やんちゃ系イケメンに執着されて他に彼氏作ったように思わせたらブチ切れられた

ノルジャン

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「みうちゃん今日デートしよ。どこ行きたい?」
「先輩サークルいかないんですか?」
「テスト期間中はいかないよ」

 ――だったらテスト勉強しなさいよ!二年の私もテストだよ。

「勉強しなくていいんですか?」
「だいじょーぶ!俺頭いーから」

 そう言ってヘラヘラと笑う。そうだった。この人いつもテストは高得点だった。いるよね、講義受けてるだけで他に何も勉強しなくても理解しちゃう天才。先輩に関しては講義をサボっても寝ててもテストで高い点数取ってるって聞いた。でもサボりまくって科目によっては高得点でも出席日数足りなくて単位落としたりしてるって。同じ講義をとってるキャピキャピとした女子たちがそんな話をしているのが耳に入ってきた。
 先輩はいつもサークルのバスケをしてるか、わらわらと先輩の周りに集まっている人たちと楽しそうにはしゃいでふざけ合っている所しか見たことがない。

「カラオケいこーよ!俺結構歌上手いよ?」
「へー。じゃあ先輩一人で行ってきて下さい。私はテスト勉強しなきゃなんで」
「一人でとかそんな意地悪言わないでよー。みうちゃんが勉強するなら俺もする」
「付き合って頂かなくて結構です。勉強は一人でするものですから」
「一緒にした方がはかどるって。わかんない所教えてあげるから、ね?」

 ニコニコとタレ目がこちらを向いている。黒マスクは顎部分に下げられていて、綺麗に整った顔が隠れることなく見えていた。羨ましいほどの高い鼻筋。自信に溢れた強気な口元は優しげなタレ目の目尻で中和されている。明るい金髪だった髪はいつ染めたのか今は真っ黒に黒染めされている。バスケで鍛えられたのか盛り上がったしなやかな筋肉が乗っている。手足もなっがいな。

 女子たちは先輩を見つけると途端にキャーキャーと姦しい。マスクで顔が半分隠れていても先輩のイケメンは隠せないらしい。最初遠巻きにしていた女性陣も、先輩のニコニコとしている目元だけで落ちてしまった。目線だけのキラースマイルだ。
 
 あとよく私にもやってくるのは、マスクを取り去ってニコニコと笑顔で距離を詰めてする壁ドン。しかも両手でだ。

 ――もう女の子はそれでイチコロだよ。手当たり次第やってるんだろうね。最低。

 女の子にモテると、その嫉妬から男性には疎まれるのはよくある話し。でも先輩は男性にも好かれているみたい。同学年の男子たちはみんな先輩に憧れている。カッコよくてモテて頭も良くてスポーツも出来る、なんて完璧だもんね。そりゃ憧れる。

 先輩はいつもキャンパスで見かけると、派手な見た目のチャラ男っぽい人たちとつるんで歩いている。先輩は一人黒髪で、明るい髪色のチャラ男たちに囲まれてると逆に目立つ。しかもいつも黒マスクだし。
 
 ただでさえ日頃声をかけられまくっているのに、そんな先輩に言い寄られているとこれ以上周りに知られたら、どうなるかわかったもんじゃない。
 ぐいぐい来るしつこい先輩に、これ以上付き合っていたくない。

「家で一人で勉強するので、もう帰ります」
「あ、待ってよ、みうちゃん。俺たち付き合ってるんだから、もっとちゃんと二人きりで過ごしたいな」

 目の前に立ち塞がり、通路を阻まれてしまった。
 
「私、先輩に付き合ってなんて言ってませんし、先輩に言われてもないです」
「ん?うん。そうだね?」
「え?……だから、私たち付き合ってないです」
「付き合ってるよ?俺たち」
「はぁ?どうしてそうなるんですか?」

 先輩の思考回路がわからない。どこでどうやって付き合っていることになるんだ、一体。

「だって、みうちゃんのこと好きになったから」

 いつもの笑顔が先輩の顔に張り付いている。

「俺が好きになった瞬間からみうちゃんは俺のなの」

 わかったー?と小首を傾げて私を諭す。蜂蜜よりも甘い、先輩の声が耳元でねっとりと私の中に入って絡みついてくる。

 いつもと変わらないのにその先輩の様子の中に仄暗いものを感じて、寒気で背筋がゾクっとした。

 言ってることが理解できないし、話が通じない。先輩はヤバい人かもしれない。イケメンだけど頭はおかしいのかも……。
 自分の中の危険察知信号がものすごい音を立てて警報を鳴らし始めた。
 じりじりと後ずさるけれど、いつの間にか後ろは壁で、前には先輩がいて追い詰められていた。ニヤリと口角を上げてサディスティックに笑う先輩。

「ねぇ、みうちゃ……」

 先輩が何か言い終わる前に姦しい女子集団が「きゃー!綾人センパイだぁ!」と前方から声が聞こえた。
 先輩が後ろを振り返ってその集団を確かめたその瞬間に今だ!と隙間からするりと逃げた。

「あ、待ってよ、みうちゃーん!」
 
 後ろで何か言っていたがそのまま廊下を進んで行った。しばらくすると女の子の高い声が廊下の先まで響いてきた。大方先輩が女の子たちに見つかって囲まれてるいるのだろう。いつものことだ。

 私は振り向きもせずに足早にその場をさった。


 
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