『たった6文字のHOPE ~神谷探偵事務所はぐれ事件簿~』

水由岐水礼

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FILE・#2 依頼人はミス十波学園大

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 ぴんぽーん、ぴんぽーん。
 ドアチャイムの音が聞こえた。
 こんこん……。
 続けて控えめにドアがノックされ、「あの、すみませんが……」と、若い女性の声が室内に届いた。
(──本日定休日のプレートが見えないのか?)
 相手の都合も構わず定休日にチャイムを鳴らす客など、ろくな奴ではない。
 礼儀を心得ない、嫌味な金満家あたりだと相場は決まっている。
 どこで評判を聞きつけてくるのか、近頃、そのての金銭的には上客と言えなくもない人間が訪ねてくることがある。
(……ったく、今日は休みなんだぞ)
 不機嫌な気分になり、慎也は閉じていた瞼を開けた。
 涼介と美咲、そして雪乃の三人が、「どうするの?」という顔で彼の方を見ている。
 ソファーから腰を上げ、慎也は自分のデスクへと向かう。
 おおかた、どこかの社長秘書か何かだろう。
 思い、慎也はモニターを確認した。
(ほぉー、こりゃまた……凄いな)
 モニターには、二人の女性が映っていた。
 一人は、スーツルックのもの凄い美人だった。
 その隣に立つもう一人は、髪の短いボーイッシュな感じの女性で、こちらも十分に美人の範疇に入る整った顔立ちをしている。
 どうも相場は外れてしまったようだ。
 二人は金満家の秘書というわけではなさそうである。秘書にしては、歳が少しばかり若い。二人とも二十歳そこそこだろう。その年齢は依頼人としても、まだ若い。
(と、すると……)
「おい、涼」
 慎也は、呑気にまだ紅茶を飲んでいた涼介を呼んだ。
「なんですか、叔父さん?」
「ちょっとこっち来い」
 モニターに視線を落としたまま、慎也は言う。
 スーツルックの女性は、書類封筒を胸に抱えていた。封筒の下部には、「十波学園大学文学部」という文字が印刷されている。
 十波学園大学――この辺りでは単に学園大と呼ばれている――は、涼介の通う大学だった。その文学部といえば、彼の所属する学部である。
「おまえ、この二人を知ってるか?」
 隣にやって来た涼介に、慎也は首と目の動きでモニターを示した。
「あっ……」
 モニターを見た瞬間、涼介が小さな声を漏らす。
 明らかに、驚きを表す声だ。
(ふーん……知っているわけね)
「……おまえの知り合いか。なら……」
 と慎也は、モニター脇のインターホンのスイッチをONにした。
「ちょ、ちょっと違いますよ……」
 涼介が横で何やら慌てていたが、慎也は聞いていなかった。
「鍵は開いてますから、遠慮なくどうぞ」
 この後の展開(美咲の嫉妬爆発)を考え、「ちょっとマズいかなぁ……」などと思いつつも、慎也はマイクを通し声を外へ送る。
 視線を応接スペースへやると、美咲が布巾でテーブルを拭いていた。いつの間にか、そこは素早く片付けられている
 雪乃の仕事だろう。
(いつもながら、本当に手際がいいなあ)
 慎也は、ティーセットのお盆を手に給湯室に消える雪乃に、心の中で褒め言葉を送った。
「失礼します」
 という言葉とともに、ドアがゆっくりと開いた。
「お休みのところ、申し訳ありません」
 丁寧に頭を下げた後、スーツルックの女性が入室してきた。
 もう一人もそれに倣い、あとに続く。
 スーツルックの女性の物腰は、なんとも言えず上品で優雅さがあった。
(いいとこのお嬢様……って、とこかな)
 彼女から漂う雰囲気に、慎也はそう当たりをつけた。
 同時に、疑問に思う。
 涼介はどこで、こんなお嬢様と知り合いになったのだろう。
 どう考えてみても、アンバランスな組み合わせだ。大学は別として、他に接点がありそうにもなかった。
(……ん? なんだ?)
