神に同情された転生者物語

チャチャ

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閑話「とある受付嬢」

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私は、ずっと憧れていた冒険者ギルドの受付嬢になれた。
まだ働き始めて三日目だけど、毎日が新鮮で、ちょっと緊張もしている。

冒険者さんたちは、本当にいろんな人がいる。怖い人、優しい人、変な人……。

そんなある日、まだ少年みたいな若い子と、耳と尻尾のある綺麗な女性が受付に来た。

「えっ……この子、奴隷を連れてるの? この年で?」

びっくりしていると、その少年――ハルトさんが、信じられないことを言い出した。

「オークの集落を潰してきました。報告します」

「えっ!? ちょ、ちょっと待ってください! 二人だけで集落を潰したなんて……そんなの、嘘はダメですよ!?」

思わず声を上げてしまった。
見栄を張りたい年頃なのは分かるけど、さすがにこれはない。
ここは私がちゃんと社会のルールを教えてあげなきゃ、なんて思っていたら――

「この件、すぐにギルドマスターに報告して」

先輩が冷静に割って入ってきた。
そ、そうですよね。こんなあり得ない報告、上に確認しないと……。

「じゃあ、ギルドマスターのところにご案内しますね」

ハルトさん――どこかで聞いたことのある名前だな、と思いつつも、ふたりを案内した。

少しして、ギルドマスター室からふたりが戻ってきた。ハルトさんが何か書類を差し出してきて――

「すみませーん。これ、お願いします」

「え? ギルドマスターから……たくさん怒られましたか? もう、嘘は……」

謝るつもりで受け取ったその紙には、こう書かれていた。

> 『依頼完了。奴隷:Dランク昇格。ハルト:Cランク昇格』



「……えっ? えええ!? 本当だったんですか!? ご、ごめんなさいぃぃーっ!!」

「いえ、別に気にしてませんから」

ハルトさんは、すごく優しかった。けど――

(あの女性、なんかさっきからすっごい睨んでくる……!)

「フェンリース、ダメだよ! もう誤解は解けたんだから!」

「ですがご主人様、この者はご主人様を信じず、虚偽の申告だと決めつけました……殺ってもいいですか?」

「だーめっ!! ほら、もう行くよっ!」

ふたりが去ったあと、先輩が肩をすくめながら近づいてきた。

「で? 今度はハルトさん、何したの?」

「オークの集落を潰したらしくて……五十体くらいいたって」

「さっすが~。彼、今すごく注目されてる冒険者なのよ。知らなかったの?」

「そ、そうなんですか!? 早く教えてくださいよぉ……」

思い出すと、あの女性の目がまたチラついた。
……今度会う時までに、盾の訓練でもしておこうかな、私。


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