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第7章
さわやかな空気。
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細く薄暗い階段を登ると
先回りしたニトが扉の前で待っていた。
「この奥ヤバイな。ウジャウジャいるし」
「暑くて冒険者来なかったからなー」
扉を開けると広い祭壇があり
二十匹ほどの上級で溢れていたという。
魔物の出現は以前より減ったものの
倒さない限り地脈の影響で次々と現れる。
「つまりは増殖したってことね」
「いいねぇ。腕慣らしには最適じゃないか」
ウォルターは“ポッケ”から大きな槍を取り出し
クリスも両手にレイピアを構える。
「先に可視魔術をかけるから集まって」
“黒い瞳よ闇を飲み込め”
リンツが光魔法で照らすには範囲が広いからと
暗闇に目を慣れさせるための魔術をかけてくれた。
ニトは離れていたけれど...
「彼は獣人族だから見えるんだよ」
「そいうこと。基本は夜行性だからな」
ミトの時と同じように黄金に輝く獣の眼。
牙を剥き出しにして本気モードに入ったようだ。
「さあ、行くわよっ!」
ガンッ!
勢いよく扉を押し開けて
皆で一斉に魔物の巣窟へ飛び込む。
ワラワラ...ワラワラ...ワラワラ...ワラワラ!?
突然の襲撃に動きを止めて身構える魔物達。
上級といっても強さや大きさは様々。
最初の竜やバグの時のようなボス系とは違って
中級よりの上級といった感じだ。
クリスとウォルターが先手を打つ。
シュンッ...クルン...スタッ...クルルン...スダンッ!
ただ凄いの一言。
二人とも踊るように次々と薙ぎ払っていく。
レベル高いなぁ...
「ボーッとすんなよ。オレ達もいくぞ!」
「うん。グリフォンをよろしく」
バサバサバサ...シュゥン
ニトはグリフォンに乗って空中戦。
魔物は数種類いるけれど弱点は皆同じである。
「コイツら寒さに弱いから」
南国育ちはわかりやすくて良い。
俺は早速クリスタルソードに魔法をかけた。
「フリーズッ!」ピキピキ...
いつも肉の保管とかで使ってるアレだ。
日常生活魔法と化している“冷凍”だけれど
魔剣術の基礎ではよく使用される。
カチカチに凍った剣。
試しに思い切り振ってみると効果抜群で
その冷気だけでもかなり嫌がっている様子だ。
キェェェェェェ!...ザンッ!
魔術と違い暑さで溶けてしまうから
急いで魔物を倒しにかかる。
もう大分クリス達が狩った後だけれど
逃げ足の速い奴らが走り回る。
「そっちに逃げたわよ!」
「よっしゃー!挟み打ちだレオナルド!」
グッ...剣を持つ手に力が入る。
すでに相当なダメージを受けているから
あとは確実に息の根を止めるだけだ。
ザンッ!シャンッ!
グァァァァァァァ...シュルルル
少し手間取ったが最後の一匹も片付け終わり
落ちたアイテムの回収をする。
そういえばカレンとリンツは...
(...なんだか女子会みたいだな)
地べたにペタンとすわってお茶を飲んでいる。
カレンはリンツの質問責めにあっているようだ。
おっさんがその女子会に割り込む。
「リンツさぁ...お前なんで加勢しないんだよ?」
「ああゴメンね。精霊魔法に気を取られちゃって」
攻撃に夢中で気付かなかったけれど
カレンが何か魔法を使っていたのだろうか?
「わからなかったの?凄く快適よココ」
「ああ、室内気温湿度調節をかけたんだね」
「だけじゃないんですよ!さすがウェザーです」
またリンツが嬉しそうに解説してくれた。
コンディショニングに加えて新しい魔法を発動。
その名も“空気清浄”.....もちろん攻撃魔法ではない。
「空気は澱んでるしカビ臭いし...」
「湿気で髪もハネるからダンジョンは嫌いなのよね」
「そうそう。クリスは乗り気じゃなかったもんな」
リアルなダンジョンは何かと大変らしい。
カレンは褒められて嬉しそうにお茶をすする。
ガシャン...
「さあ、そろそろ上に行くぞ」
「そうね。一気に最上階まで登るわよ!」
横に長くて上段は五階まであるから
ここからはできる限り戦闘を避けて上を目指す。
上級が出るから屋上以外ではビパークできない。
「ボクの結界を張ってもいいんだけどさ」
「魔物に囲まれて寝るのは落ち着かないでしょ?」
(...確かにワラワラされたら寝付けなさそうだ)
このあと三階までは難なく通り抜けて
四階の最も危険だと噂される女王の間に出たのだが
グアル...グアル...グアル...
