俺は勇者になりたくて今日もガチャを回し続ける。

横尾楓

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第7章

古代人の遺跡。

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「やっぱり蟹はシンプルに茹でるのが一番だな」

ニトが鍋から取り出した熱々のヤマガニを
食べ易いように殻から外す。
蟹を茹でている間にスープとデザートも作り
鍋で焼きたてのパンまで用意してくれた。

「パンって鍋で焼けるんだね」
「スゲーだろ?発酵の過程が大事なんだ」

その料理スキルは中々のもので
コテージとホテルで出している料理の一部も
彼が考案したメニューなのだという。

「どれも美味しかったよ」
「そっかそっか。オレを雇って正解だろ?」

そう言ってクリスの顔を覗き込むニト。
彼女は黙って残りのスープを飲み干した。

「料理に関してはカカ様仕込みだからな」
「ちゃんと働けばいいのに」「それはイヤだ」

才能がある人は変わり者であることが多いけど
その典型的な例だと思う。

昼食も食べ終えて片付け中。
ウォルターとクリスは先に装備を整えている。
ここから遺跡まではそんなに距離はないが
手前の森から上級も現れるから重装は必須。

「俺達も準備するよカレン」

彼女のポッケにも傷薬やポーションを入れる。
パーティーでいる間は持ち物の貸し借りが可能だから
いくつか魔導具も貸してもらった。

「ニトは必要なものとかある?」
「そうだなー。オレはアイツが欲しい」

気持ち良さげに昼寝しているグリフォンを指差す。
もちろん魔獣や魔物もOKだ。

「レベル上げといてやるよっ!」

バサバサバサ...
そう言い残すとグリフォンの背中に飛び乗って
俺達を置いて森の奥へと進んだ。
コーディネーターとは一体...

「しょうがないわねアイツ...」

クリスは深いため息をついて
もうウンザリといった表情をしている。


ザッザ...トコトコ...テクテク...

入り口までの長い森の中。
前衛で警戒を怠らない二人とは対照的に
俺はリンツの質問攻めにあっていた。
なんでも聞きたがる年頃なのだと思う。

「レオナルドさんも冒険者ですか?」
「いや、まだそう呼べるレベルではないよ」

他にもウェザーの魔法やその種類
私生活や好きな食べ物の事など様々だったが
“彼女いますか?”については口を濁しておいた。
子供は時に残酷な生き物だ。



♢密林の古代遺跡

森を無事に抜けると入り口はもう目の前。

「おうっ!早かったじゃねーか」

無責任に仕事を放り出したかと思われたニトは
先に森の中にいたノラや上級を数匹倒していたらしい。
どうりでモンスターに出会わなかったわけだ。

「もう...レベル上げ出来ないじゃないっ!」
「そりゃごもっともだ。わりぃー」

反省していない笑顔でそう答えた。
観光客のガイドならこれでいいのだけれど
敵を倒してしまっては冒険者はあがったりなのだ。

「落ち着け。ここは結構いるって話だしさ」
「.....わかったわよ」

ウォルターがなだめて事なきを得た。
ここは秘境マニアオススメの遺跡ダンジョン。
地下に降りればゴースト系の魔物
上にはこの地方だけの魔獣が現れるという。

「じゃあ上に行くかっ!」
「なにを言っているの?予定通り下に行くわよ」

頑なに上段へ行かせようとするニト。
プライドを傷付けてしまうから言わないけれど
ゴーストが苦手なんだと思う。

「ゴーストが苦手なんでしょ(ニヤリ)」
「そんなことねーしっ!!!」

(.....あー言っちゃった)

仕返しとばかりに口撃をしかけるクリス。
さすがに可哀想だから地下へ行くのは諦めた。


♢薄暗い通路

ギギギィ...カチッ
入り口の封印魔法をリンツが解除して
光魔術で作った光球を通路に浮かべると
古代人の書いた文字や絵が壁一面に現れた。

「すごいねレオ!いっぱいあるねー!」
「ちゃんと前見て歩きなよ」

ふらふらと左右を見ながら歩くカレン。
テンションは完全に観光客だ。
地元の観光ガイドもついているし。

「これは古代人の魔術書的なやつ」
「それは偉い人でこいつはもっちょい下っ端だな」

結構適当な解説だけれど大筋は間違ってなさそう。
数千年前まではここに描かれた王朝があって
多くの人々が王に仕えていたようだ。

ピタッ...柱の手前で急に立ち止まるニト。

「ちょっとまて...いるぞ」

先には石の回廊と吹き抜けの中庭があり
その中心で少し大きめの竜が横たわっている。

「寝てるドラゴン起こすなって言うだろ?」
「同意。ここは回避しましょう」

めずらしくクリスとニトの意見があったのだが
竜は鼻をヒクヒクさせると薄目を開いて
俺達の方をギロッと睨んだ。
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