俺は勇者になりたくて今日もガチャを回し続ける。

横尾楓

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第5章

教え方は丁寧に。

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今日は一日伯父の屋敷で通し稽古。

午前中は魔剣術を使った効果的な戦術について。
魔剣術とは武器に魔法を宿すことで
攻撃時に特殊効果を加えた一撃を放つ方法だ。

フィオが先に見本を見せる。

燃え盛る猛火の大斧フレイム アクスッ!
ブォウ...ザンッ...ズダァァァァァン!

今のは長斧に魔法の“フレイム”を組み込んでいる。
的として置いた大きな丸太はスパッと真っ二つに割れ
一瞬にして炭化していた。

もちろんコレを使用するには耐久性が必要。
フィオの斧は耐火性がある“猛火の大斧”だから
火力が強くても本体に影響はない。

「戦士のつるぎは平均的な耐久力ですね」

俺の持っている武器の中で一番マシな剣。
耐火性が特別強いわけじゃないから
火魔法を使うと劣化しやすいのだという。

「つまり使えるのは風魔法とかかな?」
「それが無難ですね」

シュダァァァァン!
風魔法は火魔法に比べて見た目は地味だが
それでも普通に振るよりかは威力が凄かった。

(また武器の確率アップの時にガチャするか.....)


それから昼飯休憩。
クライフさんが来る日だったから豪華なランチ。

喉ごしのいいモズクガニのスープに
めずらしいシロミナミマグロのカルパッチョ。
白身なのか赤身なのか不思議な魚だけど
適度な脂があり頭に良い成分が多く入っている。

「カレンお嬢様には特別メニューを」

ワンプレートに可愛く盛られた料理。
メインのハンバーグにパタパタ鳥のゼリー寄せ。
その他野菜も食べやすいように生ハムで巻いてある。

...というのも、彼女は好き嫌いが多い。
いつも肉ばかり食べてキノコ以外の野菜は苦手。
魚の肉も“それは肉じゃない“と言って手を付けない。

「こらカレン。野菜も一緒にだよ」
「.....はーい」

生ハムだけ食べようとするから注意して
なんとか全部完食させた。

それを見てクライフさんがニンマリと笑う。
俺も食べていて気付かなかったけれど
このハンバーグには魚も野菜も入っていたらしい。
さすが一流のシェフは違う。


食べ終えた後は少し休憩。
満腹でとてもすぐには動けない。

「フィオ、一つ相談があるんだけど...』

相談といえば勿論アイツの事。
今朝もカプッと噛んできたコイツだ。

「ピピッ...オ...オハヨウ...ゴ.....」

コンニチハを教えていないから
それが挨拶だと思っているようだ。
そして得意げな表情。

「そうですか...それは少ししつけが必要ですね」

一通り説明すると、フィオが小さな箱を取り出した。
これは“レンタルボックス”というアイテムで
“ポッケ”と違って魔力を消費するけれど
普通の家具とかも亜空間上に収納ができる便利な箱だ。

来いっカムッ!」
ビュゥーン...バサバサ...フィフィッー!

彼女が飼っているクラウンホークが箱から飛び出し
部屋の中で小さく弧を描いてから腕に乗った。

「よしよし...(頭を撫でる) これが基本になります」
「レオナルドも“ポッケ”を持っていますよね?」

果たして同じようにできるだろうか。
「おいでっ!」
(.......駄目だ。俺を無視して自由に飛び回っている)

「あきらめたらそこで色々と終了ですよっ!」

俺はグリフォンをなんとか素手で捕まえた。
爪が食い込んでいる所が痛い。

「今みたいに追いかけるのは逆効果です」
「でも言うことを聞かないよ?」「そんな時は...」

ガサゴソ...なにやら袋を取り出すフィオ。

「猛禽類には生肉が有効です」

チビチビチビ...
美味しそうに肉を食らうクラウンホーク。

戻れっハウス!」

フィフィッー!ヒュゥーン...スヲン
彼女の号令で自ら進んで箱の中に戻った。

物覚えの良いロングリフォンは生肉目当てで
真似して勢いよくレンタルボックスへ突撃。

ビュゥーン.....ゴンッ!
ピ...ピピィ.....(頭を強打した)

「ああ...それは俺のアイテムじゃないからね」
「お前のウチはこっちっ!」

“ポッケ”を広げると意外にもすんなり入った。
フィオの指示でもう一度“ポッケ”から出して
すぐにご褒美の生肉を与える。

ピピッ...(はむはむ)

「頭はとても良い子だと思います」
「丁寧に何度も根気よく教えることですね」

それから毎日肉を使って訓練をしているが
カレンと同じで魚肉には見向きもしなかった。
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