やんちゃ系イケメンに執着されて他に彼氏作ったように思わせたらブチ切れられた

ノルジャン

文字の大きさ
2 / 18

1-2

しおりを挟む
「みうちゃん今日デートしよ。どこ行きたい?」
「先輩サークルいかないんですか?」
「テスト期間中はいかないよ」

 ――だったらテスト勉強しなさいよ!二年の私もテストだよ。

「勉強しなくていいんですか?」
「だいじょーぶ!俺頭いーから」

 そう言ってヘラヘラと笑う。そうだった。この人いつもテストは高得点だった。いるよね、講義受けてるだけで他に何も勉強しなくても理解しちゃう天才。先輩に関しては講義をサボっても寝ててもテストで高い点数取ってるって聞いた。でもサボりまくって科目によっては高得点でも出席日数足りなくて単位落としたりしてるって。同じ講義をとってるキャピキャピとした女子たちがそんな話をしているのが耳に入ってきた。
 先輩はいつもサークルのバスケをしてるか、わらわらと先輩の周りに集まっている人たちと楽しそうにはしゃいでふざけ合っている所しか見たことがない。

「カラオケいこーよ!俺結構歌上手いよ?」
「へー。じゃあ先輩一人で行ってきて下さい。私はテスト勉強しなきゃなんで」
「一人でとかそんな意地悪言わないでよー。みうちゃんが勉強するなら俺もする」
「付き合って頂かなくて結構です。勉強は一人でするものですから」
「一緒にした方がはかどるって。わかんない所教えてあげるから、ね?」

 ニコニコとタレ目がこちらを向いている。黒マスクは顎部分に下げられていて、綺麗に整った顔が隠れることなく見えていた。羨ましいほどの高い鼻筋。自信に溢れた強気な口元は優しげなタレ目の目尻で中和されている。明るい金髪だった髪はいつ染めたのか今は真っ黒に黒染めされている。バスケで鍛えられたのか盛り上がったしなやかな筋肉が乗っている。手足もなっがいな。

 女子たちは先輩を見つけると途端にキャーキャーと姦しい。マスクで顔が半分隠れていても先輩のイケメンは隠せないらしい。最初遠巻きにしていた女性陣も、先輩のニコニコとしている目元だけで落ちてしまった。目線だけのキラースマイルだ。
 
 あとよく私にもやってくるのは、マスクを取り去ってニコニコと笑顔で距離を詰めてする壁ドン。しかも両手でだ。

 ――もう女の子はそれでイチコロだよ。手当たり次第やってるんだろうね。最低。

 女の子にモテると、その嫉妬から男性には疎まれるのはよくある話し。でも先輩は男性にも好かれているみたい。同学年の男子たちはみんな先輩に憧れている。カッコよくてモテて頭も良くてスポーツも出来る、なんて完璧だもんね。そりゃ憧れる。

 先輩はいつもキャンパスで見かけると、派手な見た目のチャラ男っぽい人たちとつるんで歩いている。先輩は一人黒髪で、明るい髪色のチャラ男たちに囲まれてると逆に目立つ。しかもいつも黒マスクだし。
 
 ただでさえ日頃声をかけられまくっているのに、そんな先輩に言い寄られているとこれ以上周りに知られたら、どうなるかわかったもんじゃない。
 ぐいぐい来るしつこい先輩に、これ以上付き合っていたくない。

「家で一人で勉強するので、もう帰ります」
「あ、待ってよ、みうちゃん。俺たち付き合ってるんだから、もっとちゃんと二人きりで過ごしたいな」

 目の前に立ち塞がり、通路を阻まれてしまった。
 
「私、先輩に付き合ってなんて言ってませんし、先輩に言われてもないです」
「ん?うん。そうだね?」
「え?……だから、私たち付き合ってないです」
「付き合ってるよ?俺たち」
「はぁ?どうしてそうなるんですか?」

 先輩の思考回路がわからない。どこでどうやって付き合っていることになるんだ、一体。

「だって、みうちゃんのこと好きになったから」

 いつもの笑顔が先輩の顔に張り付いている。

「俺が好きになった瞬間からみうちゃんは俺のなの」

 わかったー?と小首を傾げて私を諭す。蜂蜜よりも甘い、先輩の声が耳元でねっとりと私の中に入って絡みついてくる。

 いつもと変わらないのにその先輩の様子の中に仄暗いものを感じて、寒気で背筋がゾクっとした。

 言ってることが理解できないし、話が通じない。先輩はヤバい人かもしれない。イケメンだけど頭はおかしいのかも……。
 自分の中の危険察知信号がものすごい音を立てて警報を鳴らし始めた。
 じりじりと後ずさるけれど、いつの間にか後ろは壁で、前には先輩がいて追い詰められていた。ニヤリと口角を上げてサディスティックに笑う先輩。

「ねぇ、みうちゃ……」

 先輩が何か言い終わる前に姦しい女子集団が「きゃー!綾人センパイだぁ!」と前方から声が聞こえた。
 先輩が後ろを振り返ってその集団を確かめたその瞬間に今だ!と隙間からするりと逃げた。

「あ、待ってよ、みうちゃーん!」
 
 後ろで何か言っていたがそのまま廊下を進んで行った。しばらくすると女の子の高い声が廊下の先まで響いてきた。大方先輩が女の子たちに見つかって囲まれてるいるのだろう。いつものことだ。

 私は振り向きもせずに足早にその場をさった。


 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】大学で人気の爽やかイケメンはヤンデレ気味のストーカーでした

あさリ23
恋愛
大学で人気の爽やかイケメンはなぜか私によく話しかけてくる。 しまいにはバイト先の常連になってるし、専属になって欲しいとお金をチラつかせて誘ってきた。 お金が欲しくて考えなしに了承したのが、最後。 私は用意されていた蜘蛛の糸にまんまと引っかかった。 【この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません】 ーーーーー 小説家になろうで投稿している短編です。あちらでブックマークが多かった作品をこちらで投稿しました。 内容は題名通りなのですが、作者的にもヒーローがやっちゃいけない一線を超えてんなぁと思っています。 ヤンデレ?サイコ?イケメンでも怖いよ。が 作者の感想です|ω・`) また場面で名前が変わるので気を付けてください

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

鳴宮鶉子
恋愛
辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

×一夜の過ち→◎毎晩大正解!

名乃坂
恋愛
一夜の過ちを犯した相手が不幸にもたまたまヤンデレストーカー男だったヒロインのお話です。

処理中です...