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7話 指名依頼は面倒くせー
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朝イチでギルドにやってきた。
目的はひとつ。
「何か面白そうな依頼、ないかな~」
と、暇つぶしにでもなればと思っていたのに――
「……あの~、ハルトさんですよね?」
声をかけられて振り返ると、受付カウンターの奥から出てきたのは、どこか覚えのある女性だった。
(あれ、ニッキーさん……だっけ?)
「あ、そうですけど。貴女は?」
「あっ、私はギルド受付のニッキーと申しますっ!」
彼女は小さく会釈し、ホッとした表情を見せる。
(よかった、合ってた)
「俺に何か用ですか?」
「はい、実は……ギルドマスターがお呼びです」
……ギルドマスター? 俺を?
(え、なんかやらかした?)
「新人の俺に何の用なんでしょうか。テンプレっぽくない? 面倒くさ……」
「詳しくはマスターから直接、と……」
ニッキーは困ったように眉を下げた。
俺のこの手の拒否感を察したのか、少し申し訳なさそうだ。
(うわー、やっぱ面倒くせーやつじゃん……。でも断りづらいやつ……)
「わかりました。案内、お願いします」
「ふぅ、ありがとうございます。では、こちらへ」
---
ギルド奥の階段を上がり、重厚な扉の前でニッキーが軽くノックした。
「マスター、ハルトさんをお連れしました」
「よし、入れ」
扉の向こうから響いた声は低く、どこか威圧感がある。
(うわー、絶対ゴツいやつだこれ)
案の定、部屋に入るとそこには屈強な男が腕を組んで立っていた。
短く刈り込まれた金髪に、いかつい傷跡のある顔。
肩幅は俺の倍はありそうだ。
「お前が、ハルトか?」
(こいつが……ギルドマスター? 絶対テンプレの『強いおっさん』ポジじゃん)
「えーっと……たしかに俺がハルトですが、なにか?」
「俺の名はジーク・フューゲル。お前に“指名依頼”を頼みたい」
「は、はぁ?」
思わず間抜けな声が漏れた。
新人の俺に、指名依頼? は?
「お前さんから買い取った素材は、実に見事だった。あの#Aランク魔獣__・__ブラックボアとファンティングベア#を、たった一人で討伐したって話だな」
(……あ、やっぱそこ突っ込まれるよね)
「それって……断ってもいいやつですか? 俺これから、すごーく大事な予定があるんです。ほら、モフモフ探しとか」
ジークは眉をひくつかせた。
「ギルドマスターの俺からの依頼だぞ?」
(……こいつ、意外と圧強いタイプか?)
「えー、これって断れないやつ……?」
「はっはっは! お前、おもしろいな! 気に入った!」
(うわー、絶対厄介なやつにロックオンされたやつ……)
「ぜひ、受けてくれ!」
「えっと、どんな依頼かだけでも聞いてもいいですか?」
ジークの顔がぐっと真面目になり、唇を引き結ぶ。
「ムーンバートフェニックスって魔物の討伐だ」
「……むーん、ばーと……?」
どこかで聞いた気もする名前だが、記憶に自信がない。
「名前からして、飛んでそうですよね。もしかして、モフモフだったりします?」
「……は?」
「いや、もしモフモフだったら、討伐じゃなくて仲間にしたいなーって」
ジークは唖然とした顔で俺を見る。
「ハルト……お前、テイマーなのか?」
「え? 違いますけど?」
ジークはバカ受けして腹を抱えた。
「だよなぁ!? テイマーだったら、あんな素材を持ち帰れるわけねぇもんな!」
(偏見じゃね?)
