「クビにされた俺、幸運スキルでスローライフ満喫中」

チャチャ

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【閑話その5】──ライガの選択

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「チッ……また罠かよ」

苛立ちまじりに舌打ちしながら、ライガは剣を振り下ろし、足元の仕掛けを斬り壊す。
今月だけで三度目。回避どころか、解除すら間に合わなくなっている。

依頼はこなせている。ギリギリだが、最低限の報酬も出ている。
だが、妙な違和感がずっと、腹の底で燻っていた。

――全部が、噛み合わない。

「リーダー、今月の収支……また赤だ」
ルナがぽつりと呟く。

「わかってる」

ぶっきらぼうに返すが、ライガ自身もそのことは痛いほど自覚していた。
依頼はこなしている。だが素材の質が悪い。
宝箱の中身も安物ばかり。
何より、仲間の動きが微妙に鈍い。

ハルトを追い出したのは正解だった――はずだ。
戦闘では役立たず。支援もしない。目立った行動もしない。
パーティーの足を引っ張ると判断して、切り捨てた。

あのときの判断は、間違っていない。

……そう、自分に言い聞かせてきた。

だが。

(アイツがいた頃は……こんなに苛立つこと、なかったな)

道に迷うこともなければ、罠にかかることも少なかった。
回収できる素材は高品質で、依頼の達成も滑らかだった。

あれが全部、あの【幸運】スキルの効果だったのか?

「バカバカしい……運なんて、腕で覆せる」

そう吐き捨てるように呟く。

だが、心の中のもう一人の自分が、静かに囁いていた。

――それ、本当に“腕”で何とかできてるか?

ライガは剣を見つめた。
磨き上げた自慢の武器。その刃も、最近はやたらと欠ける。

「……ちくしょう」

ハルトの顔が浮かぶ。口数が少なく、無表情で、存在感の薄い男。
だが今なら分かる。

“何も起きない”ことこそ、最高のサポートだった。

「あいつがいたパーティーは、きっともう……俺たちより上だ」

悔しさが胸をえぐる。
だが、今さら「戻ってきてくれ」なんて言えない。

言った瞬間、自分の判断が“間違いだった”と認めることになる。

リーダーとして、それだけは――絶対に認めたくなかった。

ライガは静かに剣を鞘に戻し、背を向ける。

まだやれる。
今のままでも、きっと勝てる。
……そう信じて、進むしかなかった。


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