俺は勇者になりたくて今日もガチャを回し続ける。

横尾楓

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第4章

ジビエのミートパイ。

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実家までの道程は長い。
まずは鉄道に揺られて三時間。
そこから馬車で二時間と徒歩で三十分森を歩く。
長い休みが無いと中々帰る気になれない。

カレンは鉄道に乗るのも初めてだといい
窓の外を眺めてはキャッキャとはしゃいでいる。

「みてー!ボンゴリの群れがいるー!」
「この辺りは放牧してるからね」

一昔前は石炭で走っていた鉄道も
今では魔力を使っているから乗り心地はとても良い。

「あー!ヒクイトリが戦ってるよー」
「はいはい。...えっ?ヒクイトリ!?」

名前に“ヒ”って付いているけど水属性の魔獣。
炎を飲み込んでしまうからその名が付いたらしいが
必殺技は鬼キック。

「綺麗だしカッコいいね。思ってたより凄く大きい」
「ヒクイトリはおいしいのかなぁ~?」

いや、アイツの射程圏内まで近づいてはいけない。
喧嘩を売ると速攻で返り討ちに遭い
ミンチにされるのだと某百科事典に載っていた。
慌てず騒がず立ち去るのが懸命だ。

俺は到着まで少し眠ろうと思っていたけれど
結局カレンのサファリガイドとして付き合わされた。

「到着ぅ~!レオ、なんか疲れてる?」
「...いや、大丈夫」

次は路線馬車に乗って“森の手前公園”で下車。
その後はただひたすらに森の中を歩く。
真っ直ぐずっと歩けば...
歩けば...歩け...駄目だ。もう歩けない。

「ちょっと休もうか...」

へたれこんだ。
だって荷物が多いんだもん。

「あそこに家があるよー?行ってみる?」
(本当だ...家なんてあったかな)

近付いてみると家ではなく、お洒落なカフェだった。
ギィ...チャリン...チャリン...

「いらっしゃいま...あ、レオナルド」
「.....ん?えぇと...(この美人誰だっけ...)」

「ヒドイなぁ...こうしたら分かる?」

長い髪を手で後ろに纏めて隠す。
あ、こいつは...

「リリィーだっ!」
「もう。最初から気付いてよね」

すっかり女性らしくなってて気付かなかった。
幼馴染のリリィー。といっても二つ年上。

「上級院は?まだ卒業じゃなかったよね」
「実は...辞めちゃった(テヘ)」

俺の絶句する顔を見て笑う彼女。
中退は悪い冗談。今は休みの期間でバイト中らしい。

頭が良くて運動神経も抜群。
俺と違って偏りもなく優秀な彼女は
冒険者ではなく弁護士の道を進もうとしている。

「良かった。ところでこのカフェは何?」
「最近山ブームでしょ。ついにこの辺りにもね」

確かに景色は良いし、時期になると
この山は鮮やかな黄色に染まる。
住んでた俺達には当たり前だけれど
都会の人には珍しいのだろう。

そして女子に人気のカフェを作ったらしい。
小さな村だけど頑張っている。

「じゃあ、モリンゴのパイとお茶。あとは...」
「お肉のメニューとかある?」
「もちろん。それは軽食のメニュー表をみてね」

モリシシ鍋にノグマのステーキ、ピョンの刺身定食...
本格的なジビエ料理ばかりなのですが。
カフェの定義とは一体...

「内装、外装は私のセンスで作ったんだけど」
「おじいちゃんが店主だからメニューは譲らなくて」

なぜカフェにジビエが駄目かを説明しても聞かず
このような結果になったそうなのだが
なぜか“ジビエカフェ”として若者にウケたらしい。
(何が人気になるかわからない時代だな...)

「おいしかったぁ~」

カレンが注文したのはジビエのミートパイ。
満足そうな顔をしている。

「.....ところでそのはだれ?」

小声でリリィーが聞いた。
「そういえば紹介してなかったね。カレンだ」
「カレン・ウェザー。精霊で、俺の相棒だよ」

恥ずかしそうにコクリとお辞儀をする。
マジマジと見過ぎだよリリィー。

「かっわいい~!最初彼女かと思って焦ったよ」
「精霊さんなんだね。肌白くてきれい~」

初めて見る精霊に興味津々の様子。
たまらず俺の後ろに避難する。

「ゴメン、可愛いからつい見惚れちゃって」
「私はこの子のお姉さん的な感じだから安心して」

彼女が差し出した手の先をちょっとだけ握り返す。
(また人見知りに戻ったじゃないか...まったく。)
それでもカフェを離れてからの道中では
“またパイを食べに行きたい”と嬉しそうに言っていた。
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