『不思議さんと僕』

水由岐水礼

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『雨の日、明日を探す少女 ~不思議さんと僕~』

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 曇った空から、ただ地上に落ちてくるだけ。
 それはただの自然現象で、理科の教科書を捲れば、そのメカニズムについても一通りの解説がなされている。
 だから、僕は知っている。
 雨は何かを考えて、地上に落ちてきているわけじゃない。
 雨だけじゃなく、雲にも意思なんてものはなく。もちろん、そこに雷様なんてものも存在しない。
 けれど、もし……雨や雲に、生き物のような性格があったとしたならば。
 きっと、春の雨は、上品な質をしているんじゃないかな。
 と、そんな益体もないことを考えながら、僕は傘を差し、春雨のシャワーの中を歩いていた。
 傘を叩く音も静かに、優しく地上に降り注ぐ春の雨は、少しも鬱陶しいものじゃなかった。
 それどころか、淡く柔らかな雨音に、どこか心が癒されるような気がする。
 どこがどうなんて訊かれても、困ってしまうけれど。梅雨時の雨や真夏に振る雨と違って、春の雨にはどこか優しさがあると思う。
 特に、桜花の終わり時。賑わいの山を越えた、桜の散りゆく頃。
 ちょうど今頃に降る雨は、どこか寂しさを演出しつつも、風情という名の情を含み、慰みや癒しを隠し持っていると思う。

 そして、こんな心地好い雨の日には……。

 なんとなく予感がして。
 少しだけ、傘を後ろに傾けてみる。
「ああ、やっぱり……出会っちゃったか」
 たぶん多くの人にとっては非日常で、けれど、僕にとってはさほど珍しいものでもなく、それなりに馴染みのあるもの。
 二週間ぶりくらいだろうか。僕はまた「不思議さん」に出会った。
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