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2章: 騎士団長の娘
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その頃、先頭に立って道を探るアシェリーは遠くの物音に振り返った。
「今、悲鳴のようなものが聞こえた気が・・・・・・」
「ちょっと、アシェリー!」
アシェリーの注意はダンジョンの些細な気配よりも、後ろを歩く同胞に向けられた。
「あなた、どういうつもりですの?」
アシェリー親衛隊のトップであるはずの金髪ブロンドの女、イベルナはただでさえ言いとはいえない目つきに敵意を滾らせた。
「何の話です?」
「その魔道具よ。私に何かされたら、それで皆を呼ぶつもりですか?」
「そんなことには。これは、モンスターを見つけた時に合流しやすくするためで・・・・・・」
「でもあなた、私達がこのミッションを出される前からこれを持っていたのでしょ? もしかして、私に対する警戒のつもりで手に入れたのではなくて?」
「ち、違います。これは昔読んだ冒険者の本に書いてあったのを知っていただけで・・・・・・別にあなたとの関係のことは何も言っていませんから!」
アシェリーは弁解する。
「そうですか。つまり、私達以外にあなたの御家のことを知る人間は学院にいない。そういうことでよろしいのね?」
「え、えぇ・・・・・・・」
この学院に入学してすぐのことだった。
かのグランフェルト家の人間が冒険者学院に来たという評判が学院内に広まって、アシェリーが人気者に祭り上げられた際、他の級友達を押しのけるようにして現れたのがイベルナだった。
元より彼女は、アシェリーの威光を笠にして、学院内で何でも思い通りにすることが目的で近づいたのだろう。
ところがアシェリーが実は実家に勘当を宣告された立場であることを告げると、彼女はそれまでのへつらう態度を覆した。
「もう、あなたがご実家でそんなことになっているなんて、この私まで迷惑を被ってしまったではないですの」
アシェリーがグランフェルト家の氏を失うということは、イベルナの後ろ盾も同時に潰えるということだった。
殊に彼女は後先考えず野放図を繰り返しただけに、学院内からどれだけの恨みを買っているのかわかったものではない。
彼女は早速、アシェリーの口封じ策に乗り出した。
今までの彼女の人気がグランフェルトの家柄を目的に集まっているのだという状況をアシェリーに信じ込ませ、他方でアシェリーがやがてはグランフェルト騎士団長の座を継ぐという虚言を学院内に触れ回ったのだ。そうやって、勘当の告白をためらうような心理的状況を作り出したのだ。
「いいことですの? あなたがもしグランフェルト家の人間でなくなったことが露呈した暁には、あの子達はきっと、今まで騙されたと恨み言を言うでしょうね。そうなったら、卒業して冒険者になってもギルドから孤立しますわよ? 冒険者になっても仲間を得られず、かといって実家に逃げ帰るわけにもいかない。このままではあなた、一人で野垂れ死にですわよ!」
「・・・・・・うぅ」
「もはやあなたの取るべき道は一つ。卒業間際までグランフェルト家跡取りの立場を演じて、卒業間際に退学なさい」
「そ、それは・・・・・・」
「そうすれば勘当も回避できるでしょう? 学院の子達だって騙されたとは言わないでしょ?」
しかしそれは、アシェリーがまだ捨てきれずにいた冒険者になる夢と完全に決別することを意味した。
成績だって最近は努力に報いるように上がっている。
このままいけば、卒業して冒険者になれる展望がやっと開けたというのに。
「今、悲鳴のようなものが聞こえた気が・・・・・・」
「ちょっと、アシェリー!」
アシェリーの注意はダンジョンの些細な気配よりも、後ろを歩く同胞に向けられた。
「あなた、どういうつもりですの?」
アシェリー親衛隊のトップであるはずの金髪ブロンドの女、イベルナはただでさえ言いとはいえない目つきに敵意を滾らせた。
「何の話です?」
「その魔道具よ。私に何かされたら、それで皆を呼ぶつもりですか?」
「そんなことには。これは、モンスターを見つけた時に合流しやすくするためで・・・・・・」
「でもあなた、私達がこのミッションを出される前からこれを持っていたのでしょ? もしかして、私に対する警戒のつもりで手に入れたのではなくて?」
「ち、違います。これは昔読んだ冒険者の本に書いてあったのを知っていただけで・・・・・・別にあなたとの関係のことは何も言っていませんから!」
アシェリーは弁解する。
「そうですか。つまり、私達以外にあなたの御家のことを知る人間は学院にいない。そういうことでよろしいのね?」
「え、えぇ・・・・・・・」
この学院に入学してすぐのことだった。
かのグランフェルト家の人間が冒険者学院に来たという評判が学院内に広まって、アシェリーが人気者に祭り上げられた際、他の級友達を押しのけるようにして現れたのがイベルナだった。
元より彼女は、アシェリーの威光を笠にして、学院内で何でも思い通りにすることが目的で近づいたのだろう。
ところがアシェリーが実は実家に勘当を宣告された立場であることを告げると、彼女はそれまでのへつらう態度を覆した。
「もう、あなたがご実家でそんなことになっているなんて、この私まで迷惑を被ってしまったではないですの」
アシェリーがグランフェルト家の氏を失うということは、イベルナの後ろ盾も同時に潰えるということだった。
殊に彼女は後先考えず野放図を繰り返しただけに、学院内からどれだけの恨みを買っているのかわかったものではない。
彼女は早速、アシェリーの口封じ策に乗り出した。
今までの彼女の人気がグランフェルトの家柄を目的に集まっているのだという状況をアシェリーに信じ込ませ、他方でアシェリーがやがてはグランフェルト騎士団長の座を継ぐという虚言を学院内に触れ回ったのだ。そうやって、勘当の告白をためらうような心理的状況を作り出したのだ。
「いいことですの? あなたがもしグランフェルト家の人間でなくなったことが露呈した暁には、あの子達はきっと、今まで騙されたと恨み言を言うでしょうね。そうなったら、卒業して冒険者になってもギルドから孤立しますわよ? 冒険者になっても仲間を得られず、かといって実家に逃げ帰るわけにもいかない。このままではあなた、一人で野垂れ死にですわよ!」
「・・・・・・うぅ」
「もはやあなたの取るべき道は一つ。卒業間際までグランフェルト家跡取りの立場を演じて、卒業間際に退学なさい」
「そ、それは・・・・・・」
「そうすれば勘当も回避できるでしょう? 学院の子達だって騙されたとは言わないでしょ?」
しかしそれは、アシェリーがまだ捨てきれずにいた冒険者になる夢と完全に決別することを意味した。
成績だって最近は努力に報いるように上がっている。
このままいけば、卒業して冒険者になれる展望がやっと開けたというのに。
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