 お嬢様が、慎也と涼介を見比べる。
 視線が二人の間を往復し、彼女が涼介の方を見て言った。
「あなたが、天野涼介さんですか?」
「そう、ですけど……」
 見つめられて、涼介は若干緊張しているようだ。
(あれ? 知り合いじゃなかったのか?)
 二人のやり取りに、慎也は首をひねる。
(これは、マズったか……)
「は……」
 お嬢様が何か言おうとしたが、
「ちょっと、涼ちゃん!」
 そこに美咲が割り込んだ。その声は、いつもより少しばかりトーンが低い。
 涼介を訪ねてきたらしい美人の登場に、美咲は不機嫌さを隠そうともしていなかった。
「この人、誰?」
 その口調は、詰問調になっている。
 答えを待ちながら、美咲は、仇敵でも見るかような眼差しをお嬢様に向けていた。
(おいおい、美咲ちゃん……)
 それは、あまりにも失礼というものでは……などと大人として思ったものの、慎也は口を挟むことはしなかった。
 こういう時、それは藪蛇というものである。
 黙って、涼介に任せた方がいい。
 そもそも、普段通りにしている限り、涼介がモテるはずなどないのだ。
 その辺は美咲も心得ている。だから、涼介がきちんと相手との関係を説明しさえすれば、彼女も嫉妬の矛先をすぐに収めてしまうだろう。
 美咲の嫉妬など、慎也の目から見れば(もちろん、本気は本気なのだろうが)、お遊び半分の習慣か儀式みたいなものに映っていた。
 まあ、一種のイベントかショーのつもりで見ていればいい……はずだった。
 ……が、今回は違っていた。
「いや、あの、そのー……なんて言えばいいんだろうな。うーん……」
 涼介がなかなか説明できないでいるのだ。
 それもまあ無理はないだろう。
 慎也の見たところ、涼介とお嬢様は知り合いではなさそうだ。
 何の関係もない人間について説明する……それは意外と難しかったりする。
 特に、今回のような場合は……尚更困難なことだろう。
 とはいえ……。
(マズいよなぁ、これは……)
 非常事態である。慎也の知るかぎり、初めてのパターンだ。
「だから、あのー、えーっと……」
 涼介はまだ、まごついている。
 その様子に、美咲の眉が角度を上げる。
 ただ、その頬がお多福のようにぷっくりと膨らんでいるのが、怒りの表現としては少々子供っぽく迫力に欠けた。けれど、美咲らしいといえば、美咲らしい。
「涼ちゃん、はっきりしなさい! この人とはどういう知り合いなの!」
 ぴしっ! 腕を真っすぐに伸ばし、美咲はお嬢様に指を突きつけた。
 その模様はまるで、愛人を交え夫の浮気を問い詰める妻の図だ。
(なんだかなぁ……)
 以前、浮気調査の依頼を受けた時、同じようなシーンに立ち会ったことがあった。
 目の前の光景に、慎也はそれを思い出してしまった。
「まあ、知ってることは知ってるけれど……でも、知り合いというわけじゃ、なくて……」
「なによ、それ!」
 相変わらず、涼介の言葉は要領を得ない。
 美咲は、涼介とお嬢様を交互に睨んでいた。
 で、お嬢様はというと……これがニコニコと笑っていた。無礼千万な美咲の振る舞いに怒るわけでもなく、呆気にとられるわけでもなく、興味深そうに余裕の笑みを見せている。
 その瞳の中に、嘲りや悪意の色はない。意地の悪さや嫌味なものは、全く感じられなかった。
 それどころか、優しげでさえある。
 その余裕綽々とした態度が、美咲の癪に障ったのだろう。
「あなた、いったい誰よ!」
 美咲が攻撃の矛先を変えた。
(……なんだか、やばい雰囲気だな)
 そろそろ、助け船を出した方が良さそうである。
 このままだと、美咲は保たないだろう。
