俺は勇者になりたくて今日もガチャを回し続ける。

横尾楓

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第4章

夜空を舞う花火。

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日も暮れてきたので
俺は稽古をしに伯父の屋敷へと向かう。

「はなび今日はみれないのかぁ...」

カレンがボソッと呟いた。
終わるのにいつも大体2~3時間はかかるし
お祭り会場からは少し離れた場所にあるから
無理だと思ったのだろう。

「大丈夫。ちゃんと考えているから」

まだ彼女には内緒だけれど
俺がこの時間に稽古を入れたのには理由わけがある。

「やあフィオ」
「こんばんはレオナルド。カレンさん」
「今日はもう遅いので戦術の勉強にしましょうか」

(げぇ...戦術の勉強かぁ...)
昔から筆記より実技タイプだから本当苦手。

「この前の復習ですが、炎タイプの敵に対してはー」

(…これは覚えているぞっ)
「ウォーターシールド!」

「いえ、“アイスシールドの方が効果的” でしたよね?」

ダメだ。フィオに呆れられちゃう...
魔術実技の方がまだマシだ。

この後徹底的に基礎から戦術を叩き込まれ
ひさしぶりに学生気分を味わった。

チーンッ!
「花火もそろそろですし、ここまでにしましょうか」

さすがフィオ。
俺の相手をしながらもオーブンでパイを焼いていた。
美味しそうな匂いが立ち込めている。
俺達はそれを持って三階のテラスに移動。

感謝祭の花火は会場から観やすいようにと
少し離れた場所から花火を上げる。
ちょうどそれが伯父の屋敷との間に位置するので
西側のテラスは最高な特等席なのである。

「さあ、そろそろ始まるんじゃぁ~ないかな?」

伯父が屋敷の電気を全て消した。
カレンは今か今かとその方向を見つめている。
遠くに感謝祭の光がキラキラ光って綺麗。

始まった。
シュン....ヒュールルルルルル....ドカンッ!
“ウグァワルウゴゴオオオオオォォ!”

特大な花火が打ち上がったかと思うと
すかさずその円の中を火竜が突き抜けて大空を舞う。

竜と言っても今のは魔法で放たれたものである。
代々えん魔術の名門ウィンザー家に受け継がれてきた
火薬式の花火と魔法とを組み合わせた伝統芸なのだ。

「ウィンザー!」「ウィーンザー!」

見事に決まった時には
この合いの手を入れるのがお約束。
カレンは夢中で瞬きするのも忘れて観ている。

この後三十分ほど途切れることなく花火は続いた。
終盤の火竜と火ノ鳥の空中戦は凄い迫力だったなぁ...
後でログに写真を上げとこうっと。

「レオナルド、花火も終わったことだし」
「ひさしぶりに勝負でもしようじゃあないかぁ~!」

年代物の葡萄酒を開けて上機嫌な伯父が絡んできた。
勝負とはもちろんガチャの話なのだが
昨日のボーナス分を全て石と交換していた俺は
さっそくその勝負に乗ることにした。
今日は感謝祭なのだから。(...と言い訳しておく)

「三回勝負だ。引き分けは無しで二勝した方が勝ち」
「わかってる。お先にどうぞ」

そうは言っても手強い相手だ。
なんてったってこの伯父は幸運値ハンパないからね。

「じゃあお先に...そうれっと!」

フォゥン...シュン...シュバーン...ギュイギィギィ...
“親愛なる君への指輪”

俺のターン。
シュウィン...シャラーン...シャーラーラーラァ~ン♪
“魅惑のマンドリン”

...俺、戦術より楽器の方が苦手だと思う。

「これはレオナルドの勝ちですね。年代物ですから」

とりあえず一勝。
弾けないから速攻で返却しに行くけど。

「腕を上げたなレオナルド。中々良い物だよ」
「こっちの指輪は守護魔法がかけられているようだ」
「恋人に贈った物なんじゃあないかなぁ~?」

そう言って自分の左手薬指に指輪をはめる。
「あれ?抜けないぞぉ...ムゥ...ふんがぁぁぁ!!!」

呪われていたのだろうか?
必死で引っ張るも後の祭りである。

「恐らく恨みが込められていたのかと...」
「別れたのかなー?」「そうかもね」

外れないだけで今のところ害はなさそうだから
審判フィオの判断で勝負は続行されることになった。
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