「テイマーでも、魔法とか使えば魔物ぐらい倒せるんじゃないんですか?」
「ハルト。テイマーは基本、魔法が使えん。使えても弱い程度だ。戦いは基本、従魔任せだ」
「へぇー、知らなかった……。じゃあ、俺って珍しいパターン?」
(スキル説明とか、見直しておくべきかもしれないな……)
ジークはうなずいて、机の引き出しから何か紙束を取り出した。
「この討伐依頼、受けてくれるか? 報酬は破格で用意している。もちろん、命に関わる無茶はさせん。情報は集めてある。万が一、討伐が難しい場合は……」
「テイムしちゃってもいいですか?」
「……………は?」
再びジークが固まる。
「いや、だから……もしそのムーンバートフェニックスが、俺に懐いちゃった場合は?」
「討伐依頼は討伐依頼だ。だが、依頼主が求めるのは“脅威の排除”だ。テイムして制御可能と認められれば……成立、かもしれん」
「マジで!? よし、やる気出てきた!」
(モフモフだったらいいなー!)
---
「で、そのムーンバートフェニックスってどんな魔物なんですか?」
ジークが資料を手渡してくる。
「鳥型の魔獣だ。夜間にしか飛ばず、銀色の羽毛を持っている。魔力の高い場所に巣を作る習性があり、夜に月光の下で鳴くことで、近くの生物を幻惑する能力を持つ」
(え、めっちゃレアじゃね?)
「目撃情報によれば、数年前に王都北部の“月白の森”で確認されたのが最後。だが最近、同様の鳴き声と羽が見つかった。出現は確実と見ている」
「なるほど。……幻惑系か。面倒だけど、テイムできればお得かも」
「お前、本当に討伐よりテイム優先なんだな……」
「ええ、もう。モフモフこそ人生ですから」
「……変わったやつだ」
ジークは深くため息をついて笑った。
「では、準備が整い次第出発してくれ。日暮れ頃に現れる可能性が高い。今回は単独依頼だが、状況次第で援軍は出す」
「了解っす!」
「それと……気をつけろ。あの森には、もうひとつの脅威も報告されている。詳細は不明だが、古代魔法の痕跡があると」
「……え? それってヤバいやつじゃないですか?」
「まぁ、例によって“運が良ければ”大丈夫だろう?」
(……なんかこの人、俺の幸運に期待しすぎてない?)
---
ギルドを出て、空を見上げた。
(さて、モフモフ探し兼討伐。行きますかね)
ポーチの中には、いつもの非常食と“とっておきの干し肉”。
万が一のために、仲良くなるおやつも用意してある。
「モフモフ、出てこーい……!」
---
目的はひとつ。
「何か面白そうな依頼、ないかな~」
と、暇つぶしにでもなればと思っていたのに――
「……あの~、ハルトさんですよね?」
声をかけられて振り返ると、受付カウンターの奥から出てきたのは、どこか覚えのある女性だった。
(あれ、ニッキーさん……だっけ?)
「あ、そうですけど。貴女は?」
「あっ、私はギルド受付のニッキーと申しますっ!」
彼女は小さく会釈し、ホッとした表情を見せる。
(よかった、合ってた)
「俺に何か用ですか?」
「はい、実は……ギルドマスターがお呼びです」
……ギルドマスター? 俺を?
(え、なんかやらかした?)
「新人の俺に何の用なんでしょうか。テンプレっぽくない? 面倒くさ……」
「詳しくはマスターから直接、と……」
ニッキーは困ったように眉を下げた。
俺のこの手の拒否感を察したのか、少し申し訳なさそうだ。
(うわー、やっぱ面倒くせーやつじゃん……。でも断りづらいやつ……)
「わかりました。案内、お願いします」
「ふぅ、ありがとうございます。では、こちらへ」
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ギルド奥の階段を上がり、重厚な扉の前でニッキーが軽くノックした。
「マスター、ハルトさんをお連れしました」
「よし、入れ」
扉の向こうから響いた声は低く、どこか威圧感がある。
(うわー、絶対ゴツいやつだこれ)
案の定、部屋に入るとそこには屈強な男が腕を組んで立っていた。
短く刈り込まれた金髪に、いかつい傷跡のある顔。
肩幅は俺の倍はありそうだ。
「お前が、ハルトか?」
(こいつが……ギルドマスター? 絶対テンプレの『強いおっさん』ポジじゃん)
「えーっと……たしかに俺がハルトですが、なにか?」
「俺の名はジーク・フューゲル。お前に“指名依頼”を頼みたい」
「は、はぁ?」
思わず間抜けな声が漏れた。
新人の俺に、指名依頼? は?