 涼介絡みのこととなると、彼女はとても強くも弱く(脆く)もなる。
 ただ、今回の場合は、間違いなく弱くなる方のパターンだ。
 早く止めないと、感情が爆発し、泣き出してしまうかもしれない。過剰な嫉妬心の強さ、それは美咲の脆さを象徴するものだと慎也は思っている。
 伊達に元刑事で、探偵をやっているわけではない。お嬢様の正体について、おおよその推測は疾うについている。
 慎也はデスクから夕刊を取り上げた。
 続けて美咲に呼び掛けようとしたが、お嬢様に先を越されてしまった。
「ごめんなさい、美咲さん。先に自己紹介をしておくべきでしたね」
「えっ……」
 いきなり自分の名前を呼ばれ、美咲は驚きで表情をいっぱいにした。
「はじめまして。私は水島玲奈といいます。十波学園大学の二回生で、涼介さんと同じ文学部の学生です。ただ、日本語文学科なので、学科は涼介さんとは違いますが……」
「…………」
「それから、彼女は私の友人で松井多恵子さんです。彼女は教育学部の一回生で……」
 と、続けて、玲奈嬢はもう一人のボーイッシュ女性の紹介をしていたが、美咲はそれを聞いていないようだった。
 わけの分からない状況に、嫉妬やショックなどが入り交じり、彼女は混乱してしまったらしい。
 身内や知人の誰から見ても、涼介は非社交的な人間である。自分のブースター性質のこと等もあり、人と接触することをなるべく避けている。
 妖怪のお兄ちゃんと呼ばれている奇妙な風体も、涼介にとっては人を寄せ付けないための手段――一種のバリアなのだ。
 慎也の知るかぎり、涼介には友人と呼べる人間は二人だけしかいない。
 そんなこともあって、よほど涼介と親しい間柄でもないかぎり、美咲のことを知っている人間は、涼介の周りにはほとんどいない……はずなのだ。
 つまり、涼介の知り合いで神谷探偵事務所のことを知っている人間は、それだけで「=涼介とかなり親しい人間」ということになってしまう。
「……どうしてよ。どうして、あなたがあたしのこと、知ってるのよ……」
 自分のことを知る涼介の知人らしい女性の登場に、美咲はひどくショックを受けてしまっているようだった。
 横を見ると、長い前髪の隙間から、涼介が目で助けを求めていた。
(やれやれ……まったく、仕様のない奴らだなぁ……)
「それは俺が教えてやるよ、美咲ちゃん」
「叔父さんが?」
 慎也の声に、美咲が振り向く。
 なんで、叔父さんが? ますますわけが分からない、という顔を彼女はしていた。
「はい、ご注目」
 慎也は、右手に持った夕刊の1面を美咲の方へ向けた。
 空いている左手で、紙面の左中央部、とある一点を指さす。
「美咲ちゃん、これが誰だか知ってるかい?」
 慎也の指さした先には、仏頂面のおじさんの写真が印刷されていた。
「馬鹿にしないでよ、叔父さん」
 美咲の顔が、紙面のおじさんと同様に仏頂面になる。
「そのくらい、もちろん知ってるわよ。総理大臣さんでしょう」
「はい、正解。じゃあ、次だ」
 くるっと新聞をひっくり返し、慎也は今度はテレビ欄を美咲に突き出す。
 そして、番組紹介と一緒に掲載された、小さな写真を示した。それは、ドラマの1シーンを写したものだった。
「この二人は誰?」
「あの……叔父さん? 何がやりたいの?」
 意図の見えない質問に、美咲は訝しげに慎也に訊ね返した。
「まあ、いいから。とりあえず、言うとおりに答えなさい、って」
 慎也は不敵に笑う。
 美咲は仕方なさそうに、二人の若い俳優の名前を答えた。
「よろしい、またまた正解だ」
 新聞を小脇に抱え、慎也はパチパチと拍手する。
「叔父さん!」
