俺は勇者になりたくて今日もガチャを回し続ける。

横尾楓

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第7章

近道など存在しない。

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♢遺跡までの道程

典型的な黙ってればイケメンのニト。
道中適当な事ばかり言っては冗談だと揶揄からかう。

「クリスはもっと女の子っぽさが必要だなっ」
「魔法使いとか踊り子がいいんじゃないか?」

彼女は若いけれど統合政府の元傭兵。
それなりの経験とプライドがあるだろうけど
ニトはそんなことお構いなしの様子。

クリスが大人の対応を見せてあしらうほど
余計面白がって冗舌に喋る喋る...

「いい加減にしないと契約破棄するわよ」
「はいはい。冗談通じないわー」

悪びれることなくグングン先へと進んで行くニト。
歩くペースを合わせないからしんどい。

「ちょっと休ませて下さい...(はぁぁ)」

パーティー最年少のリンツが足を止めると
ニトがその声に気付いて戻ってきた。

「仕方ないな。じゃあコイツに乗ってけ」

小さなガラス玉の入った袋から一つ取り出し
地面にポンッと放り投げた。

グ...グアァァルグゥゥゥ

魔獣のライゴンだ。
獅子の体に鎧のようなドラゴンの鱗がついている。

「ちゃんと調教してあるからな」

リンツを背中に乗せても全然暴れない。
獣人族は元々猛獣使いであるから
動物や魔獣の扱いには慣れているのだろう。
(俺はあんなに苦労したというのに...)

「すごいや!キャハハッ」

ライゴンの上で無邪気に笑うリンツ。
彼女はカレンの見た目よりも幼く見えるけれど
名家出身で中々の魔法使いらしい。
でも子供っぽさは年齢相応で可愛い。



ザッザッ...テクテク...ズシンズシン...トコトコ...

どれだけ歩いたのだろうか。
視界の先が明るく見えてきたから
ようやく密林の端までたどり着いたようだ。

木々に遮られていた陽射しは燦々と降り注ぎ
一気に押し寄せて俺達の視界を奪う。

眩しさを堪えて薄目を開けてみると
そこは地図にあった通り崖になっていて
目下には遺跡への入口が小さく見えている。

俺は...いや、俺達は嫌な予感がした。

「よっし。誰から降りる? 」
「・・・・・・・・」

(顔を見合わせる一同)
「ダンマリかよ...じゃあオレ先に行くわっ」


ヒュゥゥゥゥーン...クルクルクル...
「オリャアッ!」バゴォーン!


そんなに高くないと言っていた崖は
ざっと二十メートルはある断崖絶壁であった。
ニトはそこから躊躇もせずに飛び降りて
地面に風魔法か何かを叩きつけることで不時着。

「早く来いって!置いてくぞー!」
余裕で手を振っているけど人間業ではない。


「.....どうする?」「どうしようもないなこりゃ」
「結構戻らないと回り道も出来ないわね...」

“オレが受け止めてやるっ” と下から聞こえてきたが
当然そんな無謀なことは常識人ならしない。
それにクリスは高所恐怖症だ。

「ボク一人なら飛行魔術で降りられるけれど...」
「まったく...あの若造にしてやられたな」
「悪口聞こえてるぞオッさーんっ!(崖の下から)」

聞き耳を立てていないで何とかしてほしい。
とりあえずこのパーティーで飛べるのは
リンツと俺のロングリフォンだけだ。

「おいでグリフォン!」

シュゥゥゥ...
ピピッ...「コ...コンニチ...ハッ!?」

先にカレンとクリスを一緒に崖下へと飛ばす。
怖くて無理と言っていたクリスも覚悟を決めて
なんとか無事に着地したようだ。

バッサバッサ...バッサバッサ...ピピッ!

グリフォンが戻ってきたから
俺とウォルターも狭いけれど一緒に乗る。
おっさんとの距離が近くて残念な気持ちになった。

シュゥゥゥゥン...
急降下で少し内臓がフワッとしたが
大きく翼を広げて上手に地上へと降りる。

「よく躾けられてんな。スゲーよ」
ピピッ...グルルゥ...グルルゥ...
「コ...コンニチ...ハッ!?」

グリフォンの頭を撫でるニト。
さすが獣人族なだけあってとても懐いている。

「んじゃ、全員無事に揃ったからメシにするわ」

ガサゴソ...ガサゴソ...
昼食を作ってくれるのか荷物を広げるニト。
クリスはさっきの件を説明しなさいと怒るが
彼はまったく聞く耳を持たない。

「コーディネーターになってないわっ!」
「なんだよー。終わってから評価しろって」

気まずいから食材を探しに森へ。
ウォルターと俺は大きなヤマガニを数匹捕獲。
カレンは食べられそうなキノコをいくつかと
南部特産のヤマンゴーを見つけてきた。

「わりぃー。反省してまーす」

戻るとまだお説教が続いていたが
それを聞き流して手際よく調理を始めるニト。
家を手伝わないわりにはとても器用で
あっという間に美味しそうな南国料理が完成した。
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