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「先輩、落としましたよ?」
ハラリ、と大学キャンパス内の校内に落ちた用紙を拾い、立っている男子学生へと渡した。髪が明るい金髪、私服はシンプルなのにお洒落に着こなしていて、芸能人か何かかと思うほどの異様なオーラを放っている。普段なら近寄らない部類の人種である。たしか同じ学科の一個上の三年の先輩だ。彼はただ茫然とこちらを見ている。
じっと時が止まったように動かず、一向に受け取る様子がない。
――あれ?何で受け取ってくれないの?
……めちゃくちゃ視線を感じるんだけど、私の顔なんかおかしいかな。もしかしてメイク崩れて眉毛なくなってる?
さっと顔を、主に眉毛を隠しながら紙を持つ腕を上げて、先輩の顔の真ん前に来るように掲げた。
「先輩どうぞ」
それでも受け取らない。焦れた私は先輩の胸元に「はい!」と紙を押し付けた。
早くトイレで鏡を確認したくて無理矢理に紙を渡した。押し付けた時に先輩の手が私の手の上に触れた。
パッと手を離してすぐにその場を離れた。
先輩が頬を染めて熱い視線でジッとこちらを見ているのにも気付かずに。
◇
「みーうちゃん」
私子路山みうの体はびくっと跳ねた。自分を呼ぶ男性の媚びた声が耳に絡みつく。
――毎回毎回なんなの~。
無視しても結局はしつこく声をかけられて返事をするまで諦めない。だから面倒くさくなる前に最近はこちらから折れている。
くるりと後ろを向く。
彼は黒いマスクを人差し指でくいっと下げて「みうちゃん今日もかわい~」などと宣う。
「……成撮先輩」
「いつも綾人って呼んでっていってるじゃん」
「よく知らない先輩を下の名前で呼べません」
「よく知らないなんて酷いなぁ。俺たち付き合ってるでしょ?」
「付き合ってませんから!」
一つ上の成撮綾人先輩。あの時ただ先輩が落としたプリントを拾っただけたのに。なぜか、その後から先輩の中では付き合っていることになっているらしい。それでずっと先輩に付き纏われているのだ。
先輩はキャンパス内ではやんちゃなイケメンで有名だ。髪はずっと明るい色だったし、カッコよくてモテるから派手に遊んでいてやんちゃという表現になった。いつも一緒にいる仲のいい同学年の友人たちも先輩と同じようにノリが良くて派手な印象の人たちだった。
先輩は背も高くて、バスケサークルの部長。バスケサークルは真面目にバスケをやっているみたいだけど、飲みサークル並にお酒を飲むので有名だ。前に新歓時期に花見と称して大学キャンパスの裏庭で宴会をしていた。その中でも一番エグい飲み方をしている成撮先輩を見てめちゃくちゃ引いた。そんな印象が強すぎて、先輩のことはものすごくチャラく見える。
チャラくても、それを超えるくらいにカッコいいので、そんな先輩に、可愛いとか付き合ってとか言われて落ちない女の子はいない。私は落ちないけど。
こーんなイケメンが私みたいなモブ女に声をかけてくることが何かの間違いなわけで。何がそんなに興味をそそられたのか、全く心当たりがなかった。
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