『スキル〈お片付け〉で世界最強!? 掃除するだけで経験値25倍生活』

チャチャ

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第12話 王都の手続き戦、窓口は通気口

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王都の許認可庁は、石と紙とため息の匂い。
旗の下、列が蛇みたいに絡んでいた。

「現状確認。敵は三つ。行列の動線、紙粉(しこ)、汗とインクの混成臭」

「理論上は混沌」ノラがうなずく。
「現実上も混沌。——窓口はどこ?」
「向こうの“ため息の滝”」
「音で案内しないで」

カウンター奥、ふくよかな書記官が腕を組む。名札はマダム・コルネ。
「申請理由?」
「清掃士ミナ。王都で換気・清掃作業の許可が欲しいです。数字は持参」
「書類、根拠、数字。三点なければ却下」
「三手なら得意。拭いて、乾かして、風。……と、紙」

「勝手な実演は困りますわよ」
「“勝手”じゃなく暫定安全。終われば記録封緘で残します。見て、三分だけ」

カイルが列の横で小声。「俺、通路確保。……へっ、我慢」
「えらい。王都は礼儀が正義」

——段取り、出します。

一手目、動線の整理。
「申請・相談・苦情、三列。色で分ける」
〈仕分けタグ〉を掲げ、床に細い矢印を貼る。右回り一方通行。
「前の方、申請は赤、相談は青、苦情は……こころ穏やかに黄色」
「色で心を誘導するな」ノラが小声で笑う。

二手目、紙粉の落下。
汚滅桶の微温湯を霧にして、梁へ薄く。静電気が抜け、紙粉がぱらぱら落ちる。
天井の隙間から、黒い小鬼——紙粉インプが顔を出した。
「出たね、書類の親戚」
「親戚、多いな」カイルが槍の柄で通路だけ守る。

三手目、風の線路。
風路扇を胸の高さで水平に。入口→高窓へ“横抜き”一本。
もわっとしたインク臭が上へ逃げ、列のため息が一段浅くなる。

きゅっ。
カウンターの縁を光磨布で縦拭き。インクのべたつきが切れ、手の移動が速くなる。

【清浄度:24→71/行動 -6%/被弾 -5%】
「踏ん張り効いたね?」
「床は中立。裏切ったのは紙粉。犯人は——書庫の換気不足」

奥の棚の陰、紙の束がむくむく立ち上がる。書式ゴースト。
「来た、“様式第二七号の怨念”」
「名称、役所っぽい!」
「役所だからね。——仕上げ、“背を通す”」

〈背ラベル生成〉で書式ごとに背を印字。
「許可=緑、届出=白、副本=灰。未決=雑じゃなく“仮置き一時箱”」
ノラが箱を抱えて走る。「仮の一生、今日は短命!」
私はゴーストの胸——綴じ目——を縦拭き。きゅっ、きゅっ。
背が揃った瞬間、棚が一本の“線”になり、空気がすっと伸びた。

【清浄度:71→100】
【清浄波:小スタン1.5秒/待ち時間 体感-30%(短時間)】

列が滑るように進む。ため息が半音下がる。
マダム・コルネが目を細めた。
「……三分、どころか二分四十秒。数字は?」
「清浄度24→100、所要2分40秒。行動-12%、待ち時間-30%(体感)。記録封緘、貼ります」
封緘印がぴたり。改ざん不可の写しが積まれる。

「申し立て、ある方?」
奥で帳簿を抱えた男が舌打ちした。公社の腕章。
「実演で民心を惑わすとは。風は危険だ」
「出口がない風だけが危険。出口、作りました。横抜き一本」
男は唇を曲げて去る。コルネが肩をすくめた。
「紙は正直。許可は暫定、区域ごとに“管理者立会い”。ただし——」
彼女は印章を三つ打つ。「あなたに特例“即応作業”。危険が明白なときは、記録封緘と数字を添えて先に綺麗にしてよい」

「紙が味方についた。ありがとうございます」
「礼は綺麗で返して。王都は埃っぽいのよ」

視界にお知らせ。

――――
【ステータス】
名前:ミナ・ハルノ/職業:清掃士/レベル:12
体力:134/134 魔力:104/104 運:23(↑)
固有スキル〈お片付け〉Lv3
新規:〈書類整頓〉(許可・届出・副本の自動仕分け/封緘と連携)
既存:光磨布/〈記録封緘〉〈除塩拭き〉〈消臭調合〉〈結束術〉〈背ラベル生成〉〈仕分けタグ〉〈除菌配分〉〈動線マップ〉
相棒:洗剤スライム・ポンポン(満腹度 60%/インクは苦手)
――――

コルネが窓口越しに囁く。
「公社の監督官——ギルバート卿が動いてる。風の道を塞ぐの、彼よ」
「理論上は本丸」
「現実上も本丸。——次、どこが一番“息苦しい”です?」
「王城前の大通り。旗は風で映えるのに、今は垂れてる」

“特例即応”の札を胸に、わたしたちは庁舎を出た。
外の空気は、さっきより一枚軽い。
風は弱い。けれど、通せば変わる。

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