俺は勇者になりたくて今日もガチャを回し続ける。

横尾楓

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第3章

過ぎたるは及ばざるが如し。

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昨日徹夜したせいで
朝起きるのが相当しんどかった。

(疲れが全然取れてない...目痛い...)

カレンが“お腹が空きました~!”と起こさなければ
きっと昼過ぎまで寝ていただろう。


職場に到着すると今日も大量の荷物が届いていた。
早番の人達が仕分けまで済ませていたから
後は地下室へと運び込む作業。

(徹夜明けの肉体労働辛いわぁ...ふあぁ...)

寝溜めの出来るカレンはもちろん平常運転。
羨ましいかぎりだ。

中番で遅めの朝食を食べてきたから
昼休み無しで帰れるように頑張る。
早く帰りたい。早く帰りたい。

“早くネットを開きたいっ!”

一夜にして完全にネット中毒である。
今まで使い方がわからなかっただけで遠ざけていたが
まさかこんなに面白い世界があるなんて...知らなかった。

フレンドの冒険ログだけでなく
検索機能で他の人のログも見ることが出来る。

情報屋はニュースの無料配信をしているし
“初心者にオススメな絶景ダンジョン100選”とか
“死ぬまでに行きたい!世界の激ウマ料理店”など
色々な情報を端末一つで手に入れる事が出来て便利。
写真も載ってるから見ているだけでも超楽しい。

.....終わった。もう帰る。
「レオナルド!この後飯食いに行かねぇか?」
「すみません。ちょっと用事があって...」

ウィッドの夕飯の誘いを断りそそくさと家路につく。
見たいネットがあるからね。


だけどお行儀が悪いのは厳禁。
「カレン、食卓に端末持ち込むのはダメだよ」
「...はーい」

持ってきた端末を渋々と棚に戻しに行く。
気持ちは分かるけれども。

二人ともすぐに食べ終わり、洗い物を片付ける。

「ねえ、もうネットやっていいー?」
「いいよ。でも程々にね」
(...と言いつつ俺も自分の端末を開くのであった)

俺のは伯父が前に買ってくれた携帯型端末で
画面が小さめだけど持ち歩きには便利。
カレンが貰ったのは卓上型で少し大きめだけど
家で使うには見やすくて良いサイズだ。

並んでネットをパチパチする。
........昨日とは違って二人とも終始無言。
「んー」とか「あー」とかしか言わない。

これは駄目だ。
端末を二台同時に使うと家庭崩壊しそうだから
俺は自分の端末を閉じて
家ではカレンと共用することに決めた。

「レオ~そろそろ貸してよー」
「待ってて...これでいいのかな?送信っと」

ポチリ。
ラファエルのログにコメントを送ってみた。
初めてだからちょっとドキドキ。
でも楽しい。

「はいお待たせ。今度は何を見るの?」
「これだよ~!いま人気なんだって」

“女神級アイドル精霊  フローリア公式ログ”

公式?なんじゃそりゃ。
そもそも個人のログに公式もなにもないと思うが...

開いてみると、美少女(精霊)と美しい花々の写真。
ボカシも効いてるしエフェクトもかけてる?
フォロワー数もハンパない数字。

(間違いない。これはプロの犯行だ...!!)

そう思いつつも読み進めていくと
カレンは美しい花々に
俺は美しい少女(精霊)に見とれてしまい
結果、読了後にはフォローボタンを押していた。
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