一人で先に進んだとも思えなかった。
 だとすれば考えられる可能性は一つ。
 既にモンスターの餌食にされたということだ。
「う、嘘でしょ? 何なのよ? ここにいるモンスターって」
 こうなる事なら、敵を過小評価するべきではなかった。
 とにかく今取るべき行動は一つしかない。
「どうしよう、アシェリー様達に報せなきゃ・・・・・・ごふっ!!」
 首の後ろで激しい衝撃をぶつけられた感覚の後、意識を失って倒れた傍らで、既に相方が眠らされていた。

 背後から二人を沈黙させたイシルは魔道具を拾う。
「ありがとよ、有益な情報を色々教えてくれて。悪いがしばらくそこで眠っていてくれ」
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