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しおりを挟む彼氏の振りをして欲しいと、幼馴染に無理を承知でお願いした。違う大学に通っているからバレないだろうし、通学路も反対で万が一鉢合わせることもない。……だろう。
「写真だけ!ツーショット写真だけ撮って欲しいの!彼氏っぽくさ。ね、お願い!一生のお願い!」
必死に頼み込み、一生のお願いまで使うその尋常じゃない私の様子を訝しげに見つめてくる幼馴染。
流石に、明日先輩に直接会ってもらって「この人と付き合ってるから付き纏わないでください」と幼馴染に彼氏の振りをしてもらうのは、先輩の反応がどうなるかちょっと怖い。
「えぇ、なにそれ……お前ヤバいことに俺を巻き込もうとするなよ~」
「大丈夫だから、写真だけだしヤバいことになんかならないよ」
多分……。
大丈夫、だよね?
「まぁ、写真くらいいいけど……ほんとに大丈夫だよな?」
「大丈夫だって!」
お互いお風呂も済ませた部屋着姿。家が近いのでゆるっとした部屋着でも平気で家を行き来できる。
肩を寄せてる写真やちょっと腕に掴まっている写真などを何枚か撮ってみた。
よくよく見れば、二人とも目が泳いで表情は硬いし、お互いに触れる腕が緊張でカクカクとしている。
ちょっとぎこちない感じだけど、一瞬見せるだけだし、なんとか誤魔化せるだろう。
私はそう思った。そう自分に言い聞かせて思い込ませた。
これでいい。
これを見せたら別れられるでしょ。
あれ以上体を許して先輩のしたい放題されたらもう私おかしくなる。ほんっとうに怖かった。自分が自分じゃないみたい。自分の体をコントロール出来ないなんて恐怖以外のなにものでもない。
先輩に体を作り変えられていっているような、そんな感覚になって何も考えられなくなっていった。
次先輩のアパートに行って、ベッドへ連れて行かれたら確実に最後まで抱かれてしまう。本当にそうなる前に別れてやる。
もうすでに他に彼氏がいるってなったら、流石の先輩も付き纏わなくなるはず。
ドラマや漫画でも「私あなたと別に好きな人ができたの」とか言って別れてるシーンはよくあるし。
きっと大丈夫。
彼氏との偽画像を先輩に見せて諦めさせる。これが、短い時間で考えぬいた、手っ取り早く成撮先輩と離れる方法だった。
すぐに次の日はやってきてしまい、先輩は朝から宣言通りに私の家まで迎えにきた。
「おはようみうちゃん」
「……おはよう、ございます」
にまにまと見たことがないくらい上機嫌な先輩の様子に、いざ昨日幼馴染と撮った写真を見せようとしても、どう切り出したらいいのか思い切れなかった。そうしてもだもだしているうちに手を引かれてずるずると先輩の家まで連れて行かれてしまった。
玄関に入った途端溺れそうなくらいの甘いキスをされ、ふわふわとした頭で先輩の部屋に連れて行かれた。ベッドへと誘導され、体を引かれる。そこでハッとした。
やっぱり今日は最後までするんだ……。
その前に話をしようとやっと切り出した。
焦っていた私はこんな馬鹿な計画を実行してしまったんだ。普通に考えればこんなの上手く行くはずないってわかるのに。浅はかな私は完全に対応を間違えてしまった。
「……先輩、もうやめませんか?こんなこと。賭けしてるんですよね?みんなで」
「は?なに?どゆこと?」
「私と先輩が、いつ……えっちするのかみんなで賭けてるんですよね?この前先輩のお友達がそういってるの聞こえました。もう、やめてください、そういうの。それに……私実は、彼氏いるんです。だから、先輩とそういうことはできません。ほら、これ見てください」
「……え?」
スマホを取り出して先輩に男との写真を見せつけた。
昨日幼馴染に彼氏のフリをお願いして撮った偽の彼氏とのツーショット写真だ。
写真を見た先輩は、私の見せた画像を呆然と見つめて言葉もないようだった。
「だから、私先輩とはお付き合い出来ないし、もう帰……」
「黙れよ」
どこから出したんだろう、どこまでも低い冷え切った声。その声に私は一気に震えが上った。目があってしまい、金縛りにあったかのように動けなくなり、それ以上は喉に言葉引っかかって声が出なくなった。見つめられる先輩の目の奥は残酷なまでに冷たく光る。
そこで私の視界は反転した。
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