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◇
今日のテストが終わった。空欄ばかりで解けない問題ばかり、悲惨だった。明日までテスト期間だ。ヤバい。散々な結果になりそう。先輩のプリントを拾ってから今日までずっと先輩に付き纏われていた。自分ではそんなに気にしていないと思っていたのに、結構精神的にもきていたのかも。勉強し出すと中々集中出来なかったし。呪いのプリントを拾ってしまったんだ。
――私の平穏な日々を返して~!
先輩が現れなければ、こんなにテスト勉強に集中出来ないなんてこともなかったはず。
いつもテストでは平均よりは上で、7割、良ければ8割くらい取っていた。それで出席日数も合わせれば単位は取れていたのに。なのに今回はテストの結果はボロボロ。
科目によっては補修ののち再テストで9割取れば単位をくれる教授もいるけど、その時間分サークル活動の時間が削られる。
私は漫画サークルに入っていて、そこはゆるゆると活動している。幽霊部員やいつの間にか抜けていく人も多い中で、私は一年生から在籍し、サークルへの出席率もいい方だ。絵を描くのは小さい頃から好きだった。アニメや漫画のキャラクターなんかを描く人が多いけど、ホント自分の好きなものを好きなようにみんな描いている。何か描きたくなったら描く。自分の好きに、自由にしていいので楽だった。静かに一人、絵を描いている時間が落ち着くし、サークルの部員と読んだ漫画について語り合ったり、趣味の合う部員たちとアニメ映画を観に行ったりする時間が心地いい。
けれどそんな私の癒しの時間は削られてしまっている。どれもこれも、ぜーんぶあの成撮先輩のせいだ……。
ここにはいない先輩の顔を思い出し、ムカムカとした気持ちで頭の中に出てきた先輩をポコポコと殴ってやった。
脳内リベンジが終わって、はぁ、と大きなため息を吐いた。少しも気分が晴れない。
今日は気分を変えて、大学の図書館で勉強しようかな。
図書館へと人通りの割と少ない渡り廊下を歩いていると、後ろから声をかけられた。
「みうちゃんみぃーっけ!」
わざとらしく高い声を出して私の名前を呼ぶ。ぎくり、と私の体が強張る。後ろを振り向くといた。
「成撮先輩……」
また今日もですか。もういい加減にして欲しい。
「綾人だってばー。みうちゃんどこ行くの?帰るなら一緒に帰ろ?」
「図書館です」
「勉強?だったら俺も一緒にするよー。みうちゃんと一緒に勉強したいなー」
時々語尾が間延びして上がるのが癪に障る。ムカムカが再発してきてしまった。
「先輩のせいで勉強に集中出来ないんですっ!もういい加減にして下さい」
少し声を荒げてしまった。先輩はちょっとだけびっくりしたようだった。けれど、すぐにいつもの調子に戻った。
「俺のこと意識してくれてんの?マジうれしー!」
黒マスクを下げて照れたように染まった頬をみせ、いつもより上機嫌だ。背の高い先輩に上から見下ろされる。
そんな反応に舌打ちしたい気持ちになるのを抑えて反論する。
なぜこうもポジティブにとらえることができるのか。そのポジティブさ私に分けて欲しいくらい。
「そんなんじゃありません。迷惑してるんです」
「そんなこと言って、ホントは俺のこと大好きだよね?ツンツンしてかわいー。でもたまにはデレてくれないとさ俺悲しーなー」
「ツンとかデレとかじゃありせんから。普通に嫌がってるんです」
冷たく毅然とした態度で接していてもこの通り。どこをどうとったら私のこの態度が先輩のことを大好きだと思うのか理解に苦しむ。そんな態度微塵も出してないのに。
先輩をイケメンだと思ったことはあるが、他の女子みたいに、頬を染めたり気になってますアピールで目線を送ったりなんかしたことないのに。
プリントを拾ってあげた時だって眉毛が気になって顔を隠していたくらいだ。あの後女子トイレの鏡で確認したら眉毛はちゃんとあった。たまに汗とか手でこすっちゃったりして片眉が短くなってる時とかあるから。
仲のいい学科の子たちにこそっと指摘された時には、あるあるだよーと慰めて貰い、メイクポーチを借りてメイク直しをした。
先輩は手を目の下にやって「えーん、悲しー」とか言って泣き真似をしている。そんな子どもみたいなことをしててもやはりカッコいい人はカッコいい。だけどそんな仕草に私は騙されたりなんかしない。チラチラとこちらを伺う目と目が合った。じっと睨みつけると、その瞳の奥の熱が見えてくるようだった。
その熱を冷ましてやるかのような冷たい目で先輩を見やってそして目を逸らした。無視してこの場を立ち去ってしまおうかと思った。けれど、渡り廊下には人気はなく、その周りにも誰もいない。このまま振り切ろうとしてもきっと無駄だろう。
どれだけ無視しても無愛想に返しても、しつこくしつこく話しかけてくるしついてくる。
「みうちゃん、彼氏の俺が勉強教えてあげるから」
「彼氏じゃないです。付き合ってません」
バサリと間髪入れずに返答する。
「照れちゃってかわいいなぁ、ホントみうちゃんは可愛い」
今日のテストが終わった。空欄ばかりで解けない問題ばかり、悲惨だった。明日までテスト期間だ。ヤバい。散々な結果になりそう。先輩のプリントを拾ってから今日までずっと先輩に付き纏われていた。自分ではそんなに気にしていないと思っていたのに、結構精神的にもきていたのかも。勉強し出すと中々集中出来なかったし。呪いのプリントを拾ってしまったんだ。
――私の平穏な日々を返して~!