「お前さんから買い取った素材は、実に見事だった。あの#Aランク魔獣__・__ブラックボアとファンティングベア#を、たった一人で討伐したって話だな」
(……あ、やっぱそこ突っ込まれるよね)
「それって……断ってもいいやつですか? 俺これから、すごーく大事な予定があるんです。ほら、モフモフ探しとか」
ジークは眉をひくつかせた。
「ギルドマスターの俺からの依頼だぞ?」
(……こいつ、意外と圧強いタイプか?)
「えー、これって断れないやつ……?」
「はっはっは! お前、おもしろいな! 気に入った!」
(うわー、絶対厄介なやつにロックオンされたやつ……)
「ぜひ、受けてくれ!」
「えっと、どんな依頼かだけでも聞いてもいいですか?」
ジークの顔がぐっと真面目になり、唇を引き結ぶ。
「ムーンバートフェニックスって魔物の討伐だ」
「……むーん、ばーと……?」
どこかで聞いた気もする名前だが、記憶に自信がない。
「名前からして、飛んでそうですよね。もしかして、モフモフだったりします?」
「……は?」
「いや、もしモフモフだったら、討伐じゃなくて仲間にしたいなーって」
ジークは唖然とした顔で俺を見る。
「ハルト……お前、テイマーなのか?」
「え? 違いますけど?」
ジークはバカ受けして腹を抱えた。
「だよなぁ!? テイマーだったら、あんな素材を持ち帰れるわけねぇもんな!」
(偏見じゃね?)
「テイマーでも、魔法とか使えば魔物ぐらい倒せるんじゃないんですか?」
「ハルト。テイマーは基本、魔法が使えん。使えても弱い程度だ。戦いは基本、従魔任せだ」
「へぇー、知らなかった……。じゃあ、俺って珍しいパターン?」
(スキル説明とか、見直しておくべきかもしれないな……)
ジークはうなずいて、机の引き出しから何か紙束を取り出した。
「この討伐依頼、受けてくれるか? 報酬は破格で用意している。もちろん、命に関わる無茶はさせん。情報は集めてある。万が一、討伐が難しい場合は……」
「テイムしちゃってもいいですか?」
「……………は?」
再びジークが固まる。
「いや、だから……もしそのムーンバートフェニックスが、俺に懐いちゃった場合は?」
「討伐依頼は討伐依頼だ。だが、依頼主が求めるのは“脅威の排除”だ。テイムして制御可能と認められれば……成立、かもしれん」
「マジで!? よし、やる気出てきた!」
(モフモフだったらいいなー!)
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「で、そのムーンバートフェニックスってどんな魔物なんですか?」
ジークが資料を手渡してくる。
「鳥型の魔獣だ。夜間にしか飛ばず、銀色の羽毛を持っている。魔力の高い場所に巣を作る習性があり、夜に月光の下で鳴くことで、近くの生物を幻惑する能力を持つ」
(え、めっちゃレアじゃね?)
「目撃情報によれば、数年前に王都北部の“月白の森”で確認されたのが最後。だが最近、同様の鳴き声と羽が見つかった。出現は確実と見ている」
「なるほど。……幻惑系か。面倒だけど、テイムできればお得かも」
「お前、本当に討伐よりテイム優先なんだな……」
「ええ、もう。モフモフこそ人生ですから」
「……変わったやつだ」
ジークは深くため息をついて笑った。
「では、準備が整い次第出発してくれ。日暮れ頃に現れる可能性が高い。今回は単独依頼だが、状況次第で援軍は出す」
「了解っす!」
「それと……気をつけろ。あの森には、もうひとつの脅威も報告されている。詳細は不明だが、古代魔法の痕跡があると」
「……え? それってヤバいやつじゃないですか?」
「まぁ、例によって“運が良ければ”大丈夫だろう?」
(……なんかこの人、俺の幸運に期待しすぎてない?)
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ギルドを出て、空を見上げた。
(さて、モフモフ探し兼討伐。行きますかね)
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万が一のために、仲良くなるおやつも用意してある。
「モフモフ、出てこーい……!」
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