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私に向ける笑顔も視線にも、いつも熱が篭っている。本当に私のことを好きだと勘違いしそうになるくらいに熱い眼差し。甘い声色。そんな甘ったるい声で耳元で囁かれ続けたら、思考はとろとろととろけ出してしまいそうだ。
だが、私は平凡モブではあるが故にそこのところはわきまえている。わかっている。こんな芸能人みたいな美形が私みたいなモブモブした女の子を普通は口説きません!
どうせ私の反応をからかってるんだろう。いつも他の女の子たちにもしてるんだ。彼女たちみたいにすぐに靡かないから面白がってる。だからこんなに付き纏ってくるだけだ。
――もう少ししたらきっと飽きるから。
そうやって何回目かわからないくらい自分に言い聞かせた。だって私はそんなしがみついて縋りつきたくなるほどの美人でも、付き纏ってベタベタ可愛がりたくなるような性格でもない。
早く飽きてくれよと、そして平穏な日々を返してくれとの思いを込めてキッ睨みつけたがそれでも先輩には効かない。その私からの鋭い視線を、みうちゃんと目が合った!と嬉しそうに大きく歯を見せて笑いかけてくる。
いつもイケメンでカッコいいけど、破顔する先輩の顔はすごく可愛いことを知った。
「ほら、図書館いこ」
「あ、ちょっと先輩!」
距離を詰められることはよくあるが、あまり直接触れてくることはなかった。けれど今日は肩がっしりと腕を回されて図書館へと連行された。有無を言わさないその強引さと力強さに、引きずられるように先輩と肩を並べて歩いた。
図書館の目立たない隅の方の席に座った。わざわざご丁寧に「みうちゃん、どうぞ」と、奥の方の椅子を引いてくれた。今どきの男子がこんな欧米人みたいなレディーファーストするんだ!とちょっと感動した。
女の子扱いされるとなんだか気恥ずかしい思いになって、重たいお尻を気持ち的にはちょこんと椅子の上に乗せた。
ちょっとだけ先輩への印象が良いものに変わっていく。
引っ張り出されて連れてこられた図書館は大学内併設の図書館ではなく、市内の図書館だった。
新しく建てられた図書館はおしゃれなカフェみたいな雰囲気が出ている。私はこの市内出身で、今も実家に住んでいるので、できた当初に一度だけ様子を見にきたことがあった。
建てたばかりの時は中の様子を見にくる人たちで結構賑わっていたが、それも今は落ち着いている。
少し大学からは離れているため、現在利用している人で同じ大学の生徒らしき人は少なかった。
「この図書館結構穴場なんだよね~。静かに勉強出来るからよく来るんだ。学校の図書館はテスト期間中は特にだけどそれ以外の時もみんな利用するからいつも人すごいし」
「成撮先輩も図書館利用するんですか?てかそもそも勉強とかするんですね」
「俺だって勉強するよ~。あんま人に頑張っちゃってるところ見られたくないから隠してんの」
先輩でも勉強するんだ。完全に天才肌の人かと思ってた。なんでもそつなくこなせて、それゆえ時間を持て余してるから遊び呆けているのかと思ったら、結構陰で頑張ってるんだ。
少しだけ親近感が湧いた。
「でも、みうちゃんにはトクベツに見せちゃう!彼女だからね」
「だから彼女じゃないですってば」
ふざけたことを言ってくるのでわいた親近感もすぐに引っ込んでいった。
「みうちゃん明日のテスト教科なに?」
「明日は英語と人文学です」
「俺どっちも得意だから教えてあげるよー」
あなたはどっちもっていうか全科目余裕でしょ。前回のテストでは全科目高得点を叩き出したと、学部の女の子たちが騒いでるのが聞こえた。それに、就職もインターン先の大手企業に気に入られて、是非うちに入ってくれなんて言われているらしい。もう就職先に目処が立っているなんて羨ましい。
カチカチとシャーペンの芯を出す。問題に取り掛かろうと腕を動かすと、隣に座っている先輩との距離が近いのに気づいた。のに、更に椅子をガタッと動かして一歩ほど距離が近づける。
肩が当たるというよりも密着して重なり合うほどの距離感に驚いて、ボキッとシャーペンの芯が折れた。
「先輩近すぎます、離れて下さい」
「じゃあまずは英語からやろー。テスト範囲どこ?」
――自分に都合の悪いことは無視ですか!
英語の教科書を開いてテスト範囲を聞かれたので無言で指でさし示して答えた。
「ここの文法、この教科書の説明だとわかりづらいよねぇ」
そう言って苦手な英語文法を解説してくれた。わかりやすく簡単な言葉で説明してくれるから、めっちゃわかりやすっ。教授の説明より丁寧だ。
一人で勉強する時よりもサクサク進む。頭いい人って教えるのも上手いんだ。
つまずいてもすぐにわからない所を教えてくれて、答えに導いてくれる。
もちろん自分の勉強も進めながらだ。私とは全然違う科目を勉強しながら、私の英語を教えてて頭がこんがらがってきたりしないのかな。
「英語の教授って宮?」
「そうです。宮教授です」
「あいつねー、マジで性格捻じ曲がってるから。出してくる問題も癖のあるやつ出してくるんだよなぁ」
「そうなんですね」
今年から初めて英語の担当教授になったが、確かに宮教授の英語の講義はなかなかに見ないほどスパルタだ。暴力はないが、気に入らない、質問に答えられらない生徒は問答無用で講義室の外に立たせるし、スマートフォンなどの電子機器音が少しでも鳴れば容赦なくその生徒を追い出す。下手をすればそのまま単位を落とされる事だってある。
私はただひたすら講義中気配を消している。宮教授にあてられないためだ。
でもたまに機嫌が良い時は間違えても許してくれる。
私は気配を消すことに長けているらしく、あまりあたらない。席順に当てられている時も、次私の番くる~と思ってもそこから遠い席の子が当たったりする事がよくある。
英語は必修科目だし、宮教授は私たち学科の主任教授のため、うちのクラスのやんちゃな子たちもみんな教授の言うことは聞いている。ザ・ヤンチャ代表の先輩たちも、宮教授の言うことは聞いているんだろうか。ちょっとだけ気になってしまった。聞かないけど。
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