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第11話 王都へ、紙と風を持って
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女将が干した柑橘皮の袋を渡してくれた。
「旅の匂い止め。金はいい、港の風で元とった」
「必要十分、受け取ります。——王都、行ってきます」
門外の街道は、草と土の匂い。
「塩がない空気、鼻が休暇」
「俺の名誉(くしゃみ)も回復中」
「理論上は継続、現実上も継続」
昼前、関所の手前で行列が止まっていた。石のアーチの通風口が、灰色の粉で目詰まりしている。
「“封緘粉”……公社の現場印、ありますね」ノラが指さす。
「風を止める粉。嫌な設計。——三手で開ける。落とす→拭く→風」
「俺は人垣どかす。通路、右回り一方通行!」
「任せた。では一手目、落とす」
汚滅桶の微温湯を霧にして、通風口の格子へ。静電気が抜け、粉がぱらぱら降りる。
【清浄度:12→33/行動 -4%】
「二手目、拭く。ここは——“光磨布”の見せ場」
布を縦に通す。きゅっ、きゅっ。石肌が一段明るくなり、格子の目が開く。
【清浄度:33→88/被弾 -8%/会心 +3%】
「踏ん張り効いた!」
「床は中立。裏切ったのは粉。犯人は——“利権”」
「言い切った」
格子の奥で黒い塊が蠢く。封緘粉を食って膨れた“ダスト・コボルト”。
「出た。——三手目、風。横抜きで路肩へ」
風路扇を水平に構え、石垣の保守穴へ細い風路を作る。風の“線路”ができ、粉がそちらへ流れる。
ダストが身を縮めた瞬間、私は光磨布で仕上げ拭き。
【清浄度:88→110(短時間)】
【清浄波:小スタン1.5秒/粉落下率 -70%(短時間)】
「今、まとめて“ごみ出し”」
手箒で路肩へ掃き出す。ポンポンが「たべる」と一口だけ。
「必要十分。全部は食べない」
「賢い。——数字、締めます」
――――
【作業結果】
清浄度:12→110(短時間)/所要 5分
会心:+3%/被弾:-8%/行動:-12%
方式:落とす(霧)→拭く(光磨布)→風(横抜き)
――――
列が動き、人々の靴音が軽くなった。
関所の役人が汗を拭き、頭を下げる。
「助かった……が、公社の封印を勝手に——」
「暫定開放。記録面に根拠と数字、残してあります」
ノラが写しを差し出すと、役人は言葉を飲み込んだ。
視界にお知らせ。
――――
【ステータス】
名前:ミナ・ハルノ/職業:清掃士/レベル:11
体力:132/132 魔力:102/102 運:22
固有スキル〈お片付け〉Lv3
新規:〈記録封緘〉(作業前後の写しに改ざん防止印を付与/公的手続きで有効)
既存:光磨布・一枚/〈除塩拭き〉〈消臭調合〉〈結束術〉〈背ラベル生成〉〈仕分けタグ〉〈除菌配分〉〈動線マップ〉
相棒:洗剤スライム・ポンポン(満腹度 66%)
――――
「“記録封緘”、法の風。紙が味方」
「文明は棚と書類から」
「あと風。忘れないで」
王都の外壁が見えてきた。空は晴れているのに、街の上だけ薄く煤(すす)が垂れている。
「風が迷子」
「理論上は、上流に“塞いだ誰か”」
「現実上も、いる。——拭いて、乾かして、風。王都を一枚、やる」
門が近づく。公社の紋章旗がはためき、石畳の匂いは重い。
「まずは許認可の窓口へ。数字で通す」
「俺は通路で人をどかす。……へっ、我慢」
「偉い。王都は静音じゃなく“礼儀”が正義」
風は弱い。けれど、通せば変わる。
雑巾“一枚”を肩に、わたしたちは旗の影に入った。
-------
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「旅の匂い止め。金はいい、港の風で元とった」
「必要十分、受け取ります。——王都、行ってきます」
門外の街道は、草と土の匂い。
「塩がない空気、鼻が休暇」
「俺の名誉(くしゃみ)も回復中」
「理論上は継続、現実上も継続」
昼前、関所の手前で行列が止まっていた。石のアーチの通風口が、灰色の粉で目詰まりしている。
「“封緘粉”……公社の現場印、ありますね」ノラが指さす。
「風を止める粉。嫌な設計。——三手で開ける。落とす→拭く→風」
「俺は人垣どかす。通路、右回り一方通行!」
「任せた。では一手目、落とす」
汚滅桶の微温湯を霧にして、通風口の格子へ。静電気が抜け、粉がぱらぱら降りる。
【清浄度:12→33/行動 -4%】
「二手目、拭く。ここは——“光磨布”の見せ場」
布を縦に通す。きゅっ、きゅっ。石肌が一段明るくなり、格子の目が開く。
【清浄度:33→88/被弾 -8%/会心 +3%】
「踏ん張り効いた!」
「床は中立。裏切ったのは粉。犯人は——“利権”」
「言い切った」
格子の奥で黒い塊が蠢く。封緘粉を食って膨れた“ダスト・コボルト”。
「出た。——三手目、風。横抜きで路肩へ」
風路扇を水平に構え、石垣の保守穴へ細い風路を作る。風の“線路”ができ、粉がそちらへ流れる。
ダストが身を縮めた瞬間、私は光磨布で仕上げ拭き。
【清浄度:88→110(短時間)】
【清浄波:小スタン1.5秒/粉落下率 -70%(短時間)】
「今、まとめて“ごみ出し”」
手箒で路肩へ掃き出す。ポンポンが「たべる」と一口だけ。
「必要十分。全部は食べない」
「賢い。——数字、締めます」
――――
【作業結果】
清浄度:12→110(短時間)/所要 5分
会心:+3%/被弾:-8%/行動:-12%
方式:落とす(霧)→拭く(光磨布)→風(横抜き)
――――
列が動き、人々の靴音が軽くなった。
関所の役人が汗を拭き、頭を下げる。
「助かった……が、公社の封印を勝手に——」
「暫定開放。記録面に根拠と数字、残してあります」
ノラが写しを差し出すと、役人は言葉を飲み込んだ。
視界にお知らせ。
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【ステータス】
名前:ミナ・ハルノ/職業:清掃士/レベル:11
体力:132/132 魔力:102/102 運:22
固有スキル〈お片付け〉Lv3
新規:〈記録封緘〉(作業前後の写しに改ざん防止印を付与/公的手続きで有効)
既存:光磨布・一枚/〈除塩拭き〉〈消臭調合〉〈結束術〉〈背ラベル生成〉〈仕分けタグ〉〈除菌配分〉〈動線マップ〉
相棒:洗剤スライム・ポンポン(満腹度 66%)
――――
「“記録封緘”、法の風。紙が味方」
「文明は棚と書類から」
「あと風。忘れないで」
王都の外壁が見えてきた。空は晴れているのに、街の上だけ薄く煤(すす)が垂れている。
「風が迷子」
「理論上は、上流に“塞いだ誰か”」
「現実上も、いる。——拭いて、乾かして、風。王都を一枚、やる」
門が近づく。公社の紋章旗がはためき、石畳の匂いは重い。
「まずは許認可の窓口へ。数字で通す」
「俺は通路で人をどかす。……へっ、我慢」
「偉い。王都は静音じゃなく“礼儀”が正義」
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○○○
旧版を基に再編集しています。
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