そこには人間のようでヒトではなく
竜のようでいてドラゴンではない
妙なちっこい姿をした何かが佇んでいた。
先回りしたニトが扉の前で待っていた。
「この奥ヤバイな。ウジャウジャいるし」
「暑くて冒険者来なかったからなー」
扉を開けると広い祭壇があり
二十匹ほどの上級で溢れていたという。
魔物の出現は以前より減ったものの
倒さない限り地脈の影響で次々と現れる。
「つまりは増殖したってことね」
「いいねぇ。腕慣らしには最適じゃないか」
ウォルターは“ポッケ”から大きな槍を取り出し
クリスも両手にレイピアを構える。
「先に可視魔術をかけるから集まって」
“黒い瞳よ闇を飲み込め”
リンツが光魔法で照らすには範囲が広いからと
暗闇に目を慣れさせるための魔術をかけてくれた。
ニトは離れていたけれど...
「彼は獣人族だから見えるんだよ」
「そいうこと。基本は夜行性だからな」
ミトの時と同じように黄金に輝く獣の眼。
牙を剥き出しにして本気モードに入ったようだ。
「さあ、行くわよっ!」
ガンッ!
勢いよく扉を押し開けて
皆で一斉に魔物の巣窟へ飛び込む。
ワラワラ...ワラワラ...ワラワラ...ワラワラ!?
突然の襲撃に動きを止めて身構える魔物達。
上級といっても強さや大きさは様々。
最初の竜やバグの時のようなボス系とは違って
中級よりの上級といった感じだ。
クリスとウォルターが先手を打つ。
シュンッ...クルン...スタッ...クルルン...スダンッ!
ただ凄いの一言。
二人とも踊るように次々と薙ぎ払っていく。
レベル高いなぁ...
「ボーッとすんなよ。オレ達もいくぞ!」
「うん。グリフォンをよろしく」
バサバサバサ...シュゥン
ニトはグリフォンに乗って空中戦。
魔物は数種類いるけれど弱点は皆同じである。
「コイツら寒さに弱いから」
南国育ちはわかりやすくて良い。
俺は早速クリスタルソードに魔法をかけた。
「フリーズッ!」ピキピキ...
いつも肉の保管とかで使ってるアレだ。
日常生活魔法と化している“冷凍”だけれど
魔剣術の基礎ではよく使用される。
カチカチに凍った剣。
試しに思い切り振ってみると効果抜群で
その冷気だけでもかなり嫌がっている様子だ。
キェェェェェェ!...ザンッ!
魔術と違い暑さで溶けてしまうから
急いで魔物を倒しにかかる。
もう大分クリス達が狩った後だけれど
逃げ足の速い奴らが走り回る。
「そっちに逃げたわよ!」
「よっしゃー!挟み打ちだレオナルド!」
グッ...剣を持つ手に力が入る。
すでに相当なダメージを受けているから
あとは確実に息の根を止めるだけだ。
ザンッ!シャンッ!
グァァァァァァァ...シュルルル
少し手間取ったが最後の一匹も片付け終わり
落ちたアイテムの回収をする。
そういえばカレンとリンツは...
(...なんだか女子会みたいだな)
地べたにペタンとすわってお茶を飲んでいる。
カレンはリンツの質問責めにあっているようだ。
おっさんがその女子会に割り込む。
「リンツさぁ...お前なんで加勢しないんだよ?」
「ああゴメンね。精霊魔法に気を取られちゃって」
攻撃に夢中で気付かなかったけれど
カレンが何か魔法を使っていたのだろうか?
「わからなかったの?凄く快適よココ」
「ああ、室内気温湿度調節をかけたんだね」
「だけじゃないんですよ!さすがウェザーです」
またリンツが嬉しそうに解説してくれた。
コンディショニングに加えて新しい魔法を発動。
その名も“空気清浄”.....もちろん攻撃魔法ではない。
「空気は澱んでるしカビ臭いし...」
「湿気で髪もハネるからダンジョンは嫌いなのよね」
「そうそう。クリスは乗り気じゃなかったもんな」
リアルなダンジョンは何かと大変らしい。
カレンは褒められて嬉しそうにお茶をすする。
ガシャン...
「さあ、そろそろ上に行くぞ」
「そうね。一気に最上階まで登るわよ!」
横に長くて上段は五階まであるから
ここからはできる限り戦闘を避けて上を目指す。
上級が出るから屋上以外ではビパークできない。
「ボクの結界を張ってもいいんだけどさ」
「魔物に囲まれて寝るのは落ち着かないでしょ?」
(...確かにワラワラされたら寝付けなさそうだ)
このあと三階までは難なく通り抜けて
四階の最も危険だと噂される女王の間に出たのだが
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妙なちっこい姿をした何かが佇んでいた。
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