 からかわれたとでも思ったのか。抗議しようとした美咲を「まあまあ」と押しとどめ、慎也は言った。
「知ってはいるけれど、知り合いではない……さて、これは如何に?」
 美咲は答えず、眉を顰めた。
「ところで、美咲ちゃん。いま君が答えた三人だけど、その三人と美咲ちゃんは知り合いかい?」
「はぁ? なに言ってるのよ、叔父さん。そんなこと、あるわけないじゃ……あっ!」
「気づいたかい?」
「……うん。そういうことか……」
 美咲は少しだけ表情を和らげた。
「分かったみたいだね。そちらの水島玲奈さんは、きっと何かで有名な人なんだよ。しかも、世間のことに疎い涼介が知っていて、俺たちが知らないときてる。なら、答えは簡単だ。彼女は学園大内での有名人ってところだろうな」
 話題にされている当人、玲奈嬢はそれを肯定も否定もせず、口を挟んだりすることなく、慎也の推理めいたものを聞いている。
「で、水島さんはこれだけの器量良しなんだ。そこから、なんとなく当たりはつけられる。たぶん、学園祭なんかでよくやってる、ミス・キャンパスとかいうやつ……水島さんはあれの優勝者、ってところなんじゃないかな?」
「そうです、そうなんですよ、叔父さん。水島さんは、去年の学祭で選ばれた〈ミス十波学園大〉なんです。新入生歓迎イベントの時、水島さんが挨拶されていたから、それで水島さんのことは知っていたんです」
 涼介は今がチャンスとばかり、普段は人前ではあまり開かない口を開き、言葉を吐き出した。
「でも、こうして面と向かって会ったのは、今が初めてです。だから、水島さんがどうしてオレのことを知っているのか、こっちだって不思議なくらいなんですよ。ましてや、美咲のことまで知ってるなんて……」
 そう言う涼介に、美咲はまだ少し疑わしげな視線を送っている。
 玲奈の方を見ながら、慎也は口を開いた。
「それは、たぶん……ほら、おまえの高校時代の先輩、確か川崎とかいう……」
 そこで、いったん言葉を切る。
 川崎……。その単語に、玲奈の瞳が微かに揺らいだ。わずかに表情も曇る。
(やっぱり、そうか……)
 観察の結果、慎也は自分の推測の正しさをほぼ確信した。
「ミステリー研究会の?」
 涼介が訊く。
「そうだ、今はおまえと同じ学園大生の、その川崎君だ。おまえ達のことは、おそらく彼から聞いたんだろう」
 慎也は、なにやら新聞を広げながら続けた。
「川崎さんから?」
 美咲が鸚鵡返しに言う。
「そうでしょう、水島さん?」
「はい、そうです」
 慎也の問い掛けに、玲奈は即答した。
「でも、なんで川崎さんが?」
「そりゃあ、決まってるだろうに、美咲ちゃん。彼女が──水島さんが、川崎君のカノジョだからだよ、たぶんね」
 それは見事に的を射抜いていたらしい。玲奈が目を少し伏せた。
「ミス十波学園大の水島さんが……川崎先輩の恋人……」
 驚いた様子で、涼介が呟く。
「なーんだ、そうだったんだぁ」
 どうやら、美咲のお怒りの方も解けたようだ。
「それで……っと、水島さん」
「はい」
 慎也の呼び掛けに、玲奈は視線を上げた。
「今日、あなたがここに来られたのは、もしかすると……この記事と、何か関係があるんでしょうか?」
 開かれた新聞の市民欄、その中の一記事を指で示し、慎也は訊ねた。
 彼の示す記事の見出しには、

『真夜中のひき逃げ
 十波学園大生、はねられ重傷』

 ……の2行が踊っていた。
「……さすがですね」
 愁いを含んだ眼差しを向け、目の前の探偵に玲奈は微笑んだ。
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