『スキル〈お片付け〉で世界最強!? 掃除するだけで経験値25倍生活』

チャチャ

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第10話 港の大ダクト、本作業——風は誰のもの

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公社腕章の職人二人と、帳簿を抱えた監督官が待っていた。
「“逆流防止板”は安全の要です。勝手に開けるのは——」
「勝手じゃなく“安全換気”。記録面に残してます。数字、見ます?」
「数、数で……」監督官の口がもごつく。
「三手で景色を変えます。溶かす→拭く→風。五分だけください」
「五分で?」
「五分で。終わらなければ、そちらの板でどうぞ」

「俺は前。滑ったら受け止める。……へっ、我慢」
「ナイス克己。——段取り、出すよ」

一手目、除塩拭き。
汚滅桶に微温湯、布を浸して絞る。結晶をなぞると白が退き、足のグリップが戻る。
きゅっ。
【清浄度:27→54/行動 -6%】

二手目、油と魚ミストの配分調整。
酢水+香草を薄く霧にし、扇で上へ。
「善玉は殺さない濃度で。匂いは“料理の手前”で止める」
【清浄度:54→73/会心 +1%/被弾 -5%】

奥で黒光り。昨日の“カビ・ソルト・クラスト”の親玉が、塞板の影から肩を起こす。
「出た、塩鎧(しおよろい)クラスト・上位。——隙、割る」
「俺、継ぎ目、突く!」
「短距離、突く→戻る→突く。通路は右回り一方通行」

カイルの槍が継ぎ目を二度三度、音もなく叩く。
私は継ぎ目へ淡水を落とし、横拭き→縦拭きで割れ目を広げる。
ポンポンが「たべる」と塩を吸い、肩が崩れる。
【清浄度:73→88/被弾 -8%】

「仕上げ、横抜きの風を太く。市場へ一本線路」
風路扇を水平に構え、点検口へ“風の線路”を束ねる。ぬるい空気が押し出され、潮霧が引く。
塞板がギギ、と鳴って自重で半開き。監督官が青ざめる。
「板が……!」
「開いたんじゃなく“通した”。出口がある風は、暴れません」
【清浄度:88→100】
【清浄波:小スタン1.5秒/臭気発生率 -50%(短時間)】

海側から涼しい風がすっと入る。市場の幌がぱん、と張った。
通りに炭火の匂い、魚の香りが“料理の手前”で止まる。
「……五分、どころか四分三十秒」監督官が時計を見て黙る。
「数字、締めます」

――――
【作業結果】
清浄度:27→100/所要 4分30秒
会心:+3%/被弾:-8%/行動:-12%
方式:除塩拭き→配分調整→風(横抜き太線)
塞板:開放方向に安全固定(黒タグ掲示/記録面保存)
――――

「板は“暫定”。恒久対策は“逆流時だけ閉じる”仕組み。図面、作ります」
「誰に許可を——」
「料理長と市場組合。風は共同資産です。利権じゃない」
監督官は唇を噛み、「上と相談します」とだけ残して去った。

女将が走ってきて、鼻をひと鳴らし。
「空気、うまい。今日は焼くよ、全席開ける!」
「開けて。風は通ってる」

視界にお知らせが灯る。

――――
【ステータス】
名前:ミナ・ハルノ/職業:清掃士/レベル:10
体力:130/130 魔力:100/100 運:22(↑)
固有スキル〈お片付け〉Lv3
新規:装備進化——光磨布(こうまふ)・一枚
効果:拭き上げの最終段で清浄度上限+20(短時間)/再付着抑制
既存:〈除塩拭き〉〈消臭調合〉〈結束術〉〈背ラベル生成〉〈仕分けタグ〉〈除菌配分〉〈動線マップ〉
装備:光磨布・一枚/手箒/風路扇/汚滅桶
相棒:洗剤スライム・ポンポン(満腹度 74%/“塩”は薄味で)
――――

「一枚、進化。……光ってる?」
「ぴかー!」ポンポンが胸元で跳ねる。
「試しに“仕上げ拭き”もう一手。三、二、一——」
光磨布で縦に通すと、石肌が一段明るくなった。
【清浄度:100→110(短時間)】
「気圧が一枚、軽い……!」
「バフの“伸び”が違う」カイルが肩を回す。

女将が笑って親指を立てる。
「港は任せた。次は王都だって? あの公社、黙ってないよ」
「黙らせない。数字で」
ノラが港風に髪を揺らし、遠い王都の方角を見た。
「理論上は、向こうが本丸」
「現実上も。——拭いて、乾かして、風。王都を一枚、やろう」

——港章、前半戦クリア。次回、王都へ。利権と紙と風、全部“必要十分”で整えます。


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