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『拓斗くん、えっちしよ?』
自分の願望が生み出した幻聴かと思った。
『だから、えっち……したいな』
現実だった。
ようやくだ、抱き上げて寝室へ向かい、ベッドに下ろす。
「ほんとに、いいんだよね?」
彼女がしたいと言ってくれるまで待っていた。最後の確認のため、優しく聞いた。
そうすると、彩綾がわっと突然泣き始めた。
「……っなんで、もう別れてよ…………」
何でセックスしたいと誘われたのに、別れたいと言われたのかはよくわからなかったけれど、彼女の言葉通りに別れてやるなんて有り得ない。同棲をし始めてからわかったが、彩綾はたまに思考が斜め上にいくことがあって、俺の頭の中は「???」とはてなマークで埋め尽くされて戸惑うことがある。
「彩綾、……俺が彩綾を離すことはもう2度とない」
わんわん泣いている彩綾を諭すようにゆっくりと、たがはっきりと答える。
「彩綾しか愛さない」
彩綾が顔を上げてこちらを見た。その目は懐疑的で、俺の言葉を信じてはいない。
「まだ信じられない?何度でも言うよ。愛してる。彩綾が信じるまで何度だって言う」
「無理だよ」
「何か心配なことがあるの?」
彩綾は言いにくそうに口をもごもごとさせながら口籠った。そんな彼女の様子を見ながら彼女が口を開くまで待った。何かあるならば、言って欲しい、頼って欲しい。彩綾のすべてがほしい。
「……私とえっちなんてもう出来ないでしょ?」
彩綾とするのは大好きだよ。毎日してもし足りないくらいだ。ぷるんと厚い唇に、潤んだ瞳、羞恥に染める赤い頬、白い首筋には毎回吸い付いて跡を残したいし、身体中に俺のものだって印を刻みたい。
大きめな柔らかいおっぱいを揉んで先っぽを吸い上げるのも大好きだ。そして可愛い声で泣く彼女の高い声も好き。
中を少し突くだけで甘い蜜を出して嬌声を上げてよがる姿を想像するだけで、押し倒してお前の所有者は俺だけだと身体に教え込みたくなる。彼女への支配欲が強烈なまでに湧き上がってきた。自分の雄としての欲を抑え込んで彼女に質問する。
「なにそれ?何でそんなこと思ったの?」
「だって最初に付き合ってた時だってあんまりしてなかったのに、浮気したからっ」
やっぱりあの時のこと気にしてるんだ。あの時の女の顔もどんなセックスをしたのかも覚えていない。ほんとに、誘われたからちょうどいいと思ったんだ。
ただ覚えているのは、あの日彩綾がドアを開けて入ってきたとき、彼女の顔から全ての感情が抜け落ち、次の瞬間歪んで泣きそうな表情をしていたってことだけだ。
「あれは、……あの時はただ誘われたからまぁいいかと思っちゃったんだ。ほんと最低だったよな、ごめん。謝っても謝りきれない」
もう浮気なんかしない。彩綾と別れたくない。もう2度と離れたくないよ。好きだ、好きなんだ。あいしてる。何でわからないかな?いや、でもこんな歪んだ気持ち、彼女に伝わらない方がいいのかもしれない。でもわかって欲しい。矛盾した気持ちで思考がバラバラになりそうになる。だが今は彩綾との会話に集中しなければ。彼女と話し合うことが先決だ。
「だけどもう2度としないよ。彩綾しか欲しくない」
「そんなの信じられないっ!どうせ他にも付き合っている人がいるんでしょ?私は今度は何番目なの?!」
彩綾が声を荒げて俺に怒鳴った。こんなのは初めてのことだ。いつも彼女は俺に優しくて従順で尽くしてくれて、俺に声を荒げたことなど今までなかった。
「そんな人いないことは彩綾が1番わかってるだろ。同棲してどれだけ一緒に過ごしてると思ってるんだよ。残業はたまにはあるけど、ほとんど定時で帰ってきてるし、休みはずっと一緒にいるだろ?何番とかない。彩綾しかいないんだから」
「同棲までしてる今だって私としてないじゃん!」
「だって俺言ったよね?『彩綾がしたいって言うまで我慢する』って。おれは一度言ったことは絶対に実行する」
起きている間は彩綾から誘ってくれるのを今日まで待ってたんだ。
「許してくれるなら毎日だって、何回だって彩綾としたいけど、彩綾が許してくれるまで我慢して、毎日毎日ずぅーっと彩綾を考えながら1人で抜いてた」
彩綾で抜いてたってのが正しい言い方だけど。
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