先輩が現れなければ、こんなにテスト勉強に集中出来ないなんてこともなかったはず。
いつもテストでは平均よりは上で、7割、良ければ8割くらい取っていた。それで出席日数も合わせれば単位は取れていたのに。なのに今回はテストの結果はボロボロ。
科目によっては補修ののち再テストで9割取れば単位をくれる教授もいるけど、その時間分サークル活動の時間が削られる。
私は漫画サークルに入っていて、そこはゆるゆると活動している。幽霊部員やいつの間にか抜けていく人も多い中で、私は一年生から在籍し、サークルへの出席率もいい方だ。絵を描くのは小さい頃から好きだった。アニメや漫画のキャラクターなんかを描く人が多いけど、ホント自分の好きなものを好きなようにみんな描いている。何か描きたくなったら描く。自分の好きに、自由にしていいので楽だった。静かに一人、絵を描いている時間が落ち着くし、サークルの部員と読んだ漫画について語り合ったり、趣味の合う部員たちとアニメ映画を観に行ったりする時間が心地いい。
けれどそんな私の癒しの時間は削られてしまっている。どれもこれも、ぜーんぶあの成撮先輩のせいだ……。
ここにはいない先輩の顔を思い出し、ムカムカとした気持ちで頭の中に出てきた先輩をポコポコと殴ってやった。
脳内リベンジが終わって、はぁ、と大きなため息を吐いた。少しも気分が晴れない。
今日は気分を変えて、大学の図書館で勉強しようかな。
図書館へと人通りの割と少ない渡り廊下を歩いていると、後ろから声をかけられた。
「みうちゃんみぃーっけ!」
わざとらしく高い声を出して私の名前を呼ぶ。ぎくり、と私の体が強張る。後ろを振り向くといた。
「成撮先輩……」
また今日もですか。もういい加減にして欲しい。
「綾人だってばー。みうちゃんどこ行くの?帰るなら一緒に帰ろ?」
「図書館です」
「勉強?だったら俺も一緒にするよー。みうちゃんと一緒に勉強したいなー」
時々語尾が間延びして上がるのが癪に障る。ムカムカが再発してきてしまった。
「先輩のせいで勉強に集中出来ないんですっ!もういい加減にして下さい」
少し声を荒げてしまった。先輩はちょっとだけびっくりしたようだった。けれど、すぐにいつもの調子に戻った。
「俺のこと意識してくれてんの?マジうれしー!」
黒マスクを下げて照れたように染まった頬をみせ、いつもより上機嫌だ。背の高い先輩に上から見下ろされる。
そんな反応に舌打ちしたい気持ちになるのを抑えて反論する。
なぜこうもポジティブにとらえることができるのか。そのポジティブさ私に分けて欲しいくらい。
「そんなんじゃありません。迷惑してるんです」
「そんなこと言って、ホントは俺のこと大好きだよね?ツンツンしてかわいー。でもたまにはデレてくれないとさ俺悲しーなー」
「ツンとかデレとかじゃありせんから。普通に嫌がってるんです」
冷たく毅然とした態度で接していてもこの通り。どこをどうとったら私のこの態度が先輩のことを大好きだと思うのか理解に苦しむ。そんな態度微塵も出してないのに。
先輩をイケメンだと思ったことはあるが、他の女子みたいに、頬を染めたり気になってますアピールで目線を送ったりなんかしたことないのに。
プリントを拾ってあげた時だって眉毛が気になって顔を隠していたくらいだ。あの後女子トイレの鏡で確認したら眉毛はちゃんとあった。たまに汗とか手でこすっちゃったりして片眉が短くなってる時とかあるから。
仲のいい学科の子たちにこそっと指摘された時には、あるあるだよーと慰めて貰い、メイクポーチを借りてメイク直しをした。
先輩は手を目の下にやって「えーん、悲しー」とか言って泣き真似をしている。そんな子どもみたいなことをしててもやはりカッコいい人はカッコいい。だけどそんな仕草に私は騙されたりなんかしない。チラチラとこちらを伺う目と目が合った。じっと睨みつけると、その瞳の奥の熱が見えてくるようだった。
その熱を冷ましてやるかのような冷たい目で先輩を見やってそして目を逸らした。無視してこの場を立ち去ってしまおうかと思った。けれど、渡り廊下には人気はなく、その周りにも誰もいない。このまま振り切ろうとしてもきっと無駄だろう。
どれだけ無視しても無愛想に返しても、しつこくしつこく話しかけてくるしついてくる。
「みうちゃん、彼氏の俺が勉強教えてあげるから」
「彼氏じゃないです。付き合ってません」
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