【BL】できそこないΩは先祖返りαに愛されたい

ノルジャン

文字の大きさ
17 / 58

7-1

しおりを挟む

 キッチンを見せてもらった。収納スペースにはほとんどコーラ、ポテチの山、ストックだらけだった。しかも全部同じ銘柄でコーラはダイエットじゃない普通の炭酸のやつだったし、ポテチは塩味のみ。本当にこれしか食べていなかったらそりゃ今の体型になるよ。それに飽きずによく食べ続けられたものだ。その点については少し感心してしまった。
 念のため冷蔵庫を確認しても、コーラのみ冷やされていた。マジか。

 ラッセルに話を聞くと、食料を買いに行って目についたのがこれだったから買いだめしたとのこと。特に大好物だとかいうわけではないらしい。色々選ぶのも面倒だし、この姿で頻繁にスーパーに買いに行くのも億劫だということで、ほとんどネットスーパーで買いまくっていたということだった。

 ――俺がしっかり家事代行として、ラッセルに健康的な食生活を送らせてやらなきゃな!

 あと、キッチンには真新しい調理器具やお皿、コップが用意されていた。俺の為に新しく買ってくれたんだろうな。チラリとラッセルの様子を盗み見ると、ラッセルは俺の方を見ていたらしく視線に気づいた。目を逸らされたがちろっと二股の舌が一瞬出てきた。
 それが照れているように見えて、なんだ、可愛い所がいっぱいあるんだなと、俺はクスクスと笑った。

「食生活はきちんとしないとな。イチロにご飯作ってもらって朝昼晩ちゃんとしたもの食べて適度に運動すればすぐに体型は元に戻るだろ」
「ああ、そうだな……」

 ぽってりとしたお腹をさすりながらまじまじと見つめてタイセーに返答するラッセル。

「ゲーム配信とかしてこの家に引きこもってたら運動は難しいか?あ、でも配信始める前も在宅で仕事してたんだっけ?そん時はどうしてたんだ?その時は普通の体型だったじゃん」
「家にフィットネスルームとプールがあったからそこで運動してた」
「「フィットネスルームとプール?!」」

 タイセーと声が被ってしまった。お金持ちの家はそんな設備も完備されているのか。衝撃だ。
 でもわからないでもない。ラッセルの場合だと先祖返りだし歩いているだけで注目の的だ。どこにいっても他人の目があるから落ち着けないだろう。
 なるべく家の中で全てを完結させたいという気持ちはわかる。お金でそれが叶うならそういった設備を整えるのは当然だろう。

「この家にも簡易的だが筋トレ部屋みたいなものを用意しようと思っているんだ」
「へー!それはすごいな。俺も遊びに来た時に使わせてくれよなー」
「もちろんだ。イチロも好きに使ってくれて構わない」
「ありがとう、ラッセル」
「イチロは筋トレとか体動かすとか言う前にまずは肉つけないとな。ラッセルとは逆に」
「……まぁそうなんだけど」

 肉を付けるとかいう以前の問題だった。お金がなかったから。
 自分の手首を見てみるとほっそりとして、骨が浮き出てきてしまっている。貧相な体付きだ。ラッセルと比べるとかなりの体格差だ。向こうは体重もそうだけど背も高いし。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

ベータですが、運命の番だと迫られています

モト
BL
ベータの三栗七生は、ひょんなことから弁護士の八乙女梓に“運命の番”認定を受ける。 運命の番だと言われても三栗はベータで、八乙女はアルファ。 執着されまくる話。アルファの運命の番は果たしてベータなのか? ベータがオメガになることはありません。 “運命の番”は、別名“魂の番”と呼ばれています。独自設定あり ※ムーンライトノベルズでも投稿しております

【完結】可愛いあの子は番にされて、もうオレの手は届かない

天田れおぽん
BL
劣性アルファであるオズワルドは、劣性オメガの幼馴染リアンを伴侶に娶りたいと考えていた。 ある日、仕えている王太子から名前も知らないオメガのうなじを噛んだと告白される。 運命の番と王太子の言う相手が落としていったという髪飾りに、オズワルドは見覚えがあった―――― ※他サイトにも掲載中 ★⌒*+*⌒★ ☆宣伝☆ ★⌒*+*⌒★  「婚約破棄された不遇令嬢ですが、イケオジ辺境伯と幸せになります!」  が、レジーナブックスさまより発売中です。  どうぞよろしくお願いいたします。m(_ _)m

アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました

あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」 穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン 攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?   攻め:深海霧矢 受け:清水奏 前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。 ハピエンです。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。 自己判断で消しますので、悪しからず。

人生はままならない

野埜乃のの
BL
「おまえとは番にならない」 結婚して迎えた初夜。彼はそう僕にそう告げた。 異世界オメガバース ツイノベです

処理中です...