『スキル〈お片付け〉で世界最強!? 掃除するだけで経験値25倍生活』

チャチャ

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第9話 港の大ダクト、風の道を取り戻せ

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波止場の外れ、岩壁に口を開けた大ダクトは、海鳥の巣と錆で縁取られていた。
「現状確認。敵は三つ。塞板、塩の結晶、魚ミスト」
「三つもいるのに敵の顔が地味」
「地味こそ強い。しかも足元からくるタイプ」

入口を覗くと、ダクトの奥に“逆流防止板”と刻まれた鉄の蓋が斜めに差し込まれている。
刻印:清掃公社。外せないよう鉛封も。
「証拠、撮るね。記録面オン」
板の端を撫でると、視界に写しが保存された。

「中に入る。静音じゃなく安全ルートで」
動線マップを展開。最短(青)は塞板で詰み。安全(緑)と静音(紫)が合流して側壁沿いに細い道。
「俺は前。滑ったら受け止める。……へっ、我慢」
「ナイス克己。塩に勝った」

ダクト内はひやりと湿り、足下はざらざら。白い結晶が霜みたいに育っている。
「塩。湿気で大きくなるタイプ。——段取りを少し変えるよ。溶かす→拭く→風」
「拭くが二番?」
「塩は先に淡水で溶かすのが筋」

汚滅桶に微温湯を作り、布を浸して絞る。壁の結晶をなぞると、白がすっと退いた。
きゅっ。
【清浄度:21→44/行動 -4%】
「足が軽い……!」
「床は中立。裏切ったのは塩。犯人は——“塞板”」

奥で、ぬるりとした影が動いた。
「出た、“カビ・ソルト・クラスト”。塩生のカビ甲冑」
「名称、強そう」
「強いけど、弱点は配分と流れ」

まず、香草と酢水をほんの少し。霧にして扇で上へ。
「鼻に刺すアミンを落とす“必要十分”。善玉は殺さない」
クラストの肩から白煙が抜け、動きが鈍る。
次に、淡水の布で装甲の継ぎ目をなぞる。
「塩が割れ目をつくる。そこだけ拭き取る」
きゅっ。
【清浄度:44→63/被弾 -5%】

「踏ん張り効く!」
「仕上げ、風。でも“上抜き”はダメ、海霧が戻る。——横抜きでいこう」
風路扇を水平に構え、側壁の点検口へ細い風を通す。
海側→市場側に一本の“線路”ができ、ぬるい空気が押し出される。
「カイル、いま前へ。突く→戻る→突く、短距離」
「了解!」
槍先がクラストの胸の継ぎ目を二度、三度。装甲がぱきんと割れ、カビの胞子がもやになる。
「胞子は下へ。布で受ける」
足元に敷いた濡れ布で吸い、ポンポンが「たべる」と跳ねた。

【清浄度:63→81/会心 +3%/被弾 -8%】
「いい流れ。——塞板、問題は君だよ」
斜めの鉄板は、鉛封とリベットで“仮”じゃない顔をしている。
「仮の一生、長すぎ。結束術で“開いたまま”に」
封印に触れず、板の縁と支柱を麻ひもで開放方向に固定。タグは黒(危険物)で明示、記録面で“触るな”を残す。
「開けた理由は“安全換気”。数字で守る」
横抜きの風が強まり、海の冷気がすっと入ってきた。
【清浄度:81→92/臭気 体感-2段階】

クラストが最後の反撃。塩の腕で壁を叩き、粉を撒く。
「ノラ、静電気!」
「理論上は水霧——現実上も!」
汚滅桶の霧を薄く、扇で上へ。ぱちぱちが消え、粉が落ちる。
「今、“縦拭き”で通す。三、二、一」
きゅっ、きゅっ。
装甲は粉に戻り、クラストは音もなく崩れた。

【清浄度:92→100】
【清浄波:小スタン1.5秒/臭気発生率 -50%(短時間)】

ダクトの奥で空気が入れ替わり、遠くの市場の幌がふっと揺れた。
「風、通った」
「市場側、煙が外へ逃げてる!」ノラが窓から指す。
「数字、締めます」

――――
【作業結果】
清浄度:21→100/所要 10分
会心:+3%/被弾:-8%/行動:-12%
方式:溶かす→拭く→風(横抜き)
塞板:開放固定(記録面保存/黒タグ掲示)
――――

視界に“お知らせ”。

――――
【ステータス】
名前:ミナ・ハルノ/職業:清掃士/レベル:9
体力:126/126 魔力:96/96 運:21(↑)
固有スキル〈お片付け〉Lv3
新規:〈除塩拭き〉(淡水→拭き取り→結露予防の自動提案/塩害エリアで清浄度+5固定補正)
既存:〈消臭調合〉〈結束術〉〈背ラベル生成〉〈仕分けタグ〉〈除菌配分〉〈動線マップ〉
装備:雑巾“一枚”/手箒/風路扇/汚滅桶
相棒:洗剤スライム・ポンポン(満腹度 68%/魚油だいすき)
――――

「“除塩拭き”来た。港の闘い方、揃ったね」
「俺のくしゃみも減った。名誉回復」
「床は中立。裏切ったのは板。犯人は——利権」

ダクトの外で、鋲を数える音。
振り向くと、公社の腕章を巻いた職人が二人、工具を抱えて立っていた。
「点検中でして。板が“勝手に”開いてますね」
「記録面に“安全換気のため暫定固定、数字添付”って残したよ。読む?」
職人が顔をしかめ、視線をそらす。
「上から確認しますので」
「上から、ぜひ。下からは風が通ってます」

女将の店へ戻る道すがら、市場の屋台が一つ、二つと火を入れた。
匂いは“料理の手前”で止まり、通りの空気が軽い。

——予備調査、完了。次は港のダクト本作業と、公社の“塞板”の根を断つ準備。
拭いて、溶かして、風を通す。三手で、港を開ける。

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