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しおりを挟むキッチンを見せてもらった。収納スペースにはほとんどコーラ、ポテチの山、ストックだらけだった。しかも全部同じ銘柄でコーラはダイエットじゃない普通の炭酸のやつだったし、ポテチは塩味のみ。本当にこれしか食べていなかったらそりゃ今の体型になるよ。それに飽きずによく食べ続けられたものだ。その点については少し感心してしまった。
念のため冷蔵庫を確認しても、コーラのみ冷やされていた。マジか。
ラッセルに話を聞くと、食料を買いに行って目についたのがこれだったから買いだめしたとのこと。特に大好物だとかいうわけではないらしい。色々選ぶのも面倒だし、この姿で頻繁にスーパーに買いに行くのも億劫だということで、ほとんどネットスーパーで買いまくっていたということだった。
――俺がしっかり家事代行として、ラッセルに健康的な食生活を送らせてやらなきゃな!
あと、キッチンには真新しい調理器具やお皿、コップが用意されていた。俺の為に新しく買ってくれたんだろうな。チラリとラッセルの様子を盗み見ると、ラッセルは俺の方を見ていたらしく視線に気づいた。目を逸らされたがちろっと二股の舌が一瞬出てきた。
それが照れているように見えて、なんだ、可愛い所がいっぱいあるんだなと、俺はクスクスと笑った。
「食生活はきちんとしないとな。イチロにご飯作ってもらって朝昼晩ちゃんとしたもの食べて適度に運動すればすぐに体型は元に戻るだろ」
「ああ、そうだな……」
ぽってりとしたお腹をさすりながらまじまじと見つめてタイセーに返答するラッセル。
「ゲーム配信とかしてこの家に引きこもってたら運動は難しいか?あ、でも配信始める前も在宅で仕事してたんだっけ?そん時はどうしてたんだ?その時は普通の体型だったじゃん」
「家にフィットネスルームとプールがあったからそこで運動してた」
「「フィットネスルームとプール?!」」
タイセーと声が被ってしまった。お金持ちの家はそんな設備も完備されているのか。衝撃だ。
でもわからないでもない。ラッセルの場合だと先祖返りだし歩いているだけで注目の的だ。どこにいっても他人の目があるから落ち着けないだろう。
なるべく家の中で全てを完結させたいという気持ちはわかる。お金でそれが叶うならそういった設備を整えるのは当然だろう。
「この家にも簡易的だが筋トレ部屋みたいなものを用意しようと思っているんだ」
「へー!それはすごいな。俺も遊びに来た時に使わせてくれよなー」
「もちろんだ。イチロも好きに使ってくれて構わない」
「ありがとう、ラッセル」
「イチロは筋トレとか体動かすとか言う前にまずは肉つけないとな。ラッセルとは逆に」
「……まぁそうなんだけど」
肉を付けるとかいう以前の問題だった。お金がなかったから。
自分の手首を見てみるとほっそりとして、骨が浮き出てきてしまっている。貧相な体付きだ。ラッセルと比べるとかなりの体格差だ。向こうは体重もそうだけど背も高いし。
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